4-33 決勝戦
「さあ両者揃っての登場!上位魔術師クラスから、アベル、サリー、ダグラス、マカラム、ラザの五名!長くなるので家名は省略させてもらいましたが五名全員が名家貴族の生まれ!しかし家柄関係なくその実力は確かなもの!どんな戦いを見せてくれるのか楽しみです!」
アリーナに出るのと同時にこれまでよりも声量が大きくなった実況と歓声が降りかかる。
会場変わったのに人増えてるような……
「そして戦魔術師クラスから、マルク、ヒナ、レイチェルの三名!こちらは先程とはうって変わって三名中二名が平民の出身!生粋の天才秀才の集まりか!?今大会の規則上出場できる最低人数での出場にも関わらずその実力奇策で相手をねじ伏せてきた強者達!今度はどんな策が飛び出すか楽しみです!」
上位魔術師クラスの解説が終わり私たちにそのスポットライトが当てられる。
「なんか気合はいってるね……」
「だな。今までよりうるさい」
「さっさと始めてくれないかな……」
ここからインタビューとか始まったらキレる。
もうこの実況と歓声を聞いてるだけで頭と胃が痛くなる。
「さて、観客の皆様も待ち切れない様子ですのでそろそろ始めましょうか!」
杖に魔力を通し、剣に手をかけ構える。
いつでも戦える状態を作り、開始の合図を待つ。
立ち位置もいい。すぐに作戦通り動ける配置だ。
「準備は良いですね!?それでは、試合始め!」
「ヒナ!マルク!下がって!」
始まるのと同時に後に跳ぶ。
そして予想通り──
「《破壊風砲》!」
「《巨岩拳》!」
開始と同時に二つの魔術が襲い掛かる。
「マルク!」
「わかってる!」
「《氷の城壁》!」
「《大地の護り》!」
こちらも二つの魔術を発動し、攻撃を防ぐ。
轟音が響き、さらにもう一度轟音が鳴り響く。
タイミングをずらして他にも攻撃が飛んできたっぽいな。
けどまだ壁は壊れてない。けど防戦一方じゃジリ貧だ。
だからこの時間を使って攻めに出るための策を成立させる。
そのために必要なものは、マルクの魔術。
「『それは人類の夢』『憧憬を抱く翼』!」
詠唱を唱え、どの時代も人類が夢見た景色を叶えるものを作り出す。
「《岩兵作成・翼ある巨兵》!」
この日のために計算を重ね、実験を繰り返し実現した空を飛ぶための乗り物。
前世の飛行機とはかけ離れたフォルムで、ドローンに近い。
不格好だし性能も良くはない。
けど今はこれでいい。
滞空し、移動できるなら見た目なんて些細なものだ。
「どうなっても知らないからな!?」
「大丈夫!なんとかする!ヒナ、やるよ!」
「いくよ!《灼竜翼》!!」
「《魔力充填・風翼起動》!!」
飛び乗ったのと同時にヒナが打ち上げ宙に浮かし、私が魔力を刻まれた魔法陣に流し、エンジンを動かす。
機械の翼は魔力を喰らい空を飛び、人類が夢見た景色を実現させる。
天井が吹き抜けで、風の通りが悪いこの闘技場というフィールドなら、細かい操作の効かないこの機体でも十分に飛べる。
地上から十メートルは離れたところで、次の手順に移る。
「ヒナ、姿勢制御は私がやるから思いっきりやっちゃって!」
「了解!『天から墜ちる裁き』『終わりの焔』!落ちろっ!《天落焔槍》!!」
渾身の詠唱と共に、容赦の欠片もない焔の槍を落とす。
直撃すれば確実に死ぬだろう。
もちろん相手もそれを防ごうと相性のいい水属性魔術を使うはずだ。
だからそれを妨害する。
「『全ては停滞する』『希望を失い』『私の手の中に』」
この五年で完成させた、私唯一の魔術。
風のない室内限定という弱点は克服したけどここだとあんまり変わらないかな。
けど、変わったのはそこだけじゃない。妨害性能も強まってる。
だから、ヒナの大技を当てるために、妨害する。
「《霜獄の領域》!!」