4-31 心配
「よかった……」
「お疲れ」
もう足に力が入らない。
こんなに安心したの高校受験の合格通知を見た時以来じゃないか?
「本当にお疲れ様!とりあえずこれ、着替え持ってきたよ」
「着替え?……あ、そういえば」
斬られて破け、泥に砂だらけ。
さらに言うなら血もたくさんついている。
一番ひどいのは足だ。
今更だが貫通したから靴に穴が空いてる。そしてそのまま気にせず履いてきたな……
これを気にしないあたり本当に疲れてるな。
誰が見ても酷いと言う有様だ。
「更衣室があっちにある。着替えてきたらどうだ?」
「うん。すぐ着替えてくるからちょっと待ってて」
「急がなくていいからね!」
「ありがとう。ちょっと行ってくる」
ヒナから着替えを受け取り更衣室に向かって歩き出す。
さすがに靴まではないが服だけでも変えといたほうが良いだろう。
穴の空いた靴で歩き、曲がり角を曲がると服屋の更衣室に近い形状の更衣室が並んでいた。
手短に空いてる更衣室を探し、カーテンを閉める。
ボタンを外しシャツを脱ぎ、スカートをおろし、新しい制服に着替える。
……改めて見るとほんとボロボロになったな。
もう着れないな。もったいない。
制服のほうが見た目が良いし小物を隠しやすいから戦いには向いてるんだけど破損した時がなぁ……
まあ替えはたくさんあるし大丈夫だけど、制服を買い足してくれる父さん達の懐を考えるとな……
学費もバカにならないだろうし。
まあ、うん。勝つためだ。仕方ないことなんだよ。きっと。
……今度自分で捨てに行こう。
……よし、とりあえず着替えたし戻ろう。
カーテンを開け、靴を履き歩き出す。
鏡がないから多少乱れててもわかんないけど大丈夫でしょ。
まあ帰ったらすぐシャワー浴びるし気にしても仕方ないか。
「ごめん、お待たせ」
「おかえり。それじゃ、行こう」
「そうだね、戻ろっか」
先に歩き出したマルクの後ろをついていく。
恐らく出口であろう扉を開き、外の景色が飛び込んでくる。
──夜。一面の夜空が、瞳に流れ込む。
「ねぇ、マルク。今何時?たしか私が戦い始めた時は一時過ぎくらいだったはずだけど」
「えーっと、今は八時だな」
「……他の試合は?」
「だいぶ前に終わったな」
「……私そんな寝てたの?」
「そうだよ!失血に骨折、重度の魔力欠乏症で意識不明で運ばれていった時ほんと心配したんだからね!?」
「あー……それは、ごめん」
わかってはいたが本当に重症だったんだな……。
「謝らなくていい!明日は絶対こんなことにしないから!」
「だな。明日は俺らが頑張らないと」
明日……あ、決勝戦か。
「そういえば明日決勝戦だったね」
「その前に一試合挟まるけどな」
「三組混合の乱戦形式のやつね。決勝戦も乱戦も私が頑張るから明日はゆっくりしてていいからね!」
「暇だっただけだろ?」
「そうだよ!暇だったんだよ!二人は頑張ってるのに何にも出来なかったんだよ!」
「まあうっかり焼き殺しましたは洒落にならないからね」
「決勝戦は頼むよ。四回戦は俺が頑張るから」
「いや私も戦うからね?」
「自分の状態見て言え」
「え〜……」
「そうだよ!怪我しまくって魔力も使い切ったんだから!」
「それにその靴。替えあるのか?」
「あったはず」
「ならいいが、穴が空いてるってことは足を貫通するほどの怪我をしたんだろ?あんまりそういうことはして欲しくない」
「まあまあ、明日の作戦は私後衛よりだったし大丈夫だって」
「はぁ……まあ何を言っても平行線だろうな。とりあえず明日も早い。さっさと戻って寝よう」
「そうだね」
「もう眠たいし早く戻ろう!」
「はぁ〜……」
シャワーを浴び、寝巻きに着替えベッドに身を投げ出す。
本当なら疲れきってすぐ眠たくなるところだが──
「なんか、眠たくない」
なんでだろう、疲れてるはずなのに眠くない。
「治癒魔術で疲労まで回復されたんじゃないか?」
「そんな事あるの?」
「あるらしいよ」
「へぇ〜」
じゃあ今感じてる疲れは精神的な疲れか。
……なんか変な気分だ。
「まあいっか。寝よ」
「ああ。おやすみ」
「おやすみ〜」
毛布を被り、無理矢理眠りに入る。




