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1-8 将来の話

「昔々、あるところに──


 ベッドに腰掛けた私に椅子に座ったローラは物語を読み聞かせる。

 ほんとはあまり興味ないのだが図書館に行きたいというわがままを聞いてもらったローラ達相手に断るのもどうかと思い大人しく読み聞かされている。


「魔物に苦しめられている国の王様が居ました。その王様は神器に選ばれた勇者様を召喚し、魔物を滅ぼすよう命令しました。」


 よくある創作のテーマになる勇者の冒険譚みたいだがこの世界では御伽噺として残っているのか。


 というか召喚?違う世界から呼び寄せられたのだろうか、だとしたら私と同じような立場か?

 急に呼ばれて魔物滅ぼせとか私だったらキレるぞ。


「それから勇者様は王様から賜った神器を手に、仲間を集い、人に害を成す魔物を滅ぼす旅へと立ちました。」


 反発しなかったのか。余程正義感が強いかとんでもない待遇でも確約されたのか?


「旅立った勇者様は畑を荒らし、子供を攫うゴブリンの長、ゴブリンロードを倒し、砂漠に巣食うサンドワームを倒し、山に住む行商人を襲うハーピーの女王を倒し、ついには全ての魔物を統べる魔王を倒しました。」


 おお、決して楽な旅路ではなかっただろうに見ず知らずの人のためによくやり遂げたな。


「しかし勇者様は魔王の呪いに掛かってしまい、腕を魔物の腕に変えられ、その皮膚には鱗を生やされました。そうなってしまった勇者様を王様は勇者様だと分かっていながら迫害し、追放してしまったのです。」


 おっと?なんだか急に胸糞悪い話になってきたぞ?


「追放された勇者様は長い放浪の末、願いを叶える願望機を手に入れ、自身の夢と憎悪の結晶の迷宮を作り出しました。人道に背き、自身を迫害した人々へ復讐するため自身が滅ぼした魔物を新たに作り出し、この世を去りました。」


 これで話は終わりらしい。

 …なんだか胸糞悪い話だった。勝手に呼び寄せて自分たちの安全のために異邦人を酷使した挙げ句迫害しました?ふざけてるな。


「だから人道に背くこと…良くないことをすると魔物が襲いに来るって言い伝えがあるわ。だからレイチェルも悪いことしちゃ駄目よ?」


 まあよくある悪事に手を染めさせないための脅し文句みたいな物だろうが…これが実話をもとにしたものだったら中々ひどい話だな。


「さ、もう夜も遅いし寝ましょう」


 ローラに促されベッドに入る。


「おやすみ、レイチェル」


 …あまり夢見はよくなさそうだ。







 窓から差し込む朝日に起こされる。


 1日出歩いた疲れからか昨日はすぐ眠ってしまった。


 寝起きで朝食ができるまでやることがない私は何から始めるか少し考えたあと日課のストレッチと筋トレから始める。


 体が資本なので体力づくりには結構力を入れている。

 特にいろいろ便利化された前世とこの世界は違うからな。


 一通り終わったあと、本を開き魔法陣に関する記述に目を通す。


 昨日いろいろ実践して分かった事の一つとして魔法陣に使う文字はローラたちから習った字とは違うので魔法陣の字を習得し直す必要がある。


 これからは新たな字の習得が日課になりそうだ。

 こういうときノートとペンでもあればいいんだけどそんな貴重品そうそう手に入らない。


 たから声に出して覚えようにも発音すら分からない。


 …先は長そうだな。

 けど諦めたらそこから一歩も進まない。この世界で魔術関連の職に就くという夢のためにもここで立ち止まるわけにはいかない。


 だからできるところからやる。

 ひたすら読む、どういう組み合わせでどういう効果になるのか覚える。

 これからはずっとこの繰り返しだろうな。


「レイチェル、ご飯できたわよ」


 朝食の時間のようだ。

 とりあえず暗記作業は一旦中止だな。


 ダイニングに向かい、席につく。


 メニューは焼いたパンにバター、干し肉にサラダ。

 朝食ということで軽めのメニューだ。


「「「いただきます」」」


 それぞれ朝食に手を付ける。

 あまり量も多くないしすぐ食べ終わると思ったのだが…


「そういえば昨日から魔術の勉強をしてるみたいだがレイチェルは魔術師になりたいのか?」


 ルークから話しかけられる。

 魔術師?そういう職業があるのか?

 というかこの世界にどんな職があるのかあまり聞いたことがない。

 前世と共通の職も多いから気にしたことがなかった。

 この世界にしかない職って何があるんだ?


 返事に迷っているとローラが助け舟を出してくれる。


「お父さん、そういえばまだレイチェルには職業の話をしてなかったわ。」

「ああ、そういえば。いいか、レイチェル。十五歳になったら教会に職業を選んで申請しに行くんだ。

 その中でも主な職業が騎士、戦士、技師、弓術士、魔術師、魔術技師、治癒術士、鍛冶師、農家、酪農家の十一個だ。料理人とかは農家に含まれてる。

 騎士や魔術師、治癒術士は国のために働いたりすることが多いな。戦士や技士、弓術士はこれとは別に『ギルド』に所属して冒険者になることが多いな。

 残りの4つは個人で働いたり、雇ってもらうことが多い。

 特に鍛冶師はお父さん、魔導技師はお母さんの仕事だな。

 それに加えて騎士、魔術師、治癒術士、鍛冶師には上級職業がある。聖騎士、戦魔術師(バトルメイジ)上位魔術師(アークウィザード)聖術師(プリースト)、刀匠の5つだ。

 この中で魔術を主に扱うのが魔術師だから魔術師になりたいのかと思ったんだ。

 それに、魔術師を目指してるなら学校にも通わせてやりたいしな」


 学校があるのか。魔術を学ぶ手段としてはそういう手もあるのか。

 魔術師も気になるが…


「冒険者って何するの?」

「冒険者は昨日話した絵本の中に出てきた願いを叶える願望機のような宝物を探して迷宮に潜る人たちよ。一回騎士、戦士、魔術師、技士を通してからなる人が多いわ」


 ローラから補足が入る。


 願望機…か。叶えたい願いが無いといえば嘘になる。

 私がこの世界に来た理由とか知りたいし。

 それに…楽しそうだ。


 決めた。冒険者になりたい。


 前世では環境や両親、教師の言葉で夢を諦めてしまった。自分の気持を曲げてしまった。


 だからこの世界、この第二の人生では自分の気持を曲げたくない。


「お父さん、お母さん、私冒険者になりたい」

「……そうか。なら2つ、条件がある」


 条件…やはり昨日の絵本の通りなら魔物が多くいるはず。やはり危険な仕事なのだろうか。


「まず聖騎士か戦魔術師(バトルメイジ)になること」


 さっき話に出た上級職業か。

 どれくらい難しいのか分からないが、叶えると決めた以上やるしか無いだろう。


「2つ目はそれに加えて、どちらか目指す方に合わせて学校に行くことだ」

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