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4-26 積み重ね

 ──《飛翔氷剣(フロスト・ソル)


 自分で作り出した氷剣に刻印魔術によって魔法陣を刻みこむことで強度の向上、直接持たずとも遠隔で複雑かつ精密な操作を可能にした、この五年の一つの集大成。


 それを構え、不意打ちにも対応できるよう臨戦態勢を取る。


 右手に剣を、左手に杖を持ち、《飛翔氷剣(フロスト・ソル)》の構築と操作を確認する。


 不意打ちに備えながら私と相手を遮ってる氷柱を還元し、魔力へ戻す。


 瞬く間にその氷塊は消え、相手と目線が交わる。


 即座に攻撃してくるかと思い構えていたが、相手も不意打ちを警戒したのか距離をとって氷が消えるのを見守っていた。


「その剣は……」


 《飛翔氷剣(フロスト・ソル)》について何か話そうとしたが相手を見つめ、沈黙を貫き通す。


 わざわざ効果を教える必要はない。

 勝手に勘違いしてくれるなら儲けものだ。効果の秘匿程度で隙が生まれる可能性があるならやらない手はない。


「まあいい。それじゃあ、いくぞ」


 泥沼と化した地面を気にすることなく、踏み込んでくる。

 このフィールドでまともに戦えないだろう──なんて腑抜けた考えはしない。

 既に踏み込んでる以上確実に策はあるはずだ。


 さあ、来るぞ──


「は──!?」


 相手と私の位置が交差し、金属がぶつかる鈍い音が響く。

 さらに二回、三回と鈍い音が響く。


 防ぎはしたが、早すぎる!

 《空間把握(グラスプ)》と血属性魔術の身体強化を踏まえてもこれかよ!?


「くっ──!?」


 四回目の剣戟を防ぎ、《空間把握(グラスプ)》で相手の行動を視る。


 なるほど、よく見ると足元を地属性魔術で固めてる。

 しかも器用なことに私に利用されないよう足の大きさだけ固めてすぐに還元してる。


 なら、私も足元だけ凍らせて足場にする。

 それに還元なら私のほうがうまいはず。

 魔力量に関しても私のほうが多いから持久戦になればこっちが有利!


 けど、そんな何回も同じやり取りに付き合ってくれる相手じゃない。

 絶対どこかで勝ちに行かないと押し切られる。


 なら──


 五回目の剣戟に合わせ、身体強化を強めて相手の剣を私の剣ごと上に弾き上げる。


 態勢は崩れ、互いに切っ先は空に向いている。

 互いに隙だらけで、何もできない盤面だろう。


 けど、私は違う。


 私も隙を晒すことを代償に作り出した隙に、氷剣を刺す──が、躱される。

 崩れた態勢を活かして後に倒れ込み、後転するように受け身を取って距離を取られる。


 けど、完全に躱されたわけじゃない。

 相手の右脇腹を掠めた。


 ほんとはもっときっちり当てるつもりだったんだけどな……

 やっぱり体の使い方はやっぱりあっちのほうが上手いな。


「お返しだよ」


 血が滲む腹部を指し、皮肉を送る。

 苛立って動きに隙ができれば儲けもの……


「ははっ、今のは危なかった」


 なんかテンション上がってるような……

 まあいい、このまま無駄話に時間を使っても相手の体力が回復するだけ。


 有利なんだからこっちから仕掛けてやる!


「──いくよ!」

「ああ!かかってこい!」


 よし、攻守を入れ替えた。

 しかも口八丁が効いたのか話の内容流れ的に律儀に受けるつもりでいる。


 なら、遠慮なく攻撃させてもらおう。


 狙いは武器破壊、もしくは剣を握れない状態にすること。


 とはいえ行動不能は現実味がない。

 大抵の妨害攻撃は躱される可能性のほうが高い。


 だから狙うのは受けなきゃいけない状態を作り出すこと。

 それでいて剣を折ること。


 だが剣の側面なんて急所そう簡単に叩かせてはくれないだろう。


 だから真正面からへし折る!


 もちろん私の剣も壊れるだろう。しかし最初から壊れることを見越して用意したものだ。

 それにスペアも忍ばせてある。

 使い捨ての剣で勝ちを拾えるならやるべきだ。


「はぁっ!」


 身体強化を全力で強化し、半身に構えた状態から体を捻る勢いを乗せて剣を振り抜く。


 ただ、こんな大ぶり当たるわけがないのでさらに手を打つ。


 魔術により水球を五つほど作り、()()()()()、残りを破裂させ、その水を凍らせる。


 最初のやり取りで火の魔術によって解凍しないと動きが大幅に鈍るのは確認済み、これが効果的なはず。


 さらに同じように地面の水分を使い足元を凍らせる。


 これで回避行動は取れない。


 追加で私の剣を防ぐために構え、動かせない状態の剣の側面めがけて《飛翔氷剣(フロスト・ソル)》をぶつける。


 二つの妨害に二つの攻撃。

 妨害の末不可避となった攻撃が走りだす。


 きっとこれは躱されない。きっとこれは決まる。


 だが、それは()()ではない。

 だから、残して余力を使って次の手を打つ。


 これまでの動作に隠しながら残した水球を打ち上げる。


 目的は行動不能に追い込むほどに()()させること。


 本当は避けたい手段だった。


 もちろん武器破壊が決まるならそれでいい。


 けど、そうやすやすと狙い通りに決めさせてくれる相手じゃないのはこの五年で痛感した。


 だから、全力で、手段も選ばず、勝つ。


 このチームの行く末を背負う以上全力を出さず負けました、なんて事が許されるはずがない。


 それだけの覚悟を持って、今ここにいる。


 狙うのは今も昔も変わらない私の最大火力をぶつけること。


 さあ、種は蒔いた。これ以上できることはないだろう。  

 だから、全力を持って──



 ──勝つ。

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