4-24 賭けの提示
ガチャリと音を立て控室の扉が開く。
「おかえり」
「ただいま〜!」
試合を直接見に行ってたヒナとマルクが戻ってきた。
私はここからでも見えるし外に出たくなかったので一人で部屋から見てた。
「レイも観てたんだよな?」
「うん」
ついさっきまで上位魔術師クラスの試合が行われてたから多分それについて話したいことがあるんだろう。
けど、今は悠長に話をしてる時間はない。
それはマルクも、ヒナも理解してるだろう。
なんせ次の試合には私達が出なきゃいけない。
まあトーナメント表で上位魔術師くらいにとは一番離れてたし第二回戦の最後が上位魔術師クラスなら第三回戦の最初は私たち。当たり前の話だ。
「じゃあちょっと作戦会議──といきたいが、それより次の試合に俺達は出場しなきゃいけない。それに相手はベインだ。……結局、例の作戦はレイがやるってことでいいのか?俺かやってもいいが……」
「いや、それは多分私のほうが向いてると思う。マルクの魔術は発動に少しだけ時間がかかるし。それに、多分その時間を与えたら発動自体を妨害される。魔術を使えないと私たち三人じゃベインに勝てないから、確実に強みを出せる私が向いてると思う」
「……そうか。それじゃあ次の試合は任せる」
「また私何にもできないね……」
「まあ、滅茶苦茶相性悪いし仕方ないよ」
「ごめんね。応援はしてるから、頑張って!」
「ありがとう。それじゃ、行こう」
次の試合で、最も負担がかかるだろう役割を引き受ける。
もちろん何の理由もなくこんなことしない。対ベインに私が一番向いてるってのは事実だ。
けど、この無茶な賭けの発案者として、その役割をマルクに押し付けたくない。
自分で言い出したんだ。責任持って自分でやる。
装備を点検し、用意した手札が一つの欠落もないことを確認し、万全な状態を整える。
時間を使って色々魔術を試したとはいえ、魔力はポーションのおかげもあって上限満タンまで回復してる。
それに色々試したおかげで新しい手札も手に入れた。
状態は完璧、間違いなく全力を出せる。
覚悟も決めた。もう今更引き返さない。
全てが完璧なことを確認し、歩き出す。
「やっと来たか」
「ごめん、待たせたね」
相手の声に応え、試合前に軽い会話を交わす。
精一杯強がって、応えていく。
それにここで作戦を通せないと不利な条件での戦いを強いられる。
なんせこの作戦は相手の同意がないと成り立たない。
本当はこっちから話しかけるつもりだったがこうやって会話の機会を作ってくれるのはありがたい。
なんとしても、この作戦に引き込んでやる。
「ああ、待った。ようやくだ。ようやく張り合いのあるやつと戦える」
「これまでの二試合、どっちも瞬殺だったもんね」
「ああ。本当につまらなかった。だが、お前らとは何度か戦った事があるから分かる。絶対にいい戦いになる」
「買いかぶらないで欲しいな」
「いいや、買いかぶりじゃない」
「そう言ってくれると嬉しいな」
お前と戦って勝ったことなんて片手で数えるくらいしかないだろうに。
これまでがつまらなかったのは分かる。
まあ盛り上げたいというなら止めはしない。なんせそっちのほうが作戦を通しやすい。
「今日外から呼んでる聖術師達はたとえ死んだとしても、死んだ直後なら蘇生できるほど腕のいいやつららしい」
「そうだね。私もその話は聞いたことある」
「どちらかが死ぬことを気にせず全力で戦えるのは助かるな」
「そうだね」
蘇生できてもできれば死にたくないんですけどね……
「それに魔闘大会にはいろんなところから"引き抜き"がきてる」
引き抜きとは前世で言うスカウトだ。
例えるならスポーツの強豪が大会を観に来て選手をスカウトしに来てるのと同じだ。
だからいい試合をし、強さを見せれば見せるほど今後が楽になる可能性があるのだ。
……そう考えると瞬殺されたチームの人たち可哀想だな。
「お前達には悪いが全力でやらせてもらう」
「わかってる。こっちもそのつもりだから」
「ああ。全力でやろう」
さあ、ここからだ。ここで作戦を通さないと負けは濃厚だぞ。
ベインが剣に手をかけ、試合開始の合図を待つその瞬間に無茶で作戦とも呼べない賭けを提案する。
「ねえ、この試合、一騎打ちの決闘にしない?」




