4-19 激励
「──それではこれにて『ランドラ魔闘大会』初日の全日程が終了しました。結果を書き込んだ対戦表を正門前に掲示しますので見逃してしまった試合がある方はそちらへどうぞ。続きの試合は明日の午前八時からの予定です」
「それに明日からは戦魔術師クラスや上位魔術師クラスも出場しますね。それに魔術師クラスにも腕の立つ選手は居ますし激戦が予想されますね」
「はい!明日は注目株どうしの戦いも予想されます。それに三日目には決勝戦も控えていますしね。今年は戦魔術師クラスと上位魔術師クラスがくじ引きで一番離れたところを引いたので決勝戦が特別クラスどうしの試合も予想されます!まあそうなってもならなくても毎年決勝戦は激戦になります!これから二日、目を離せない試合が続きそうですね!それではまた明日もご来場ください!」
閉会式代わりの催促と予告が行われ、魔闘大会初日が終わる。
なんか色々あって疲れたな。
盗みを捕まえて試合を視て情報を集めて。
とくに事情聴取が一番疲れた。
窃盗被害を一つ減らせたのは良かったがあんなに人がいたら多分他にも同じようなこと起きただろうな。
明日も一応気をつけるつもりだが明日は私たちも試合に出なきゃいけない。
今日と同じように自然に気づいて防いだりは難しいだろうな。
ていうか明日は試合に出なきゃいけないのか。
あの衆人環視、注目されるステージのど真ん中に立たなきゃいけないと考えるとなんか嫌だ。
こういうのは得てして本番前に準備したり考えてるときが一番楽しいものだ。
それに勝てるかどうかはそこまで心配してない。ぶっちゃけ勝とうが負けようが割とどうでもいい。
だって成績に加算されるって言っても課外たくさん受けて卒業できるくらいは稼いでるし。
でもまあ勝つ気がないわけじゃない。もちろんちゃんと勝ちに行く。
そうじゃないと真剣にやってるマルクやヒナに申し訳ない。
それに、こういうイベントは嫌いじゃない。むしろ楽しい。
だからこそ、負けても失うものがそんなに無いという現状が嬉しいし、ありがたい。
あとの心配をせず、今この瞬間に全力でいられる。
これほど楽しい瞬間はないだろう。
ああ、楽しみだな。
「レイ、混み合う前に戻ろう」
「お腹すいた!」
「そうだね。早めにもどって夜ご飯にしよう」
食堂に着き、各々料理を取りに行く。
その行き先である人物を見つける。
「あれ?先生早いですね」
いつもより何十分も早く食堂に来たのにすでにミシェルが料理を選んでいたので声をかける。
「ああ皆さんですか。魔闘大会は楽しめましたか?」
「はい、楽しかったです。それで今日はどうしたんですか?」
「皆さんが盗人を捕まえたことで先生も色々聞かれてお昼食べれなかったのでちょっと早めの夜ご飯です」
「あ……それはご迷惑をおかけしました」
「いえいえ、これくらい慣れてるので平気です。それに皆さんは正しいことをしたんですから気にしないでください。というかもっとやっていいくらいです。この時期は毎年窃盗被害が多くてですね……大人だけで対応できないのが情けないです」
「そうなんですね……」
なんか慣れてるとか窃盗被害とかちょっと闇が深そうなワードが聞こえてきたな……
深く追求しないようにしよ……
「あれ?先生?」
「あ、マルク。どうしたの?」
「いや、もう取り終わって席取ったから呼びに来たんだが……なんで先生が?」
「いや、先生も早めに夜ご飯にするんだって」
とりあえず闇を暴く前にざっくりとだけ伝える。
「そうか。とりあえずヒナが待ってるし早く食べよう」
「そうだね」
「そうですね」
先導するマルクの後ろを付いて行き、取ってある席に座る。
「早く食べよ!」
「はいはい。それじゃ……」
「「「「いただきます」」」」
手を合わせ、四人で声を出し、空腹に料理を流し込む。
そしてある程度食べたところでもはや食事の一環になっている雑談が始まる。
「明日は三人も試合に出るんですよね」
「はい。その予定です」
「どんなふうに勝つか楽しみですね」
「いや、まだ勝つって決まったわけじゃ……」
「いや、先生も観てましたけどよほどのことがない限り勝てると思いますよ。それこそ上位魔術師クラスの生徒や十七試合目の選手相手とかじゃない限り。それにその人たちも対策してるじゃないですか」
「あ〜……それなんですけど──」
例の賭けに等しい作戦を伝えてみる。
この世界でより長く生きてきた人の意見を聞きたい。
「大丈夫だと思いますよ」
「そうですか?」
「誰が五年も教えを説いてきたと思ってるんですか。体術、剣術、魔術戦に関してたっぷり詰め込んてきましたからね。それに自分達で考えた作戦なんだから自信を持ちなさい」
「ありがとうございます」
「じゃあ、明日、がんばってくださいね」
「「「はい!」」」
恩師に励まされ、自信を持って返事をする。
明日、頑張ろう。