4-17 脅威
「ご協力に感謝します」
「いえ、当たり前の事をしただけです」
男の身柄を騎士団の人に引き渡し、長い長い事情聴取からようやく解放された。
男が犯行を認めなかったので時間がかかっちゃったらしい。
最終的には被害者の人が証言して現行犯で連れて行かれたけど。
時間は午後三時、昼休憩なんてとっくの昔に終わって試合がすでに再開されている。
「もう試合始まっちゃってるね」
「だな。結構聴取が長引いたからな」
「見たかったんだけどな……」
「仕方ないよ。必要なことだったんだし」
「ていうかお腹すいた!」
「そういえばご飯食べる前だったね。まだなんか残ってるかな」
常時展開してる《空間把握》を強めてそとの屋台の様子を視る。
視えた情報は人が減り、あの混雑が嘘のような閑散とした風景、人が減って一部の店は店仕舞を始めている。
しかし一部の観戦のお供になりそうな軽食系はまだ客を待って店員が立っている。
「とりあえず観ながら食べれるもの探して戻ろうか」
「ふぅ……それじゃいただきます」
「いただきます!」
「いただきます」
フライドポテトやたこ焼き、焼きそばらしきものを買い占め空いてる席に座る。
正式名称は多分違うだろうけどまあ似たようなものなので気にしない。
とりあえず買い占めてきた料理に手を付けながら試合を観る。
試合はもう第十六回戦まで進んでしまった。
たしか二十二試合まであったはずだからそれなりに進んでしまったな。
そして、相変わらず実況解説がやかましい。
明日戦う時聞こえなくてもこれで実況されてるって考えたら嫌だな。
まあ聞く分にはまだ面白いしちゃんと解説もしてるのでただ囃し立てるだけの実況よりはいいのかもしれない。
ただそのハイテンションで趣味全開な状態で実況解説されるのが嫌なだけで。
「さあ第十六試合が終り第十七試合が始まります!出場選手はベイン、ベル、シーバ選手対、シェラ、ケイ、ベーラ選手!」
──ベイン。この五年で積み重ね磨き上げ、剣術の課外の模擬戦では上位に名を連ねるほどに極めた私の近接戦闘能力を持ってしても負けうるほどの実力者。
もっともその危険性を身を以て痛感している選手の名前が読み上げられる。
ベイン対策はちゃんとしないと普通に負ける。せっかく一方的に情報を得る機会なんだ、絶対にその力の穴を見つけ出してやる。
《空間把握》を強め、結界をかいくぐり、魔術によって作り出した第六の感覚器まで総動員してその一挙手一投足一投足を視る。
「──それでは、試合、開始!」
「《拘束結界》!」
「《分断結界》!」
開始と同時にベイン以外の二人が結界を張る。
その目的は敵選手の分断。
二つの結界を用いて相手の三人をバラバラに分断した。
そしてそのうちの一つにはベインも一緒に閉じ込められている。
ベインと一緒に閉じ込められたのは杖しか持っていない、明らかに後衛の装備の選手だ。
分断役の目がいいな。
「ふ、《火炎砲》!」
慌てて攻撃魔術を放つが急いだせいか構築が雑で、威力が弱い。
そういう事もあってかベインの魔力を纏わせた剣で簡単に弾き落とされ、接近を許し、手に持った杖を叩き落される。
しかもご丁寧に叩き落とした杖は結界の端まで蹴り飛ばして反撃の隙を潰している。
さらに器用なことに結界役がその杖を回収している。
あっという間に一人制圧された。
しかし残りの二人もただ見てるわけではない。
結界を壊そうと様々な手段を試している──が、これも結界役の腕がいい。
ただ囲って閉じ込めるのではなく、観客席側の結界を消し、その分の魔力と自分の魔力を使って攻撃を受けているところを中心に強度を上げている。
しかも連携を取れないように残り二人の間も結界で遮断している。
その結果、火力不足で結界を破れない。
ベインに有利な状況で、全力で立ち回らせるように考えられた作戦を通し、結果的に相手は抵抗することもできず仲間を一人失った。
そして次の標的に攻撃を仕掛けるためか結界を一部解除し、ベインが攻撃を仕掛ける。
慌てて標的にされた男は持っていた剣を上段から振り下ろそうとするがそれも見切られ、振り下ろす前に剣の左、側面から振り抜かれたベインの剣によってその武器を破壊される。
「《ロックブラス──がはっ!?」
即座に魔術を発動し、反撃しようとするが撃つ前に剣を腹部に刺され、強制的に中断させられる。
その上刺した位置は内臓を避けている。
しかし、無理に動こうとすれば出血し、すぐに動けなくなるだろう。
十秒も経たないうちに二人目が戦闘不能に追い込まれた。
そして三人目に襲いかかる直前で、三人目が武器を捨て、両手を上げて降参した。
三十秒にも満たない時間で一パーティーがなすすべもなく負けた。
その脅威を、弱点を目の当たりにする。




