4-15 魔闘大会の始まりと理想の瓦解
学園の中に一般人が入り、たくさんの出店が立ち並び、ラッパのような音が鳴り響く。
その人混みと旋律が今までとは違う日になると告げていた。
「いや〜凄いね〜!」
「ああ。俺もここまで賑やかな祭りは初めてだ」
「私も」
いつもより少し遅い時間に寮を出発し、開会式の会場になっている第一運動場へと向かう途中でその熱気を目の当たりにする。
今までは関係なかったから無視してたし普通に授業があったから気にしなかったけどやっぱり当事者になると色々感じるものがあるな。
「とりあえず運動場に行こう」
「だね。といってもまあ、すぐそこだけど」
いろんな物に目を惹かれてるうちにいつの間にか目的地に到着した。
「え〜っと、あった。ここだ」
指定された場所に座って始まるのを待つ。
ほんとは制服汚したくないから座りたくないけど周りは全員座ってるので悪目立ちしないよう仕方なく座る。
やっぱりこういうときって体操服が正しい服装だよな。
朝にヒナと意見が食い違って「私たち今日は出ないから制服で良くない?てか制服のほうがかっこよくない!?」って言われて普通に納得しちゃって結局制服で来てしまった。
まあ服装指定しなかった学園側が悪いということで。
てか普通に制服の生徒も多いしいいか。
とりあえず暇なので始まるまで魔闘大会について忘れてるところがないか確認も兼ねて振り返る。
魔闘大会に出場する生徒は全員今日この場所に集められている。
まあ前世の体育祭とかと同じようなものだと思う。
多分ルールの確認とか生徒代表の選手宣誓とかやるのかな?
まあ私には何も話しまわってきてないし人の話聞くだけだから暇なだけだ。
入場行進もなければ準備体操をするわけでもなく、ほんとただただ開会式をするだけだ。
というか試合数が多いから本当はさっさとこんなもの終わらせて本題に移りたいのかもしれない。
てか、そろそろ始まるっぽい。
「それでは!今年もやってまいりました第五四回『ランドラ魔術学園魔闘大会』、開会式を始めます!」
運動場に設置されたスピーカーのような魔道具から司会の声が大音量で流れる。
……なんかテンション高くね?去年もこんな感じだったっけ?
「基本の規則から確認していきます!まず武器に指定はないです!しかし試合が長引き地味になるという理由で防具は禁止です!怪我はすぐ治せるので心配せず全力で戦ってください!その方が面白いので!あと──」
やばい、なんか魔闘大会に対する認識が音を立てて崩れ落ちてる気がする。
こんな見世物みたいなものだっけ?……まあ観客入れてる時点で興行収入は狙ってるんだろうけども。
「──次に役職の説明をします!まず司会兼審判兼実況の私!魔術師科五組フェイです!次に解説の剣術課外担当ライ先生です!」
「よろしくお願いします!」
「次に治療班班長の聖術師のナサリーさんです!」
「よろしくお願いします」
「以上です!」
うん、色々ツッコみたい。
まず役職三個掛け持ちってどういうことだよ!?何がどうなったらそうなるんだよ!?
あとライ先生もそっち側かよ!?
たしかにあの人英雄的なの好きだったけどさ、あんたがその趣味全開な司会側についたら誰も止められないんだが?
役職五分の四が趣味側とか大丈夫か?
「ではやることは一通り終わったので開会式を終了します!それでは早速本題に移りましょう!対戦表は事前に公表した通りです!出場する生徒以外は退場してください!」
結構強引に切り上げ試合に移る。
指示従い一部を除き生徒が退場し、スペースを空け始める。
い、嫌すぎる……
このノリでずっと解説とかされると集中できない……
ま、まあ見るだけ見てみよう。
「それでは第一回戦を始めます!今大会最初の試合は魔術師科のダニエル、ソラ、バリーの三人組対、こちらも魔術師科からミカ、ペス、ララ、サリーの女子四人組!今大会最初の試合としてどんな試合になるか楽しみですね!ライ先生!」
「はい。人数不利を覆して勝利を掴むか、有利な状況を活かして勝つか、楽しみですね!とくにダニエル君は私の教え子でもあるので頑張ってほしいですね!」
「たしかにダニエル君は剣を佩いていますね!どんな戦いになるんでしょうか!?もう待ちきれません!それでは第一回戦を始めます!始め!」
趣味全開のナレーションを経て一回戦が始まった。
もし勝ち上がったら決勝戦これで解説されるとか嫌すぎる……