4-12 日用品
「いくよ〜?」
「はいはい」
「転ぶなよ」
「転ぶわけないじゃん!」
すでに準備を終わらせ私服に着替えたヒナが今にも走り出しそうなテンションで急かしてくる。
こういう時のテンションが高いのは今も昔も変わらないな。
とりあえずこのまま待たせるのも良くないから手短に準備を終わらせる。
腰まで伸びた銀髪を括る。ただ身長が高くないから言うほど長くない。
あとは肩掛けの小さなカバンに財布と櫛と手鏡、懐中時計を入れ、魔法陣を刻み込むための彫刻刀をケースごとを詰め込む。
ちょっと秘策のために必要なのだ。
「まだ〜?」
「もう準備できたからちょっと待って。マルク、鍵持ってる?」
「ああ」
マルクも準備ができたみたいなので部屋から出て鍵を掛ける。
すでに許可はもらっているので職員室は経由せず、直接正門に向かって歩き出す。
いかにも休日って感じがするな。
「え〜っと、こっちで合ってたっけ?」
「うん。いつもの服屋はこっちで合ってるよ」
「ああ。てか、もうすぐそこだ」
曲がり角を曲がると行きつけの服屋が見える。
まあ、行きつけといってもミシェルに連れ回されてるだけなんだけども。
「いらっしゃいませ……って久しぶりねあなたたち!」
「あ、はい。お久しぶりです」
店員に親戚のようなノリで話しかけられる。
もうずいぶん前──五年前から通い詰めてるので店員とも顔見知りになってしまった。
「ってあれ?今日は三人だけ?」
「はい、今日は私たちだけです」
「そっか、残念ね」
「は、はい……」
実はこの店員、ミシェルと趣味が合うらしく、ミシェルと一緒に来ると決まって二体一で着せ替え人形にされる。
いいとこの服屋の店員ってイメージ通りあるけど。
ただミシェルが何もしなければ基本客ファーストなので干渉してこないのは助かる。
こういう事もあって今回はミシェルを置いてきたのでゆっくり自由に商品を選べる。
ということで三人別々に別れ各々欲しいものを探し始める。
とりあえず私が探すのはサポーターとサイズのあった下着、ついでにハンカチとか新しい髪ゴムとヘアピンがあったらなおよし、って感じかな。
とりあえず目的のサポーターと下着から探そう。
とりあえず下着とかのコーナーはこっちだったはず……あ、あったあった。
ぶっちゃけ柄とか色とか気にしないから何でも良いんだけどな……見せる予定も相手も居ないし。
てか性別変わったせいで恋愛感バグってまともに恋愛できる気しない。
まあとりあえず利便性重視でいいか。
だったらこの……なんだ、スポブラみたいなやつでいいんじゃ?実物見たことないからこれがスポブラで合ってるかすらわかんないけど。
まあこれでいいとしてサイズどうしよ。
バストサイズとか測ったことないしな……って良く見たらサイズ三段階しか無いじゃん。
さすがに試着とかできないし最大サイズのやつ以外のサイズを二、三個買って様子見るか。
ついでにキャミソールも何着か買っとくか。
あとはいつものサポーターと小物かな。
靴下とかは学園指定の物があるからいいか。
とりあえず会計済ませるか。
「会計お願いします」
「はい、全部で十四点ですね。銀八十三です」
「金からお願いします」
「はい、お釣り銀十七です」
「ありがとうございます」
「今日は下着とかが多かったね、入らなくなっちゃった?」
「はい、ちょっと体が大きくなっちゃったので」
「うん。五年も前から見てるからわかるよ。ほんと大きくなっちゃって」
「もうちょっと背が伸びてくれたら助かるんですけどね」
ほんとに親戚みたいだな。
もしかしたら親元離れて来てるからって配慮があるのかもしれないな。
「じゃあ、またね」
「はい、また今度」
会計を済ませ、マルク達と合流する。
マルク達も色々買ったようで私と同じように布袋を持っている。
「ごめん待たせたね」
「いや、全然待ってない」
「うん。じゃ、そろそろ行こっか」
「わかった。次はどこ行く?」
「予定なら武器屋だが結構離れてるからな、先に昼食にしてもいいんじゃないか?」
「だね。だったら一回学園に戻る?荷物も置きたいし」
「そうだね。外で食べるとお金もかかるし、戻ろっか」
一度買い出しを切り上げ、節約のため学園に戻る。
お金は大事だからね。