4-10 新しい目標
「これ……」
「ああ、まずいな……魔術の使い方を見直さないと……」
「やばいね……」
本をある程度読み終わった感想は三人全員そろって、やばい。その一言に尽きる。
多分まだ色々書いてあるけどとりあえず読んだ本の内容をまとめると、二つ。
一つ目、以前から気になっていた『代償』について。
書かれていた内容は文字通り何かを対価に差し出し、何かを得る行為。文字通りの『代償』だ。
その何がやばいかというと、不確定ではあるが今まで無意識のうちにその『代償』を差し出して力を得ていたということ。
その『代償』として差し出していたものは、『魔力』、そして『詠唱』だ。
この二つは本に載っていたが、その他にも推測だが自身の生命力を差し出していた可能性もある。
恐らく私しか気付けないが魔力を使い切ったのに魔術を発動できる時があった。
その時魔力を『代償』発動してる魔術を魔力以外の何かを『代償』に発動していると推測できる。
そしてその『代償』として差し出したと考えられるのが生命力。
根拠として魔力欠乏症と呼ばれてるものは自分の生命力を削っているから体調が悪くなるんじゃないかと考えられる。
昔読んだ本には詠唱はルーティーンのようなものと記載されてたはずだ。
どちらかの記載が間違って──いや、子供に安全なものと思い込ませるための可能性もある。
実際使いすぎなければ体調を悪くすることもないし詠唱だけなら声に出すだけだからさほど困らないし、その上で魔術の効果を強めることができる。
なら魔術は本来詠唱まで含めて『魔術』というものなのかもしれない。
それは気になるが今考えても仕方ないか。この話は置いておこう。
そして『代償』よりやばいかもしれない二つ目、魔術の『性質』の変化についてだ。
この『性質』の変化というのは本の記載によると、特定の魔術を使い続けるとその魔術の本質が使用目的に変化するということ。
例えば神聖属性の《治癒》を外傷を治す目的で使い続けると『傷を治す』ことが本質となり、傷を治すことに対する効果が強まる。
同じように《治癒》を病気を治すために使い続けると同じように『病気を治す』へ本質が変化し、病気に対する効果が強まる。
これの何がまずいのかというとその本質以外の目的で使うと効果が弱まるということ。
さらにこれは魔術の応用で使っていた効果に本質が変化するともとの魔術の効果がその応用以外弱まるらしい。
だから《凍気》を『火属性の相殺』目的で使い続けるともとの『冷たい空気を出す』という効果が弱まる可能性がある。
もちろんこれがあることで有利に働くこともあるだろう。
しかしこれは勝手にspを振り分けられステータスを変えられるのと同じようなもの、意図しない方向性に真術が変化してしまう可能性もある。
もしこれで別の属性との相性が変わると一部の複合魔術が使えなるなるかもしれない。
そして一番警戒するべきなのは意図しない方向性に変質したことに気づけず、事故を起こすこと。
自分一人でやらかすならまだしも他人を巻き込む可能性もある。
これからは魔術を使う時色々警戒する必要が出てきた。
「はぁ〜、まさかこんな効果あったなんてね」
「だな。今まで使ってきた魔術の仕組みを知れて嬉しいが……なんか複雑な気分だ」
「でもさ、上手く使えたら強くない?」
「まあそうだけどさ、ヒナが言う?」
「うっ……まあそうだけどさ!」
「まあちゃんと使えたら強いのは確かだろうな」
「まあ、それは同感」
「でしょ!?」
「練習しないとな」
「だね」
……またやらないといけないことが増えたな。
いや苦ではないし楽しい部類だけどもいかんせん時間がない。
色々整理して計画組まないと魔闘大会に間に合わないな。
まずやらなきゃいけないことはまず魔闘大会に向けて作戦固めとその練習。
できるなら相手の偵察もしたい。
次に『複合魔術』と『魔術開発』の課外、『代償』と『性質変化』の対策と活かす練習。
優先順位としては大会対策が一番だが『複合魔術』のあの授業見ると手抜いたりできないし『代償』や『性質変化』も早めに対策しないと事故起こしかねない気がする。
まあ今まで大丈夫だったし『代償』や『性質変化』は後回しでも良いかも。
まあ『代償』や『詠唱』今までと使い方を変えず、いざという時の最終手段くらいに考えとこう。
「とりあえずそろそろ戻ろうか。話したいこともあるし」
「だな。夕食も行かなきゃだし」
「お腹すいた〜」
知識の吸収に区切りをつけ、部屋へと帰る。