1-6 自主練
さて、何から始めようか。
馬車から降り、家に帰り着く。
ルークはいつも通り、ローラは午前中できなかった作業を進めるために二人共仕事に戻った。
こうして私は完全フリーな──一人で家から出るなと止められて入るが──時間を手に入れた。
とりあえずこの時間を使って一度魔法陣と詠唱を借りてきた本を参考に実践してみる。
とりあえず魔力を感じられないままじゃ何もできないので詠唱からやってみる。
とりあえず発動させてみたい魔術のページを開く。
発動したか分かりやすい上で室内で使える魔術……お、これとかいいんじゃないか?
私が選んだのは無属性魔術の防御魔術だ。
これなら部屋の中の物が巻き込まれる心配もないし発動が目視で確認できる。
魔術の内容は魔力を六角形に面で展開し、他の魔術、物理的干渉を防ぐという物だ。
とりあえず防御魔術のページに載ってる魔法陣と詠唱を試してみる。
「『我に降りかかる厄災を防げ』」
詠唱と共に体の中で血とは違う何かが動く感覚がした。
魔力というものを知覚しする。詠唱によるものなのかそれは自然と指先に集まる
宙に本に乗っているものを真似て魔法陣を描く
陣が完成すると同時に名前を告げる
「《魔術壁》!!」
あれ?
何もない。何か間違えただろうか。
いや、でも確かに魔力というものの感覚は分かった。
力を込めるようにして動かし魔力を指先に集める。
まだ感覚が残っているうちにもう一度陣を描き名前を唱える。
「《魔術壁》!!」
今度はちゃんと成功したようだ。
描いた魔法陣と共に半透明の青色をした六角形の板が宙に浮いている。
「なるほど、これで攻撃を防ぐのか。てか何で二回目が成功したんだ?詠唱が駄目だったか?」
色んな可能性は思いつくがどれも確証は持てない。
詠唱した一回目が失敗して詠唱しなかった二回目が成功した理由……考えても仕方ないので一回目と二回目の差でもある詠唱について調べるため詠唱に関するページを開く。
詠唱に関する様々な情報が載っているがその中の一部に目が留まる。
『熟練した魔術師なら詠唱しなくとも術を行使することは可能だが、それができない魔術師の補助ため詠唱が開発された。魔力を知覚し、それを用い魔法陣を描き、術を行使するこの一連の動作を詠唱と名前を唱えることをトリガーとすることで術者の集中力を高め術を行使する補助をする。』
なるほど、つまり詠唱とはルーティーンみたいな物か。
じゃあ失敗した理由は自分で定めた物じゃなかったから上手く集中できなかったから?
詳しいことはわからないけど…
けどこれなら別に決まった詠唱する必要なくね?
思い立ったが吉日、さっそく自分なりに詠唱を考える。
できるだけ分かりやすいもの…利便性も考えればそれなりに短いもの…
そういう観点でいくならさっきの《魔術壁》は…
「『防げ』!──
自分なりの詠唱を唱えると同時に魔力の感覚が体に溢れる
陣が完成すると同時に名前を叫ぶ
《魔術壁》!!」
発動した!それもさっきより大きい上に分厚い!
なるほど、やっぱり予想通り詠唱は決まったものである必要はないのか。
とりあえず詠唱の部分は短縮できることが分かった。
今は詠唱一秒、陣を描くのに三十秒かかっている。
陣の中には色んな文字とか図形が入っていて描くのに時間がかかるのだ。
しかしいくら詠唱を短縮できても陣を描くのが遅かったら意味がない。
というかこれ、今は指で描いたけどわざわざ指で描く必要あるのか?
魔力自体は体内で指以外の場所でも動かせるんだから体の外に出してもある程度動かせないか?
指先から魔力を出してその軌跡に魔力を残し陣を描いたが最初から陣の形で魔力を出すことはできないか?
そう──型に魔力を流し込むようなイメージで…
「『防げ』《魔法壁》」
成功…はしたがさっきより薄い。
今回作った陣を見てみると本の物より所々歪んでるところがあるし魔力が薄くなってるところもある。
指で描かなくても発動はできるが効果は薄まるということか。
でも陣が歪んでいるという改善点が見つかってる以上見本に近づけるようにして練習すればクオリティは上げられそうだ。
さて、ここまで魔力の操作に慣れたなら詠唱なしでもいけないか?
さっきと同じように魔力を流し込むように…
「《魔力壁》」
発動はしたが…さっきよりまた薄くなったな。
これも同じように陣が歪んでたり薄くなってるところがある。
ただこれもおそらくは反復練習である程度なんとかなるだろう。
とりあえずこれからどうするかは決まったな。
とにかく早く、その上でクオリティを保ったまま発動させることを目標に練習しよう。
「レイチェル、夕飯ができたぞ」
夕飯ができたようでルークが呼びに来た。
一段落着いたし、一旦休憩するか。