4-5 作戦の構築と共有
教室を飛び出し約十分ほど、少し離れた運動場で各々ウォーミングアップを終えた。
「よし、何から試す?」
「とりあえずヒナの補助がちゃんとできるか試してみようか。マルク、適当に的出して」
「わかった」
返事と同時に地面が盛り上がる。
詠唱どころか魔術の名前すら口に出すことのない完璧な無詠唱によって巨大な岩が形作られ、最終的に私たちが三人で肩車しても頂点に手が届かないほどの岩が生成される。
「こんなもんか?いやちょっと小さいか?」
「そうだね、ちょっと小さいかも。まあ試しだしこれでいいよ」
そう、この程度のサイズでは小さいのだ。
なんならこの程度ならヒナ一人でも余裕で、三つ集まったところで簡単に溶かせるだろう。
しかし今は精度や質より実践と量。
まだ精度や質を追求できるだけと土台と情報が整ってない。
というわけで時は金なり、さっさと実践しよう。
「《風域》ヒナできたよ。いける?」
「いけるよ!」
「じゃあいこうか、3、2、1──」
「《灼竜砲》!」
「《暴風・補助送風》」
ヒナの全てを飲み込むような炎に風を編み込んでいく。
次第に体積も、熱量も増大し、もはや小石のような的を飲み込み溶かす。
「ヒナ、もういいよ」
「わかった」
ヒナに合図し、様子を確認するため炎を止める。
結果は、まあ予想通りと言えば予想通りだが……
「うん、使えないな」
「うん、使えないね」
「え?なんで?」
「ヒナ、勝利条件は相手を戦闘不能にすることだよ。これじゃ殺しちゃうどころの話じゃないね」
「う〜ん、それじゃあもっと火力抑えなきゃ?」
「そうだね。あ、じゃあ火力調節は私がやるからヒナはもっと火力落として」
「は〜い」
「マルク、もう一個お願い」
「わかった」
話のついでにドロドロの運動場の修復を終えたマルクがもう一度岩を作り出す。
「よし、もう一回やろう。ヒナ」
「いくよ〜!《火炎》!」
「《暴風・補助送風》」
今度は私の風に大分火力を落としたヒナの火を乗せてぶつける。
メインとサブが入れ替わり、主導権を握った私が火力を微調節し、的にぶつける。
「よし、もういいよ」
「は〜い」
さっきと同じように魔術を停止させ、様子を確認する。
結果はさっきとは違い溶けたのは的の半分ほど。微調整はまあ成功したと言っていいだろう。
「決まりかな。相手の魔術にもよるけど基本は私の風にヒナが火を乗せる感じで。逆にヒナの火に風を乗せて火力を上げるときは私から言うからその場で合わせて」
「りょうか〜い」
対魔術戦の作戦はこれで決まりでいいだろう。
あとは──
「あとはまあ……多分無いとは思うけど私やマルクより強い人と近接戦になった時の対処かな」
「俺やレイより強い人とかこの学院にいるとは思えないけどな……まあ対策するに越したことはないか」
「うん、それでなんだけど私とマルクより強い人がいなさそうってのは同感。だから、もし私たちが負けるとしたら多対一、もしくは魔術で横槍を入れられた時だと思う」
「まあそれならあり得るか」
「だからちょっと考えたんだけど──」
「──ああ、なるほど」
「じゃあヒナもこんな感じで──」
「わかった!」
勝つ、その一心でどんな小さな穴も残すことが無いよう作戦を固めていく。
「作戦は決まりましたか?」
「あ、先生」
「なかなか戻ってこないので呼びに来ました。それで、順調ですか?」
「はい、大方決まりました。けどまだ穴が多いのでそこをなんとかしていきたいですね」
「まあ、順調なようで何よりです。まだ時間はあるのであとは明日以降にしましょうか」
「はい。マルク、ヒナ、そろそろ戻るよ」
「わかった」
「は〜い」
離れて練習してたマルクとヒナに声をかけて呼び戻す。
「全員集まりましたね。とりあえず伝えなきゃいけないことは一つだけ。午後はまた色々説明しなきゃいけないことがあるので昼食を摂ったらまた午後に教室に集まってください」
「はい」
「わかりました」
「は〜い」
「それじゃ、お昼ご飯食べに行きましょうか」
使ったエネルギーを補給するため──いや、単に空腹を満たすため、四人揃って食堂へ足を運ぶ。




