4-3 月日は流れ、果実は実る
「いただきます」
食堂でいつものように四人揃って夕食を摂る。
一日を終えた体に不足した栄養が満たされていく。
やっぱり美味しいな、ここの料理は。まあ母さんほどじゃないけど。
そして夕食のついでにいつも通り、軽いお喋りが始まった。
「そういえば皆さん今日はどこの課外を受けてきたんですか?」
「私は氷と空間と刻印魔術の授業を受けてきました。ヒナは火と風の授業受けてきたんだっけ?」
「うん!あんまり面白くはなかったけど」
「まあほんと基礎からやってるからな、しばらくは面白くないかもな。あ、俺は魔術基礎と地属性の授業を受けてきました」
「そうですか、ならもう皆さんは選んだ課外を全部一回ずつは受けてきたんですね」
「あ、確かに」
言われて気づいたが確かに受講申請をした課外は全員全部受けたな。
「それぞれ授業を受けてわかったことが色々あると思います。それを踏まえてちゃんといつどの授業に出席するか計画を立てておいてくださいね」
「分かりました」
「分かりました」
「は〜い!」
一応スケジュールは立ててある。けどこれで上手くいくかは実際通してみないと分からないところもあるから臨機応変に対応していかないとな。
「それじゃあそろそろお開きにしましょうか。ごちそうさまでした」
「「「ごちそうさまでした」」」
食器を片付け、ミシェルと別れ、部屋に足を運ぶ。
時刻は午後十時、シャワーを浴び、勉強会を終え、それぞれ寝る準備に入っていた。
「マルクはもう授業の計画立てた?」
「ん〜、大体は決まったかな」
「ヒナは?」
「……全然考えてない」
「早めに決めといた方がいいよ」
「は〜い……」
多分目先のことで頭がいっぱいで全然考えてなかったな。
といっても私も大まかに決まっただけだからここから詰めていかなきゃいけないんだけど。
これからこのスケジュールで動くんだからキッチリ決めとかないと色々大変だし。
「まあ大変だよな、これから少なくとも五年はこの予定で動くわけだし」
「五年……あ、そうか、上級生になったら再選択するんだったね」
「そうだ、同じ授業を選ぶこともできるらしいが上級生になったら選べる授業が増えるらしい。だから五年後にもう一回予定を組み直さなきゃいけない」
「そうだね。五年後に何受けるか考えとかないと」
「だな」
「とりあえずそろそろ寝ようか」
「ああ、おやすみ」
「おやすみ」
「おやすみ〜」
部屋の照明を消し、ベッドに潜り込む。
しかし、いつもと違ってすぐに寝れず、思考が巡る。
ほんと今日は妙に頭が回る。
今日全部課外受けてスケジュールを立て終わった、つまり、大まかなレールが敷かれたわけだ。
ここからようやく本格的に学園生活が始まるんだな……。
この一ヶ月にも大変なことはあったがそれはまだ遊びの色が強かったし友人としてのトラブルの解決とか学業に関係ないものが多かった。
つまり、ようやく学生としての本題に入れるということだ。
これから忙しくなるな。
けど、それも楽しみだな。
忙しいし大変だろうけど、その中にはきっと楽しいことも同じくらいあるはずだ。
特に魔術分野は楽しみだな。色々できることが増えそうだ。
ここまで考えて一つのことに気づく。
……あれ、なんか朝にも同じようなことやったな。
仕方ない、同じ轍を踏む前に寝よう。
回転する頭を押さえ付け、意識を暗闇に委ねていく。
そこからは本当に速かった。
基本同じスケジュールで動くこともあってか本当に早く、時間の流れが早いということをこの身を持って体感した。
授業、テスト、トラブル、遊び、いろんなイベントに巻き込まれ、荒波に揉まれ、あっという間に五年が経過し、上級生となった。
思い返せば色々あった、ヒナが色々厄介事持ち込んだり、マルクがお家の事情で連れ回されたり、けどなんとか毎日出席してたな。
運動場をうっかり焼け野原にしかけたり、剣術の授業で練習相手を流血させたり。
ヒナが持ち込んだトラブルは数え切れない。
そういえばまたミシェルに着せ替え人形にされる事もあった。あの変態的な目つきは思い出したくもない。
授業で学んだことを利用して新しい魔術も作った、図書室の本も読み漁った。
というか上級生になったということはあの制限のかかった本棚も見れるのか?
まあ色々あった。楽しいこともあれば辛いこともあった。
けど、今日、新しい生活が始まる。そう、今日が上級生になって最初の登校日だ。
「皆さんおはようございます。今日も三人全員揃っていますね、皆さんか入学してからずっと三人全員皆勤賞ですね。今年も狙うんですか?」
「はい」
「もちろん」
「今年も頑張ろ〜!」
「上級生になって色々やらなきゃいけないことが増え、大変になるかと思いますが今年も三人全員皆勤賞目指して頑張ってください」
「もちろんです。けど、やらなきゃいけないことってなんですか?」
「そうですね……色々ありますがまず受けれる課外授業が増えますね。それに……ああ、あれがありました」
「あれってなんですか?」
「多分、皆さんの学園生活で一番大きいイベントになると思います。特に、上位魔術師と戦魔術師のクラスの人たちは関わりが深いですね」
「私達に関わりが深いこと?何があるんですか?」
「それはですね、学園の学生のみで『ランドラ魔術学院魔闘大会』が開かれます」
ミシェルの口からこれまでのトラブルやイベントとはきっと比較にもならないくらい大きなイベントの名前が告げられた。
ちょっとキリが悪いけど今日はここまで。
色々書こうと思ったんですけど絶対長引くので仕方なくカットします。