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3-21 約束の履行

「それでさっきの"風を出す"術式をここに組み込むと──あ、そうそう。であとは魔力を流し込むと──」

「できた!」


 ヒナの手から温かい風が吹き出してくる。

 まあ、ちょっと熱いけど。


「レイチェル、こんな感じでいいか?」

「あ、そうそう上手い」


 至っていつも通りの勉強会の中、ヒナが私の《温風(ドライヤー)》興味を持ってたので教えることになった。

 ついでに便利なのでマルクも教えてほしいということで私が教師の授業が始まった。


 まさか大人の次は教師の立場になるとか思わなかった。

 まあ別に悪くないし苦でもないので教師の立場として振る舞う。


「で、慣れてくるとこんな感じ」

「おお〜」

「く、くすぐったいっ」


 手本として風の操作まで含めて術を使って見せる。

 ついでに体感して貰うために二人の髪に風を通してみせる。


「すごい!どうやるの?」

「そうだね……この本のこの式とかを組み込んだらできると思うよ」

「じゃあ──」

「けどヒナは魔力の操作の練習からだね。さっきの魔法陣も濃いところと薄いところがあったからね。効果が薄れてる。だからそこから練習しないとかな」

「はーい……」


 危険を感じたので好奇心に任せて実行する前に制止する。

 このままだと多分制御が甘くなってとんでもない突風を室内で撃ち出すかもしれない。


 これで止まってくれたらいいな……。


「レイチェル、俺のはどうだ?」

「マルクのは……うん大丈夫そうだね。さっきの練習してみる?」

「ああ、ちょっと試してみる」

「え〜ずるい〜」

「ヒナもちゃんと操作できるようになったやっていいから、頑張ろ?」

「はーい……」


 また走り出しそうなヒナに釘を刺し直す。

 まあ気持ちは分からなくもないがそれくらい怖いのだ。切実にやめてほしい。


 というかマルクの陣綺麗だな。ムラなくきっちり描かれてる。しっかり維持もされてるし術を発動しても乱れてない。昔から練習してきたのが伺えるな。


 飲み込みも早いし、いろいろ積極的に取り組んでるし、ヒナほどじゃなくてもマルクも好奇心が強いのかもしれない。

 非常に素晴らしいことだ。一人で突っ走らなければだが。


「くっ、う、あっ……」


 多分風を動かし始めたタイミングで陣ごと魔力が霧散してしまった。


 凄い綺麗な構築だったのにな……やっぱり難しいのか?

 ぶっちゃけ毎日やってるうちにいちいち濡れてるところに当てるのが面倒くさくなって身につけた技術だから難易度がよく分からない。


「難しいな……」

「まあ、多分誰でも最初はそうだよ。毎日使うだろうし少しずつ練習していったらいいと思うよ」

「そうだな。やっぱり簡単には上手くいかないよな……」

「まあ初めて使う魔術は誰だってそうだし初めてにしては凄い綺麗な構築だったよ」

「……ありがとう」


 マルクにフォローを入れる。

 実際構築はほんとに綺麗だったからコツさえ掴めば私より上手くなるかも。


 ただ私には前世の記憶があるからイメージしやすかったけどマルクとヒナは違う。

 目的に合せてくれて一からイメージを作るところからスタートするんだ、簡単ではないだろう。


 というかこれがヒナの魔力操作が上手くいってない原因の一つかもしれない。

 やっぱり全部一回使って手本を見せるようにしたほうがいいな。


「レイチェルちゃんどう?」

「どれどれ……お、結構上手になってきたね。その調子。頑張って」

「やった〜!ねえ私もあれやってみてもいい?」

「う、う〜ん、ちょっとまだ危ないかな〜」

「ちぇ〜」


 マルクの方を指さしていかにも走り出しそうな表情を浮かべたので慌てて止める。


 綺麗にはなってきたしムラも減ってきたけどさすがにまだ許可できない。


 というかこのまま続けてたらこのやり取り無限に繰り返しそうだな……。


 というかもう時間も遅いし切り上げたほうがいいかな。


「ねえ、そろそろ遅いし寝よう?」

「確かに、もう遅いな」

「え〜まだやりたい……」

「明日やればいいじゃん」

「え〜」

「また明日も教えてあげるから寝よう?」

「……は〜い」


 ヒナを言いくるめて意識の向く先を魔術から寝ることに無理やり切り替える。

 というか適当に言いくるめたせいで明日もやることが決まってしまった。

 いや別に嫌じゃないけども。


 そんな考え事に耽っている間に照明を消し、ベッドに潜り込む。


「おやすみ」

「ああ、おやすみ」

「おやすみ……」


 寝る前に言葉を交わし、意識を落とす。

 しかし、その間際にヒナが短く言葉を発する。


「レイチェルちゃん、今日は、ありがとう」

「……全然いいよ。いつでも頼っていいからね」

「ふふっ、ありがとう」



 信頼の証明とも捉えられるような言葉を交わし、意識を暗闇の中に手放す。

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