表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/398

3-15 心労

「ん……はぁ……」


 普段より少し早く目が覚める。

 少し考えすぎたせいかあまり寝れなかったのも影響したのかもしれない。


 憂鬱、そういう言葉がよく似合う朝だ。


 とりあえずこの気分を紛らわすためにも顔を洗いに洗面所に行く。


 ベッドから降り、洗面所のドアのドアを開ける。


「あ……」

「あ……」


 多分同じように顔を洗いに来たヒナと鉢合わせしてしまった。


「……おはよう、マルク」

「……ああ、おはよう」


 ……気まずい。けど、会ってしまった以上、もう引き返せない。


「……ヒナ、昨日はすまなかった」

「……昨日は私が悪かったもん」

「いや、俺が言い過ぎた」

「……うん」


 ……駄目だな、まだ根に持ってる。明らかに表情が暗い。


「……じゃあ、私着替えてるから」

「……分かった」


 そう言うとヒナは逃げるように出ていってしまった。


「はぁ……」


 どうするのが正解か、顔を洗いながら考える。


 ただ俺が謝ったところで結果は変わらないかもな。

 もしかすると俺から何か言うだけじゃ駄目なのかもしれない。


 でも何もしないわけにはいかない。ヒナが落ち込んでる理由に俺が言い過ぎたことが絶対に関わってる。


 というかヒナは落ち込んでるのか?怒ってるのか?それすら俺にはよく分からない。


 俺はどうすればいいんだ……?















「はぁ……」


 昨日はなんであんなことしちゃったんだろう。

 昨日からずっとその問が頭から離れない。


 私が魔術下手ってことくらい分かってたのに、なんで、なんで考えもせずやっちゃったんだろう……。


 いつだってそうだ、いつも考えなしに魔力(ちから)を使って人を傷つけた。

 何回も何回も大切な人を、友達を巻き込んで、叱られた。

 だから今まで謝って、もうしないって決めたのに、また……。


 それになんでか叱ってきたマルクが先に謝ってきた。

 悪いのは私なのに、私が迷惑をかけた人が私に謝ってきた。


 悪いのは私なのに、なんで……。


 もう、どうしたら良いの……?















「ん……」


 柔らかいベッドの上で目を覚ます。

 幸い、視界は普段通り、気分も悪くない。


「……『ステータス』」


 今の状態を確かめるために魔術を使って自分を数値化する。



 名前:レイチェル/ミカミサトル


 HP:271/271 MP:611/611

 Lv:13    sp:21



 体力も魔力も最大値まで回復している。

 自分の感覚も、『ステータス』による数値も今自分に異常がない事を示していた。


「……よし」


 体を起こし軽く伸びをする。

 最後に感じた感覚がめまいと吐き気だったせいか、何も変わらない朝なのにとても気分がいい。


 とりあえず立ち上がるため体を動かし、目が合う。


「おはよう、ヒナ」

「……うん、おはよう」


 分かりやすく落ち込んでる、それに薄暗くてもわかるくらい目の下が赤い。泣いたんだな……。


「昨日は、ごめんなさい、本当にごめんなさい」

「いいよ、もう平気だし。気にしないで」

「いや、でも……」

「気にしないで」

「……うん、わかった」


 これ以上ヒナに心労をかけたくないので、必死に強がる。きっと、ここで弱いところを見せたら余計に負担をかけるだろうから。


 大人として、子供にそんなことはさせたくない。

 子供同士の話ならまだしも、子供が大人を心配するなんて、子供に対して負担でしかない。


 とりあえずヒナに負担をかけないためにも話題を変える。


「そういえばマルクはどこ?」

「……洗面所、顔洗ってた」

「ありがとう、ちょっと私も顔洗ってくる」

「……わかった」


 ヒナのことは心配だがマルクとも少し話がしたい。

 今日は二人とも私より早く起きてたし何かあったかもしれない。

 身支度をするのも兼ねて、マルクと話に洗面所に向かう。


「おはよう」

「おはよう、レイチェル……」


 う〜ん、マルクも表情が良くない。ヒナと何かあったのかも。


「ヒナとなんかあった?」

「……よく分かるな。さっきヒナに謝ったんだが……駄目だった」

「そっか……」


 マルクは昨日言った通りもう一度ヒナに謝ったらしい。

 それでもあの表情ということはもしかしたらマルクに怒られたことより私に対しての罪悪感が強いのかも。


 どうしたらまた仲良くいられるか、改善策を考える。


「なあ、俺はどうしたらいい?分からないんだ……」

「そうだね……マルク、今日は私に任せてくれない?」

「え?」

「ちょっと考えがあるんだよね」

「……ああ、わかった」



 マルクの了承も得られたので、本格的に仲直りの策を固めていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ