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3-13 成果と事故

 洗面所で髪を梳かし、一糸まとわぬ姿で風呂場に入る。


 お湯で軽く流したあとよく石鹸を泡立てて髪から洗う。

 シャカシャカと音を立てて汚れを落とす。


 櫛や鏡とか日用品が揃ってきたから次はシャンプーとかリンスーとか作りたいな……。


 いや、あくまで魔術の練習で欲しかったものを作っただけだからもうそこまで行くと目的が変わるな。

 また必要なのは変わらないしそのうち作るのも考えとこうかな。


 さて、そろそろ流すか。


 丁寧にお湯をかけ、頭皮から泡と一緒に汚れを落とす。

 流したあと、櫛をつかってもう一度髪を梳かす。


 う〜ん、結構引っかかって痛い。手入れも大分面倒くさいしいっそのことヒナみたいに肩より上くらいまで切ってしまおうかな、今は肩甲骨くらいまであるから結構短くなる。


 今ならハサミくらい簡単に作れるだろう。鏡も作れることがわかったしやろうと思えば多少不格好になるだろうけど自分でも切れる。

 どうしよ……。


 頭をひねり、割と真剣に悩んだ結果、結局思いとどまる。


 なんだかんだ五年はこの髪と一緒に過ごして手入れしてきたんだ。なんかもったいない気がして仕方ない。

 やっぱり、思い入れがある。大切にしよう。


 髪を洗い終わり体を洗っていく。


 特に今日は体を動かしたのでより丁寧に洗っていく。

 臭いとは思われたくないからな。


 一通り洗い終わり、流し、もう一度泡を立てる。

 よく泡立てた石鹸を顔につけ、優しく洗う。

 これももう前世からの習慣だ。


 全身洗い終え、最後にお湯で全身を流す。


 そろそろあがるか。


 風呂場の扉の前に置いておいたタオルを手に取り水気を拭き、寝巻きに着替える。


「《温風(ドライヤー)》」


 鏡と櫛で髪型を整えつつ、この一ヶ月でさらに上達した魔力操作で水気を飛ばしていく。

 この魔術も少しずつ改善を重ね、今ではただ温風を吹きかける魔術から《空間把握(グラスプ)》で髪の状態を確認し、濡れている場所を的確に乾かす、最早新しい魔術になった。


 空間、火、風の三属性複合魔術を髪を乾かすためだけに使うという大分贅沢な使い方になってるけど。

 まあこれも練習の一環と考えれば悪くない……?


 そんな事を考えてるうちに髪を乾かすためだけの魔術で髪は完璧に乾いた。


 ん?なんかいつもより髪の艶がいいかも?櫛使ったからかな。

 何にせよ作ってよかったな。これからも使う機会多いだろうし。

 むしろ簡単な形状なのに今までなんで作らなかったんだか。


 とりあえず鏡と櫛の効果は確認できた、前世のものとほぼ変わらない品質だ。

 魔術の操作が上達したのがこうしてわかりやすく結果に現れるとなんか嬉しいな。


 とりあえずマルクと交代しよう。


「マルク〜、あがったよ〜」

「わかった、そういえば鏡はどうだった?」

「うん、結構良かった。使いやすい」

「よかった、俺もちょっと借りて良いか?」

「うん、いいよ」


 手鏡をマルクに手渡す。


「じゃあシャワー浴びてくる」


 そう言いマルクは風呂場へと向かった。


 とりあえずやることも無いのでベッドに腰掛ける。

 時間はまだ八時くらい、寝るにはちょっと早く、何かするには少し遅いと感じるような時間だ。


 暇つぶしになる物を探して部屋に目をやると、ヒナに目が留まる。

 ずっと指に髪を巻き付けて捻っては離すを繰り返しながら本とにらめっこしている。


「何読んでるの?」

「魔力の操作の本なんだけど上手くいかなくって……」


 魔力の操作……ヒナはヒナなりに自分の欠点と向き合ってるんだな。立派なことだ。

 ただ、上手くいってないらしい。


「どこが分からないの?」

「え〜っと、ここ」

「あ〜これはね──」


 魔力の操作は目に見えないものを動かすのでどうしても感覚的になることが多い。

 そのため表現もあやふやというか、感覚的な物が多い。

 私も初めは理解、というか感覚を掴むのに四苦八苦した。


 だから少しずつ、ヒナが分かりやすいように言い方を変え、アプローチを変え、手探りで分かりやすい伝え方を探りながら教えていく。


「ん〜?あ!分かった!ありがとう!」

「分かったなら良かった。で、気になってたんだけどさっきから髪から水が落ちてるよ。もっとよく拭かないと」

「え、あ……」


 さっきは教える方を優先したが正直本に水が落ちないか怖かった。


「動かないでね、《温風(ドライヤー)》」

「え!?」


 共有で悪いが櫛を通しながらヒナの髪を乾かしていく。

 風呂から上がって時間が経ってたのもあるかもしれないが、温風を吹きかけ三十秒ほどできれいに乾く。

 ほんと操作が上手くなったと自分でも思う。


「え!?すごい!どうやったの!?」

「火属性の魔術で出した熱を風属性の魔術で吹きかけたんだ」

「すごい!そんな魔術見たことない!え〜っと、多分こうして……」

「ひ、ヒナ?」


 まずい、それは絶対に暖かい風を出すだけの魔術じゃない!明らかに魔力を込めすぎてる!

 軽くこの部屋が焼け落ちるくらいの火炎放射が撃てるぞ!


「うん、多分いける!《温風(ドライヤー)》!」

「あ、ちょ!《凍気(フリーズ)》!」


 とっさに全力の《凍気(フリーズ)》を放ち、目の前で立ち上がる凶暴な炎を抑え込む。

 幸い、さすがにヒナもまずいと思ったのかすぐ止めてくれたので大事には至らなかった。


「はぁ、はぁ……」

「ご、ごめん!大丈夫!?」

「うん……大丈夫……」


 焦って構築も雑、加減もクソもないような魔術を急に使ったせいか魔力が一気に減ってちょっと気持ち悪い。めまいも出てきた。


 とりあえず近くにあった椅子にもたれかかるように座る。


「ええっと、ええっと……」

「あがったぞ……って何があったんだ?」

「ああ、マルク……」

「本当に何があったんだ?顔色が悪いぞ」

「えっとね、実は──」



 回る視界をなんとか抑える中、ヒナが状況を説明してくれた。

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