3-11 改善
「「「「ありがとうございました」」」」
2時間ほど続いた授業が終わった。
今日はほんとに基礎中の基礎から復習して終わった。
「なんかあんまり面白くなかったね〜」
「ほんと基礎中の基礎からだったからな。俺らからしたら当たり前すぎる」
「まあまあ、大事なところだし、意外とためになるところもあったよ?」
つまらないと言えば確かにつまらなかったが、ためになる所はあった。
今までほとんど独学だったので自分の魔術を見直すいい機会になった。
見返してみると穴だらけだったのでそこを改善できたら効率良く発動できたり魔術の制御とか色々良くなるかも。
「このあとどうする?」
時刻は午後四時過ぎ、探せばまだ受講申請した課外はあるだろう。
けど、それは全員が共通で受けてる授業じゃないだろう。
今日はみんなで回る予定だったので意見を聞いてみる。
「疲れた〜!今日はもう戻ろ!」
「う〜ん、まあ、それでいいか。俺もなんか疲れたし」
帰ってきたのは切り上げて帰宅する意見だった。
まあ疲れたのは同意見だ。
普段はもっと体動かして魔術使ってるのに今日のほうが疲れた気がする。多分知らない人に囲まれて気疲れしたんだろう。
「そうだね、今日はもう帰ろう。私も疲れた」
全員が賛成し、寮に帰宅することになった。
部屋の鍵を差し込み、捻る。
ガチャリという個気味の良い音を立て鍵が開く。
部屋に入ってすぐにヒナがベッドに飛び込む。
私でも結構疲れたんだ。まだまだ子どものヒナはもっと疲れただろう。
私もつかれたので椅子に腰かける。ついでに借りてきた本を手に取る。
今日授業を受けて穴が見つかったのでそれを踏まえて目を通す。
う〜ん、意外と解釈が変わって今までの魔術が未熟だったのが良くわかる。
実際出力されて形作られる事象は変わらなくてもそこに至るまでの過程の数が違う、描いた式の数が違う。使った魔力の量が違う、発動までにかかる時間が違う。
たとえ差が一つ二つ、0.1秒でもでも何回も使えばその分無駄が増える。
それが戦いの場なら致命的な差になることもあるだろう。
また、練習しなきゃいけないことが増えたな。
「何してるんだ?」
「ん?今日の授業を踏まえて今までの構築を見直してるところ」
トイレで席を外してたマルクが戻ってきた。
「でも、今日の授業でやったところ全部知ってるところだっただろ?」
「うん、でも逆に基礎からやってくれたから自分の駄目なところが良く見えた」
「逆に?全部当たり前の事だったじゃないか?」
多分ちゃんと家で教育を受けてるだろうマルクからしたら当たり前過ぎてどこが役に立つのか分からないレベルだったんだろう。
「私、今までほとんど独学でやってきたからちゃんと教えてもらって今日やっと色々分かったんだよね」
「ど、独学……?今まで……?」
「……?うん」
「はぁ……俺もまだまだだな……」
……なんか変なこと言ったか?庶民出身なら当たり前のことじゃないのか?
「え、ヒナ、独学ってそんなおかしい?」
「え〜?逆に今まで独学でやってたの?」
なんか逆に驚かれたんだけど……
「なんか独学って言われるとそうかも……って感じるくらい?ちょっとクセがあるくらいでなんかもう綺麗すぎて気づかなかった」
「ああ、逆に完成されすぎて気づかなかった」
「え、えぇ……?」
そんなに……?まだまだ穴だらけだと思ってたんだけど……
「俺でもそんな綺麗に描けないぞ」
そういうとマルクは魔力を指先から流し、魔法陣を描き始める。
もちろん、こんな室内で発動する気はないだろう。
つまり、一回見比べてみろということか。
ふむ、なるほど、たしかに私のほうが効率的……?
えぇ……?
「な?レイチェルが綺麗すぎるんだ」
「えぇ……?昔借りてた本の陣をそのまま描いてるだけだよ?ちょっといじったけど……」
「ああ……なるほど、手本をそのまま描いてるのか。普通は描き方と式を覚えて自分で考えて描くものだ。多分、教科書の手本を無理やり目的に合わせて弄って動かしてるからだな。普通は書き換えに失敗してほぼ発動しないか、ちゃんも目的に沿った効果じゃないからちゃんと使えないのどっちかになるから教科書の例をそのまま使うのは良くないと教えられた」
「へ、へぇ〜……」
そうだったのか……
多分、既に完成された手本をこの数年でほぼ完璧にトレースしたから多少歪でもある程度きれいに完成されたものになったのかな?
なるほど、つまりここから良くしようとしたらもとの手本レベルのを自力で描けるようになればいいのか。
なんか良いこと聞いたな。多分一人だと気づかなかった。
頑張らないとな。
「わかった、ありがとう。これからいろいろ試してみるよ」
「そうか。ためになったなら良かった。俺も、頑張らないとな」
「私も〜!」
そういうとみんな借りてきた本を手に取り、読み始める。
全員、自分と向き合い、自分を磨き始めた。