1-4 知識の宝庫
「レイチェル。ついたわよ」
名前を呼ばれ体を軽く揺さぶられる。
「ん…」
「おはよう」
なんか馬車の中で寝落ちしたっぽい。
昨日あまり寝れなかったのが響いたか?
これくらい余裕だと思ってたが子供の体ってこういうものか。
まあ図書館で寝落ちして何もできないよりはマシか。
そうこうしているうちに他の乗客が馬車から降り始めた。
ローラと手をつなぎ馬車から降りる。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「どうも!毎度あり!」
御者に挨拶し馬車から降りる。
馬車から降りた先に見えた景色は──均等に均された道、レンガ造りの町並み、今まで住んでた村とは全く違う景色、比較にならないほど発展した造りに息を呑む。
「俺は図書館まで送ったあと商品を卸しに行く。午後になるくらいには終わるはずだから図書館で合流してその後お店でご飯を食べよう」
「分かったわ。じゃあ行きましょうか」
軽い打ち合わせをした後図書館に向かって歩き出す。
さすがに村より発展しているとはいえ移動は基本歩きだ。
科学の代わりに魔術が発展しているが魔力が必要という理由からか前世のような乗り物は作られていない。
馬車から降り十五分ほど歩いたところで大きくはないがそれなりのサイズの建物の前でルークが足を止める。
「着いたぞ。ここが図書館だ」
「へぇ、あまり大きくはないのね」
「まあ紙は貴重だからな。でもここは水道が通ってるしお金を払えば貸出もしてくれる」
「ここ貸出してくれてるの?絵本とか何冊か借りて帰ろうかしら」
「そうだな。何冊か借りて帰って寝る前に読み聞かせとかしてあげよう」
そんな話をしながら中に入る。
私としては絵本とかあんまり興味ないんだけどな。
でもこの世界の文化とか知る貴重な機会と考えれば悪くないかもな。
「いらっしゃいませ。大人二人、子供一人でよろしいですか?」
「いや、俺は入らないから大人一人、子供一人だ。いくらになる?」
「その人数ですと…銀10ですね」
「分かった」
ルークが財布から硬貨を取り出し受付の人に手渡す
「たしかに頂きました。中へどうぞ」
「じゃあ俺は店の方に商品卸してくるから」
「分かったわ。行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい」
ここでルークとは別行動だ。
そして──ようやく知りたいことを、自分のやりたいように調べられる!
ルークが外に出て見えなくなったあたりでローラを急かす。
「お母さん、早く行こう」
「まぁまぁ、レイチェルはせっかちね。でもそうね、お父さんも行ったことだし本を選びに行きましょうか」
ローラの手を引くように本棚の前まで来る。
そこには学術、小説、絵本に図鑑、幅広い知識が詰まった本棚にはこの世界のすべての情報があるのではないかと思ってしまう。
「たくさんあるわね。レイチェルは何が読みたい?」
この世界の小説や文化には興味はあるがまずは
「あれ、あの本がいい」
私は表紙に『魔術入門』と書かれた本を指差す
「別にいいけど…結構難しそうな本よ?」
「いいの」
「そう、よいしょっと、はいレイチェル」
「ありがとう」
かなり高い位置にあったのでローラが取ってくれた。
…踏み台でも借りてきたほうがいいか?
まあいい、目当ての物は手に入ったんだ。
本を抱え近くの椅子に座る。時間は有限だ。ここでできるだけ多くの情報を持って帰りたい。
私は早速本を開き、字に目を通し始める。
『魔術とは自身の魔力により魔法陣を描き、そこに魔力を通すことで起こる現象を総称して魔術と呼ぶ。魔法陣を刻む対象に制限はなく、空中でも物体でも魔力を固定できるのであるならば何に刻み込んでも効果は得られる。しかし魔力は時間経過で霧散してしまうので物体に刻むのであれば魔力が馴染みやすい素材を使う必要がある。先天属性の魔術は自身の体や魂に魔法陣が刻まれているため魔法陣を構築せずとも術を発動させることができる。魔力で作り出した岩や水などの物体は時間経過で消えることはない。しかし魔法陣を構築の手順を逆から踏むことで魔力に還元することができる。これは自分の魔力で作り出したものに限られ、他人が作った魔法陣は魔力の性質の違いや構築方法の違いなどにより干渉できないことが多い。魔法陣を構築する際詠唱を行うことで自身の魔力の流れを知覚することに加え、魔法陣を構築する魔力の動きを補助することができる。それによりより大きく、長く効果を得ることができる。
魔術には属性が数多くあり、火、水、岩、風の四大属性に加えて、光、闇、神聖を加えた七大属性の基礎的な属性に加えて、雷、氷、木、空間など、派生した属性や新たに研究の進んでいる属性もあり、魔術の種類は無数に存在している。属性により魔法陣の構築や詠唱がかわる。魔法陣の構築や詠唱を学ぶことで自身の先天属性以外の属性でも発動させることができる。
複数の魔法陣を重ねたり、複数の効果を含めた魔法陣を描くことで複合魔術を発動させることができる。火に風を複合させることで火力を増したりすることができる。』
要約するとこんな内容だった。
なるほど、詠唱により自身の魔力を知覚し、魔法陣の構築を補助する。
ということは詠唱を行うことで今まで分からなかった魔力について感覚で触れる事ができるかも──
「レイチェル、その本は借りて帰っていいからそろそろご飯を食べに行きましょうか」
え、もうそんな時間!?