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3-9 不安と興奮

 結果的に全勝できた。出だしは結構良いんじゃないか?


 ちなみに最後の試合──私以外の二人の試合は割と一瞬で終わった。

 結果は風魔術使ってた方の勝ちだった。

 やっぱり手の内を明かした上なら技量が上の方が勝つんだな。


 というわけでかなり早く終わり暇になったのでスポーツ観戦に勤しんでいる。


 ただ、直接見るとついさっき使われた《閃光(フラッシュ)》みたいに目を潰されるので《空間把握(グラスプ)》で観ている。

 もちろん、キャパオーバーしないように観る試合と範囲は絞ってある。


 他人の戦いを観るのは意外と勉強になるもので私が考えもしなかった魔術の使い方をしてるのがあったりして面白い。


 けど、やっぱりその中でも目を惹かれたのがヒナとマルクの班試合だ。


 マルクは地属性の魔術で相手の足を少しだけ固めて焦って相手が動きづらい姿勢になった瞬間足を全力で固めてどんどん行動を阻害していって合理的に詰めて勝っている。

 持ち前の器用さと魔術の精度の良さで的確に相手を追い詰めて確実に勝ちを拾っている。


 一方ヒナはというと火属性を禁止されたのでおそらく次に得意な風魔術を使っている。


 しかしヒナは細かい操作が得意じゃない──というよりそもそも出力を抑えられないのでヒナにとっての最低出力でも周りの人間、とくに対戦相手にとっては嵐の中にでも居る気分だろう。


 その暴風はその場の全員に良くも悪くも働き、ヒナの動きを補助することもあれば逆に邪魔することもあったり。

 その操作ができないところがギリギリヒナにプラスに働いて、めちゃくちゃな状況に驚いて引き下がる相手をがむしゃらに攻撃しに行くヒナがなんとか押し勝って勝利している。


 どっちも私にはできない戦い方だ。


 まあ、ヒナの方は大分脳筋な戦い方だけど。

 まあただ勝ってるからいい、のか?


 そして試合観戦に夢中になってるうちに全てのグループの総当たり戦が終わる。


「全員終わったようですね。では一度集まってください」


 指示に従い全員が教師の前に楕円を描くように集まって座る。


 全員が座り、静かになってから教師は口を開く。


「皆さん今日は楽しめましたか?多分、玩具でも剣を今日初めて持った人もいたと思います。もちろん負けた人もいると思います。けど、負けたことを気にする必要はないです。だって、強くない人ほど伸びしろがあります。強くなるためにできることかたくさんあります。だから、今日負けた人にこそこれから頑張ってほしいと思ってます。もちろん、それは今日勝った人もです。これから一緒に頑張りましょう」


 言いたいことは言い終わったと言わんばかりに口を閉じる。


「というわけで、今日はつかれたと思うので早めに終わります。強くなるためにも、頑張るためにもちゃんと休まないといけないからね。はい、起立、気をつけ、礼」

「ありがとうございました」


 慌てて立ち上がって対策をする。疲れを癒すため、という名目で教師は授業を早めに切り上げた。


 各々がバラバラに解散する中、とりあえずマルクとヒナを探す。このあとどうするか話したい。


 《空間把握(グラスプ)》──はいいか。もういい加減使い続けて疲れた。これくらいなら目視で見つけられるだろう。


 そして予想通り、人が減り始めた中、二人と合流する。


「おつかれ様」

「おつかれ〜!」

「おつかれ」


 合流して全員一言づつ、互いを労い合う。そして次にこのあとの予定を話し合うため口を開く。


「ちょっと早く終わったけどこのあとどうする?」

「う〜ん、ちょっと早いけどもう魔術基礎の授業をやってる教室に行っても良いんじゃないか?この時間ならまだ人少ないだろうし」

「そうだね、他に行くとところもないしそれでも良いかな。ヒナは?」

「いいよ!行こう!」


 真面目に話してた内容にものすごいハイテンションで返事が返ってくる。

 あれだな、子供が新しいものに興味津々なのとおんなじ感じだな。


 めちゃくちゃ失礼な話だがやっぱりなんか知能指数というか精神年齢に差があるように感じる。

 まあ貴族出身に実質二十代と比べちゃいけないのはまあ、そりゃそうだろ、って話だけど。


 でもだからこそ臆せず新しいことに挑戦して、子供ならではの果てない探究心を満たすまでやりたいようにやる、これがヒナの強みなんだろうな。


 マルクだって要領よくいろんなことをスポンジのように吸収していって自分の力にしていっている。


 ほんと二人が天才なんだと痛感する。


 この二人を見てると自分との才能の差が浮き彫りになって、気がついたら置いていかれるような気がして不安になる。

 今の私は前世の経験と培った能力に頼ってなんとかなってる部分が多いし。


 けど、不思議と悪い気分じゃない。それどころかさっきの教師の話に感化されたのかワクワクしてるような気さえする。


 ……置いていかれないように頑張らないとな。


「レイチェルちゃん?どうしたの?」

「…なんでもないよ」

「……なんか、笑ってるね」

「え、そう?」



 こうして不安をかき消すためか興奮に導かれてか、次のステージに足を進める。

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