3-7 課外授業
「午後の課外、どこから行く?」
全員で昼食を摂る中、質問を投げかける。
おそらく三人全員がこの問題について考えているだろう。
この学校の課外の制度は授業ごとに週◯◯回出席とか定期的に試験を行うからそれをクリアできないと履修したことにならないとか条件があるところはあるものの、基本的にいつ何回出席しても自由、というのがルールだ。
しかしこの自由に出席して良いというルールが存外厄介で各授業の時間を把握してちゃんと出席できるスケジュールを自分で組まないといけないのが面倒くさい。
そしてこの自由に組んで良いと言うのがかなりマイナスに働いていて、前世でいうところの時間割とかの規律が無いから堕落して進級、卒業できない者が毎年いるらしい。
というか当たり前だがここはまだ二桁にも達していない子どもの方が多い。その未熟な子供に自分で考えて出席しろ、という自律を求めるのがそもそも難しいだろう。
まあこんな事もあって自分できっちり時間割を組むことが急務なのだ。
「悩んでるなら最初は三人で一緒に回ってみたらどうですか?慣れるまで、はっきりどこの授業を受けるかの予定が定まるまで一緒に回ってみるもの良いと思いますよ?」
ミシェルからアドバイスされる。
まあ要するに最初は心細いだろうから知り合いと一緒に行ってみろ、回ってるうちにスケジュールしっかり考えろ、そんな感じかな。
「そうだな。みんなでいろいろ受けに行ってみないか?」
「いいよ」
「もちろん!」
三人全員合意のもと、課外を一緒に受ける方が決まった。
とするとあとは……
「だったら三人が全員受ける授業だと剣術と魔術基礎がありますね。今日はどっちもありますが、どっちに行くんですか?」
ミシェルの口から考えてたことが質問される。
こういうとき進行役をしてくれると話しやすくて助かる。
そして、私は質問に対する自分の回答を提示する。
「剣術から行かない?たしか剣術は終わるのが魔術基礎より早かったと思うから魔術基礎は剣術の方を受けたあとでもいいんじゃないかな」
「そうだな、俺もそう思う。ヒナもそれで構わないか?」
「いいよ〜!てか剣術の授業の方が気になってたからそっちから先に行きたかったんだよね!」
ヒナは相変わらずだな……いや5歳にふさわしいと言えばふさわしい思考回路かもしれない。
まあ何はともあれ全会一致したのは変わらないので行き先は決まった。
「それじゃあそろそろ行こうか」
タイミングを見て移動を促し、席を立つ。
剣術の授業を行っている別棟にむけ足を運ぶ。
「それでは授業を始めます」
午後1時半、出席確認を終え、授業が始まった。
出席確認には特殊な魔道具らしきものが使われていて、前世の大学みたいな友達に頼んで出席出してもらうとかできないようになってる。
まあこの人数が自由に出席するんだからこういう機械がないととてもじゃないが管理できる訳ないから当たり前といえば当たり前か。
そんな事を考えていると優男風な教師から指示が出される。
「まあまだみんな緊張してると思うので剣に慣れてもらうためにも少しこれを使って遊びましょうか」
その教師は百均のおもちゃみたいな剣を軽く振り、危険性がないことを示しながら指示を出す。
多分あれは布の中に動物の毛かなにかをぎゅうぎゅうに詰めてあるのかな?
「ルールは簡単、三人一組に分かれ、軽く試合をしてもらいます。相手の体のどこでも良いので当てたら勝ち、そして一つだけ魔術を使っていいです。魔術学院なので魔術を絡めた戦い方も教えます。あと燃えるので火は駄目です。そして相手に怪我をさせる魔術もまだ駄目です」
教師からルールを説明される。
なるほど、当てさえすれば勝ちなのか。じゃあ相手に当てやすくなる魔術が良いか。けどまだ私の氷魔術は単品でそんな一瞬で凍らせられるようなレベルじゃないし……となるとやっぱあれしかないかな。
「それじゃあ適当に分けていきます。じゃあそこの君はそことそこの二人と組んで、次は………」
作戦を考えてると班分けが始まった。
見てる感じ男子女子関係なくほんと適当に目についたやつ組ませてる感じだった。
そういう事もあって私の相手は初めましての男子2人、ヒナとマルクとは別々の班に分けられた。
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
とりあえず互いに挨拶を交わす。なんか少し気まずいので紛らわせるためにも声を出す。
「それじゃあ一人審判を決めてください。終わったら交代して全員と戦うようにしてください」
なるほど審判を決めるのね。確かに試合形式なら必要か。
……けどこれ最初審判ちょっと有利じゃね?
「じゃあ俺審判する」
あ、出遅れたか……まあ仕方ない。どうせ後半になったら手の内なんて知れ渡るんだ。早いか遅いかの違いしかないはずだ。
対戦相手になった男の子と向かい合って立つ。いつでも始められる姿勢だ。
「それじゃあ決まったところから始めていいですよ」
教師の指示を受け、審判から開始の宣言が下される。
「それじゃあ、始め!」
若干の不利の中、模擬戦が始まった。