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3-5 危うい技術

「あれ、鍵ないね」

「もしかしたらヒナが持っていったのかもな」


 借りてきた本を片手に部屋の鍵を取りに来たが私たちの部屋の鍵は掛かってなかった。

 マルクの言った通りヒナが取っていったんだろう。


「仕方ない、部屋に行こう」

「うん」


 鍵はヒナが盛ってると仮定して部屋に向かって足を進める。


 廊下の床と靴底がぶつかる小気味のいい足音を立てながら歩く。

 互いに何も話さず、足音だけが静寂で満たされた空間に響く。


 気まずくは無いが面白くもない時間が約5分ほど経ったところで部屋に着く。


 到着してすぐマルクがドアノブを捻るが扉が開くことはなく、ガチャガチャと音が鳴るだけで鍵がかかっていることを示している。


「あれ?空いてない」

「だね、ヒナとどこかで行き違いになったかも。時間も時間だし食堂に行ったのかも」

「どうする?さすがに借り物の本を持ったまま食堂には行きたくないぞ、汚しそうだし」


 マルクには私も同意見だ。いかにも汚しそうなところにこんな貴重な物持っていって汚そうものならなんと言われるか分かったものじゃない。

 かと言って部屋の前に置きっぱなしにして紛失とか笑い話にもならない。


 しかし部屋に入れないのは事実だし……あ……


 脳裏に一つの発想がよぎる。それは子供なら誰もが一回は考えたことがあって、本来良いとはされない行為。

 そう鍵開け(ピッキング)だ。


 本来専用の道具が必要だが今の私なら多少の物なら氷で作り出せる。

 その能力がただの発想を一つの手段として成り立たせてしまっていた。


「ねえマルク、ちょっと試してみたいことがあるんだけどいいかな?」

「別にいいが……何するんだ?」

「まあちょっと見てて、空間把握(グラスプ)


 空間魔術の基礎の魔術を鍵穴に向かって使う。

 穴に満たされた魔力が新たな感覚器官となって鍵穴の仕組みを事細かに伝えてくる。


 これなら、多分いける。


「『氷造形(アイスクラフト)』《氷鍵(キー)》」


 いつもの使い古した大分適当な詠唱を使い氷細工のような鍵を作り出す。

 数秒もしないうちにこの数年で鍛えられた魔力の操作に裏打ちされた本物そっくりの鍵が出来上がる。


 その氷細工のような鍵を緊張しながらも鍵穴に差し込む。

 そしてごぐりと喉を鳴らして固唾を飲み、鍵をひねる。


 ガチャリと子気味のいい音を立てて鍵は開けられた。


「ふぅ……」


 つ、疲れたぁ……

 なんか緊張した……


 いやはや強度が少し心配だったけどやれば意外といけるもんだな。


「す、すごいな……どうやって開けたんだ?」

「ん?氷で鍵を複製したんだよ。《空間把握(グラスプ)》で鍵穴の形を読み取ってそれに合う形を作った」

「そ、そうか……」


 というか今更だけど結構やばいことやったんじゃ……

 いろいろ悪用できそうな技術作っちゃったかも……

 まあやったあとに考えても仕方ないか。今後は使用を控えよう。


 マルクも驚愕と諦めが混ざった表情で扉を開け、中に入る。

 それについて入り、自分の机に本を置く。


「これからどうする?」

「どうするって……ああ、とりあえず時間的にも食堂行こうか。この時間なら多分先生とヒナもいると思うから」

「そうだな、行こう」


 入ったばかりだが部屋からでて、同じ手順で鍵を閉める。


 誰にもこの手法を話さないことを密かに心に決め、食堂に向かう。












「あ!こっちこっち!」

「あ、ヒナ」


 食堂に着いてすぐヒナに声をかけられる。

 やっぱりどこかで行き違いになったのか。


 というかヘコんでたテンション戻ってる。あのあと立ち直れたみたいで良かった。


「とりあえず、料理選びに行こ!」

「う、うん、わかったからちょっと待って」



 各々料理を取り、席につく。いつも通りの時間に同じように食事を取る。


 これもいつも通り雑談をしながら食べる。部屋の鍵の話に繋がらないように気を配りながらなので少し疲れた。


 ノミの心臓の神経をすり減らしながら食事を進めること三十分ほど、全員が食べ終わり解散することになった。













「ふぁ〜あ」


 空腹を満たしシャワーを浴びたたからか眠気が湧いてきた。しかしもう少しやりたいことがあるのでまだ寝ない。


「ねえここわかる?」

「多分そこはここがこの式に繋がってるんじゃないかな」

「ん〜?あ!わかった!」


 これももう習慣になってるが各々が図書室から本を持ち寄り勉強会をしている。


 ヒナは魔法陣の魔術式を読み込み、私はひたすら魔法陣を紙に刻印している。マルクは空間魔術の本を読みながら練習用の刻印魔法陣を描き込んでいる。

 なんだかんだ毎日1〜2時間ほど勉強会をしている。


 新たに知識や技術を身に着けたり、翌日の練習の準備をしたり、各々自分のやりたいことをやりたいように打ち込み、子どもならではの探究心を魔術に向け、自由に学ぶ時間になっている。


 しかしもういい加減睡魔に負けそう。今日はもう遅いから就寝を促そう。


「もう遅いしそろそろ寝ようか」

「そうだな。これ以上は明日に響くかもしれない」

「は〜い」


 特に誰も拒否することはなく、照明を消し、ベッドに入る。



 疲れた体と精神をベッドに投げ出し、睡魔に導かれるままに眠りに落ちる。

またミスでタイトルがありませんでした。本当に申し訳ないです……

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