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3-2 自主練

「準備できた?」

「ああ、いつでも始められる」

「私も!」

「じゃあ、やろうか」


 昼食を終え、マルクと魔術の修練を始める。あとついでにヒナもいる。

 まあ修練といってもまだまだ実戦に使えるほどじゃないけど。


「じゃあ空間把握(グラスプ)使ってみて」

「わかった」


 短く返事をし、事前に用意した刻印魔術による紙の魔法陣と杖による補助を受け、ミリ単位のズレもなく魔力を展開する。


 きっと今この空間のありとあらゆる情報が流れ込んでいるはずだ。


「うん、それくらいでいいよ」


 際限なく魔力を広げるマルクを制止する。

 空間跳躍を試すと言ってもそんな大規模なものは初めから使えるわけないから何度もチャレンジできるよう魔力を残すよう促す。


 結果、三十メートルほどの空間把握(グラスプ)が展開された。


 杖と紙の魔法陣が一定の光量で薄く発光し続けてる。

 魔力をみても乱れてない。維持は問題なさそうだ。


「じゃあそのまま維持しながら空間跳躍の構築教えるね。イメージは現在地と目的地までの空間を圧縮してその上を飛び越える感じ。こんな感じの式を使って……あ、そうそう。そんな遠くじゃなくていいからね」

「くっ!」

「魔力乱れてるよ」

「っ!」


 術式の構築をイメージや例を交えながら実践させる。


 う〜ん、空間把握(グラスプ)との同時展開に処理が追いついてないな。魔力が乱れてる。


「待って。空間把握(グラスプ)が乱れてる。それじゃ危ないよ」


 私の指示に従い即座に術の構築を破棄した。


 そしてそれに伴い薄く発光し続けていた紙の魔法陣が焼き切れ燃え尽きる。

 母さん(ローラ)が刻印するときは宝石とかに刻んでたし即席でありあわせの素材だとこれが限界なのかな。


「け、結構難しいな……」

「うん、最初の方は難しいかもね。空間把握(グラスプ)が乱れるのが一番危ないから今度はもっとゆっくり、落ち着いてやろう」

「……わかった」


 もう一枚刻印済みの紙を取り出しもう一度空間把握(グラスプ)から構築し始める。


 今度はさらにゆっくり、一つ一つ丁寧に構築していく。

 しかしあっちが立てばこっちが立たず、どうしても上手く同時に展開できない。


「っ!はぁ…はぁ…」


 かなり頑張ったが結局魔法陣が焼ききれて強制的に止まってしまった。


「大丈夫、そう一朝一夕でできるものじゃないからゆっくりいこう。まだ時間はあるし少しづつやろう」

「……ああ。まだ魔力はあるからもう少しやってみる」

「わかった。頑張って」


 また紙と杖を発光させ術を組み立てる。詳しくは分からないけど少しずつ構築を変えてるのが魔力の動きで分かる。

 自分なりに改善しようとしてるのが窺えるな。


 そしていい加減気になってることに口を出す。


「ヒナ、さっきから何やってるの?」


 さっきから視界の端で炎がちらついて気になる。

 しかも割と馬鹿にならない火力だからちょっと熱い。


「ん〜とね、色々試してるの」

「試してる?」

「形変えてみたり温度を変えたり」

「ああそれで」


 それでさっきから火がぐねぐね動いてたわけだ。

 何かの形に見えるほどしっかり形を変えられてないし維持もできてないように見える。

 やっぱりこういう細かい操作は苦手なんだな。


 でもまあ試すこと自体は悪くないかも。意外とあった形の魔術を見つけられるかもしれないし。


「レイチェルちゃんこういうの出来る?」

「簡単な形くらいは多分?」

「じゃあちょっとお手本見せてよ」


 結構急なお願いが飛んできたな。正直そこまで自信はないんだけどな……。


「……まあいいけどほんと簡単なやつしかできないと思うよ?」

「いいの!」

「……わかった」


 仕方ない。簡単な形だけ作って誤魔化そう。


「『氷造形(アイスクラフト)』《氷晶剣(フロストソード)》」


 自己流の軽い詠唱を唱え形だけの剣を形作る。

 数秒で形だけの、何も切れやしない氷剣が形成される。


「こんな感じでどう?」

「すごい!貸して!」

「え、いいけど……ほんとに何も切れないよ?」

「うん!」


 あれだな、なんか枝拾って振り回す子供のそれだな。


 結局しばらく振り回し続けて飽きたらしく返しに来た。

 そしてまた炎を弄り始めた。


「う、う〜ん……」

「なに作るの?」

「おんなじ剣作りたい……んだけど上手く行かない!」


 飽きたかと思ったが今度は自分で作りたいらしい。

 てか振り回してたから目的見失ってたけどそういえば自分で作る手本にしたくて頼まれたんだった。


 ……見てる限りやっぱり操作が甘い、というか拙い。

 その上で火力が高いので危険度が増してるのがひやっとする。


 ちょっと怖くて見てられない


「ねえヒナ、一回止めよ?」

「え?うん」


 幸い大人しく止めてくれた。


「ヒナって細かい操作が苦手なんだよね?」

「うん」

「じゃあ逆に簡単な操作はできるの?」

「ちょっとだけ」


 そう言うとヒナは火を出したあと少しずつ小さく収束させていって等身大ほどあった火が人の頭ほどの大きさに纏まる。

 今度は纏まったかと思えば最初より大きく膨らむ。


 なるほど細かな操作──形を変えるとかは苦手っぽいけど普通に魔術使えるところを見ると最低限はできるっぽいし膨張収束ができるならまだ手はありそうだな。



 こうして話し合いに改善を重ね、互いに技が磨かれていく。

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