3-1 上級職業について
「それじゃあ確認が終わったので授業に入りたいんですが、座学でできることあんまり無いんですよね。基本戦うことが多いのでどうしても教えることが戦いに偏るんですよね」
……開始早々危うい発言だな。
なんかしら絶対教えないといけないやつあるだろ……。
「魔術関係はまだ難しいと思うので、戦魔術師という仕組みについて説明します」
よかった、ちゃんと授業はしてくれるのね。
「戦魔術師というよりは上級職業についてですかね。上級職業は基本的に国の指示のもと働くことが多いです。騎士とかもですね。その国の指示のもと、っていうのが国営のギルドとか組織に所属することでいろんな仕事が割り振られます。先生もここの教師の仕事は国に指示されました。あ、ちゃんと教員試験には合格しましたよ?」
なるほど、国に指示されて戦魔術師クラスの教師やってるってことはもしかしたらミシェルも戦魔術師?
あと基本的に組織に所属する、ということは所属しない例外があるのか。
まああくまで待遇がいいから国営組織に属するのであって職業選択の自由はこちらにあるはずだ。
「皆さんも何をするにしてもどこかしらの組織に所属することになると思います。その方がいろいろ支援を受けられるので」
何をするにしても──冒険者としての活動も支援を受けられるのか?
「先生、それは冒険者として迷宮に潜ることも支援を受けられるんですか?」
三人の疑問を代弁する。
全員冒険者志望なんだ。これが受けられるかどうかで今後が大きく左右される。今はっきりさせなきゃいけない事だ。
「はい、国営ギルドの中に迷宮攻略部門があったはずです。なので冒険者としての活動にも支援が受けられるはずです」
「ありがとうございます」
決まった。今後目指すのはその国営ギルドに入ることだ。
なおさら実力を磨く理由ができたな。
「迷宮はここから片道5日ほどのところ──『迷宮都市ダイル』にあります。迷宮攻略部門の本部もそこにあるので頑張れば見学くらいはできますよ」
見学は一度行ってみたいな。自分の将来を決める重要な選択だ。しっかり見て、自分の価値観をすり合わせて考えたい。
しかし片道5日か……私一人じゃ無理だな……。
う〜ん一回行っときたいけどアポも取らず行くのも駄目だし距離がな……。
駄目だな。今は無理って割り切ろう。
「迷宮攻略部門の話をしましたが他にも代表的なところだと防衛部門と警備部門ですかね。防衛部門は国境の防衛を行ってます。警備部門は国内の暴動の鎮圧、強盗などの犯罪の取り締まりをしてます。今私たちが安全に暮らせるのはこの人たちのお陰なんですね」
つまり自衛隊と警察とかに近いのかな?
まあ治安維持にはどちらも欠かせない組織だしな。異世界でも似た組織が作られたんだろう。
「上級職業の主な仕事はここらへんですかね。上位魔術師や聖術師、刀匠とかなら研究職として活動することもありますが戦魔術師の領分じゃないですね。とりあえず上級職の進路とか仕事についてはこんなところですね。なにか質問はありますか?」
誰も口を開かない。これといった疑問は誰も抱かなかった。
要約すると戦魔術師の仕事は自衛隊員と警察に近いものらしい。
しかし迷宮攻略とかまで部門が分かれてるならもっと仕事はありそうだ。
やっぱりなるのが難しいだけあって上級職はどこでも重宝される存在なんだろう。
「それじゃあ少し早いですが授業はここで終わりにします。今日は課外はないのでここからは自由時間です」
話すことがなくなったのか授業を早めに切り上げた。
自由時間といってもやることないんだよな……。
また図書室にでも籠もろうかな……。
「なあ、昼食のあと暇か?」
「え……う、うん」
マルクから予想外の質問が飛んできた。何の用だろう。
「えっと、何するの?」
「ほら昨日空間魔術教えてもらう約束しただろ?暇だったら教えてもらおうと思って」
「ああ、なるほど。いいよ、一緒に運動場行こう。
先生、午後運動場借りてもいいですか?」
「ええ、構いませんよ」
ぶっちゃけ昨日はヒナのほうが印象強すぎて忘れてた。
まあちょっとびっくりしたけどなんとかなったな。
運動場も使えるし大規模な魔術が使えるかも。
ついでに刻印魔術教えてもらおうかな……いっかい刻印魔術で大規模な魔術使ってみたいし。
「ねえ、私も行っていい?」
「え、まあいいけど教えられるかは分からないよ?」
「うん、大丈夫」
昨日思いっきり失敗して精神的外傷を抉ったばっかりなのに……本人が大丈夫って言ってるし止めはしないけど少し心配だな……。
心の内で予定を組み、不安が渦巻く中、四人で食堂に歩き出した。