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8-25 隠者の住処

「はぁ……」


 愁人が頬をさすりながら溜め息をつく。


「むしろそれで許してあげたんだから感謝してほしいくらいだけどね!」


 今だって汚濁を見るのは怖い。指先が震える。

 でも、それ以上にこの色に嘘をつきたくない、心酔してるから一時的に忘れていられるだけだ。

 暴走を止めて実際の視界に錯覚が出たり侵食してくることはなくなったけど、それはそれとしてまだ全然怒ってる。


 でも、愁人の考えにも共感してしまった。相手を混乱させるのにこれ以上の術はないだろう。

 それに、色を視てしまった。ティターニアさんに会いたいっていう気持ちは契約云々から来てるものじゃない。紛れもない愁人の本心だ。


 だから、これ以上は怒らないし怒れない。


「はいはい。それで、そうするんだ?謁見とはいうがそう簡単にできることじゃないくらい僕にもわかるぞ。なんせ記録されてる歴史上一度も姿を表したことのない啓示ロボットだ。部外者が会いたいって言っても無理ですって言われるだけだぞ?」

「まあそれはそうだけど……」


 ……実際、どうやったら会えるんだろうか。

 というか撤回はされたとはいえ私はアルのとき殺せと指名手配されたんだ。正式な謝罪があったわけでもないし、クレイ教からすればただの邪魔者では?

 あれ、もしかして私が絡まない方が上手くいく?


 ……いや、そもそも指名手配された理由も未だにハッキリしてないし私に非はない。むしろ賠償を要求する権利だってあるはずだ。

 流石にいくら重要機関にも信者が多いといっても法律までは曲げられないだろう。賠償として教皇との謁見、面会を……いや、流石に無茶か。

 いやでも法廷に引きずり出す方針なら──


「レイチェル、それは代役を立てられて終わりだ。歴史上一度も姿を表してない教皇がそんなことで表舞台に出てくるわけないだろ」

「う~ん……」

「待て待て、何の話だ」

「そうだよ!そこ二人で完結しないで!」

「ああごめん、ほら、前にクレイ教に指名手配されたじゃん?それをダシに訴訟して法廷に引きずり出せないかなって」

「まあ会うだけならそれでも……あ、それで今の話に戻ってくるのか……」

「ややこしい!」


 なんというか、勝手に心を読まれると口に出さなくなるんだな。というかそれが狙いの能力でもあったっけ。

 とりあえずしっかり口にだして二人にも相談しながらいこう。


「チッ、パレードの一つでもやってないのかよ。信仰心を保つならそういうことやるべきだろ」

「魂の変換とステータスっていうわかりやすい奇跡が常にあるからねぇ……信仰心や布教については考えなくていいのかもしれないなぁ」


 万人が利用でき、効果を実感できる奇跡を広め、大陸中に教会を建造し権威を示した。

 あとは同調圧力や知人友人からの勧めで芋づる式に信者が増えていく。


 歴史書なんかも読んだからわかるけど大まかな流れはこんな感じだろう。


 自分は何もせず、その上で自分の組織が力をもって大きくなっていく。なんとも夢のある話だ。


「……なあ、やっぱり無理だと思うんだが。ここまでガチガチに守りを固められちゃ一般市民の俺らにはどうしようもないだろ」

「むぅ……」


 ベインの言う通りかもしれない。

 私達には何の権限も、クレイ教内にコネがあるわけでもない。


 そんな私達が教皇と会おう、なんて話が土台無理なんだ。


 となると……


「会うのは無理でも確かめるまでは出きるんじゃないかな?」

「レイチェルちゃんの目で?」

「うん。居場所さえ分かれば覗き視れると思う」

「なるほどな。でもどうやって探すんだ?僕もそれなりに資料を読み漁ったがいくつか候補を出すだけで特定まではいけなかった。それも候補は大陸中にある。総当たりは骨が折れるぞ」

「うーん……」


 候補が絞れてるなら総当たりしてもいいけど時間かかるな……もう少し居場所を特定する方向で模索してみてもいいかもしれない。


 とはいってもなぁ……私達だけじゃ無理っぽいんだよな。

 最悪迷宮で狩りまくって大量の魔石で巨大《空間把握(グラスプ)》……いや、属性変換の負荷で私が死ぬなこれ。


 うーん……何か情報がほしいな……クレイ教のツテ……もうスキャンダルでもなんでもいい。関係者のあら探しして懐に入り込むのが一番早いかもしれない。

 とはいえそれも情報の流通が少ないこの時代じゃなぁ……あ。


「……アーノルドさん」

「アーノルド?あの回復役の?」

「アーノルドさんってクレイ教の司教だったよね!?」

「あ!確かに!」

「ダメ元で聞いてみようよ!」


 司教って確かそれなりに偉い立場だったはず。もしかしたら何か知ってるかもしれない。


「行くよ!」

「おいおい今すぐか?」

「私に距離は関係ないから。ほら、近寄って」

「またやるのか……」

「なあ、いやな予感がするから後日合流じゃ……」

「ダメ。ほら、行くよ──」

「何を──うおぉぉぉおおお!?」


 また空を跳んで行く。



 今日の夕焼け空には絶叫が響き渡った。

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