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8-17 知識の火種

「たすけて~……」

「何があったの?」

「ぐちゃぐちゃだし資料見つけても良く分からないし……」

「色々手助けしてくれるのはありがたいんだけど僕は字も分からなくてね。教える側が手こずって進まなくて困ってたのさ」

「なるほど……」


 確かに魔術の教科書なんかは読み漁ってるから分かるけど、歴史的な出来事をまとめたレポートや地図帳なんかは書き方がガラッと変わる。ヒナが上手く読めなくても仕方ないだろう。


「わかった。私も手伝うよ」

「ありがとう。助かるよ」

「ありがとう……」


 とりあえず軽く整理してからかな……


「……よし、何から行く?」

「とりあえず地理関係を知りたいかな。同じ大陸なら土地勘が働くかもしれない。ここが北って言うのはわかってるけど、他に何があるのか知りたい」

「わかった。まず大陸中央は大きい山があって、北に迷宮、東に開拓地、南は王都があって、西は農地が広がってる」


 地図帳を使いながら軽く説明していく。


「ふむ、西は農地になったのかい」

「うん。土地が豊かでいい作物が実るんだって」

「へぇ。ということはもう精霊は居ないのかねぇ」

「……昔の領地だっけ」

「そうだね。僕が転移して、一年をティターニアと過ごした地だ。君にも見せてあげたかったよ」

「体の構造が違うから記憶を読めないんだよね……」


 愁人の話だと精霊は自然のエネルギーをもとに生きる魔力生命体らしい。

 つまり、体に血が流れてないから血液経由で記憶を読めない。


 でも過度に身体が損傷すれば活動不能になり休眠状態になるし、記憶の整理をするために睡眠もとるんだと。

 でも原理的に死ぬことはなくて、理論上永遠に生き続けたりするらしくて……興味深いけど調べるだけの時間も材料もないからなぁ……


「原理上姿を消すことはあっても死ぬことはないはずなんだよねぇ……ほっとけば勝手に生き返ってくるような生き物だ。それが現代に全く残ってないってことは何かあったんだろうねぇ……まあ、力を保有してるままのティターニアは生きてるかもしれないけど」


 ……確かにティターニアさんは他の精霊と違って精霊としての力を愁人に譲渡してない。もしかしたら生きてるのかも……?


 ……いや、流石に希望的観測が過ぎるかな。


「あとは宗教かな。ギルドに来る途中教会っぽい建物があったけどあれはなんだい?」

「そのまま教会だよ。今はクレイ教っていうのが広く信仰されてる。お祈りと『ステータス』で自分の魂にこびりついた他者の魂を吸収して再利用できるっていう術式があるの。なんでも他者の魂が纏わりつき続けてると体に影響がでて健康に悪いらしいよ」

「へぇ……通りで」


 そういえば魂に関与する術式らしいし愁人ならどういう術式なのか解明できたり……?


「何か見えたりする?」

「う~ん……──いや、現代の魔術は僕の知識不足もあってよくわからないな。ただ僕の時代にも似たような術式が広がってたよ」

「あー……『ステータス』術式はアルも使ってたし意外と大昔から使い続けられてる魔術なのかもね」

「だね。というかそのお祈り自体似たような術式はあったと思うよ。まあ詳しく見てないから何とも言えないけど」

「へぇ~……」


 まあ健康を害するって分かってるあたり過去に何かあったんだろうなぁ……でもその資料残ってないんだよね。不思議だなぁ。


「……じゃあこれが……いや、でもこの線は……」

「……愁人?」

「ああすまない。独り言だ気にしないでくれ」

「……そっか。あと気になることは?」

「んーやっぱり読み書きを教えて欲しいな。自分で読んで自分で理解したい」

「わかった。でもここの書類は結構難しいよ?」

「まあ壁に当たったらその都度君達に聞くさ。ヒナも教えてくれるだろうしね?」

「私にできる範囲ならなんでも教えるよ~!」

「そうか。頼もしいねぇ」


 私も暇だし手伝おうかな……それに、できる限り要求には答えてあげたいしね。


「私も手伝うよ」

「助かるよ。でも一回自分でやってみていいかな?こういうのは自力で理解した方がなんとなく覚えられるんだ」

「わかった。でもわからなかったら早めにね?」

「分かってるよ」


 そういうと本を何冊か手に取りかろうじて確保したスペースの一つである机に陣取り、文字列に目を通し始める。



 そうして、しばらく時間が経つ。

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