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8-8 精霊の森

「だぁ……つっかれたぁ……」

「すまん、ダグラスが死にそうだから水貰っていいか?」

「うん。暑いもんね、仕方ないよ」


 拡張収納(マジックバッグ)から水筒を取り出し、コップに注いで手渡す。


 現在は第二十層、次の層への境で休憩中だ。


「すまん助かる……っ、はぁ……生き返る……」

「カイさんも飲みますか?」

「いや、俺は用意してあるから大丈夫だ。それに、暑さにもそれなりに慣れてるからな」


 カイさんは自分の水筒を取り出して──魔術で水筒を満たす。

 そういえばこの人水属性だったな……


「少し日陰を作りましょうか」


 そう言うとアーノルドさんが小さな木を生やし、階段を日陰を作る。

 天井に干渉しないギリギリのラインの高さで調整し、日光らしきものを遮ってくれた。


「ありがとうございます……」

「ヒナも、はい」

「ありがとう……」

「ベインもいる?」

「いや、俺は……へ、平気だ」

「大人しく飲んで。はい」

「おう……」


 これ毒の効果も薄まってきてるかな……早めに休憩を切り上げて次の層の環境を見て次の毒を飲むか決めた方がいいかな。


「よし、そろそろ行こう」

「分かった。ダグラス、ラザ、行けるな」

「おう……」

「ええ」

「ヒナ、ベイン、行くよ」

「おう」

「了解」

「よし、アーノルド、俺達も行くか」

「ですね」


 八人全員が立ち上がり、迷宮第二十一層へ向けて足を踏み出す。


「──《空間把握(グラスプ)四重展開(カルテット)》」


 第二十一層全体を、視ていく。


 地形、生命反応、魔力反応、物体の動き、気体の流動、その全てを視認していく。


「──なんだろう、これ……」


 二十一層は森林のフィールドで形成されており、至る所に精霊種の反応がある。

 でも、七から九層のように何かの生物、魔物の体を器にしてるのではなく最初から精霊自体が徘徊してる。


 それに、数が多い。上より数倍の数が徘徊してる。

 それと、森と言っても十一層のような蒸し暑いジャングルじゃなくて、涼しさすら感じる広葉樹の森だ。落ち葉も少なく、獣道のようなものもある。


 そして、何よりも気になるのが──


「……敵意がない?」


 上の精霊種は接敵する前からこっちに近づいてきて、攻撃してきていた。

 でも、ここの精霊にはそういう気配がない。こっちを気にしてるような素振りはあるけど攻撃してくるような乱暴さはない。


「どうだ?」

「……いろいろ気になるけど、ひとまず問題はなさそう」

「分かった。なら進んでみないか?まだここは二十一層、俺達が目指してるのは三十層だ。少しでも情報があった方がいいと俺は思う」

「俺もそう思うぜ。このメンツで見た感じ罠の類も無さそうだ。進んでみてもいいと思う」

「……ですね。進んでみようか」

「分かった」


 木漏れ日の差す涼しい森の中を歩いていく。


 獣道はあったけど魔物や野生動物は見当たらず、木の陰から精霊がこっちを覗いてくるだけだった。


「……なんというか、敵意はないんだが……」

「物珍しさというか、そんな感情のこもった目ですね」

「なあ、迷宮ってこんな魔物が居るのか?一応一通り調べては来たが発見報告の挙がった魔物にここまで大人しいのはいなかったと思うんだが……」

「私もこんな魔物と遭遇したのは初めて」

「俺もだ。やっぱり新層は何が起こるかわからんな」


 そのまま警戒しながら歩いていく。


 なんというか……上の精霊より中身が無邪気というか、子供っぽいというか、そんな感じがする。

 あくまで私の主観とフィーリングだからなんとも言えないけど、どことなくそんな印象がある。


 喋りもしない。これといってアクションを起こす訳でもない。

 でも、どことなく幼稚ではあるけど知性を感じる仕草だった。


「なあ、これって……」

「……うん。三十層に続く台座だと思う」



 あれから一時間ほど、一度も戦闘すること無く二十九層最深部へ到達した。

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