8-7 explorers
「よし、全員揃ったな」
「はい」
「ああ」
依頼を受け集まった私達三人、その手伝い兼シンプルに探索しに来たカイさんのとアーノルドさん、そして私達に依頼を出した上位魔術師のアベル、ダグラス、ラザの三人。
合計八人が迷宮に入っていく。
「……ん、左の廊下から二匹」
「やっぱり便利なものだな。それは」
「アベルは簡単に使いこなせると思うけどな」
「前に失敗してからあまり手は出してないんだ。今の魔力量でやると失敗したじゃ済まない可能性があるからな」
「なるほど」
空間魔術は何をするにしても《空間把握》が前提だ。そして《空間把握》は脳に直接情報を流し込む性質上制御を少しでもミスるとそのまま制御がつかなくなってしまう。
それを成長し魔力量が増えた今、勝手がわからないまま手探りで使うと取り返しのつかないミスに繋がる可能性がある。
……うん、改めて考えると恐ろしいな……
「そういうわけだ。索敵は俺もできるがお前のほうが精度がいい。頼んだぞ」
「分かった」
やっぱり、この魔術に早めに目をつけといて良かったな……
「来るよ」
「ダグラス」
「了解」
二匹の黒迷犬が襲いかかってくる。なんとも無謀なことだ。
「《暴風》」
短く言葉が紡がれる。
風属性の基礎中の基礎、風属性を学ぶ者なら誰であれ一番最初に目を通す魔術。
だというのに、暴力的なまでの風圧と殺意を持って紡がれる。
とても基礎的な魔術とは思えないほどの破壊力と魔力量の魔術が襲いかかり、二匹の黒迷犬は挽き肉なんて形容するのも手ぬるいほどの粉塵と成り果てる。
「すまん、ちょっとやり過ぎた」
「仕方ないだろう。初めての探索だ。少しやり過ぎるくらいで丁度いいだろう」
そんなことを言いながらアベルは粉の中から小さな魔石を拾い上げる。
「ふむ、これが魔石か。実際に発生するのを見たのは初めてだな。……これ、確かギルド経由じゃいと売れないんだろ?」
「う、うん。扱いが難しいし危険なものだから売買は制限されてる」
「そうか。なら俺達が持ってても仕方ないな。お前が売ってくれ」
「分かった。じゃあ後で山分けするね」
「助かる」
二匹の魔石を仕舞い、また前に進んでいく。
「王国魔導師団って凄いんだなぁ……」
「ですねぇ……」
あれからなんだかんだ十層までトントン拍子に進んできた。それも戦闘はほとんど上位魔術師組がやっちゃって私達は案内してるだけだった。
あまりにも簡単に行くのでカイさんとアーノルドさんが手持ち無沙汰になってる。
ただまあ……
「……流石に堪えるな」
「そりゃ道中の透光蜥蜴全部相手していくんだもん」
「仕方ないだろ、気づかれたんだから」
「そりゃそうかもしれないけどさ……」
一応仲間を呼ぶ習性があるのは伝えたけど、移動中に足音が息遣いかは分からないけどバレて、普通に応戦して百体近くの蜥蜴を相手にすることになったのだ。
「どういう理屈で仲間を呼んでるのか解明されてるのか?」
「いや、そういった話は聞いたことないかな」
「声か超音波かそういう器官を持ってるのか、興味はあるが解剖学とかは専門外だからな……」
「私も」
「いっその事学者を連れてくるか」
「それが難しいから分かってないんだよ」
「だろうな……さて、ダグラス、ラザ、そろそろ行けるか?」
「ああ。すまねぇな、休憩時間取らせちまって」
「行けるわ。よい、しょ」
軽く汚れを払いながらみんな立ち上がる。
「この先も案内を頼む」
「任せて」
また、八人で迷宮を踏破していく。