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8-5 冬空の藍衣

「おう、来たか」

「はい。完成したと聞いたので」

「バッチリ最高傑作に仕上げたぜ」


 自信満々に三つの箱を並べる。

 厳重に魔術で封がされており、簡単には開けられないようになってるんだろう。


「《開封(アンロック)》」


 短く声が響く。

 それだけで何十にも重ねられた封印術式は解かれ、箱が開く。


 意外とあっさり開くんだな……部外者が開けられないことだけを追求した術だったのかな?だから関係者は簡単に開けられるようになってたとか……参考になるなぁ。


「ほれ、お前らのモンだ」


 ダグラスさんは三つの箱をそれぞれ手渡していく。


「使い方は……まあ自分で使ってみたほうがわかりやすいな、これに関しては」


 なげやりだな……

 でもまあ、実際そうなのかもしれない。今まで魔術について学ばずに生きてきたダグラスさんに無理に説明させてもどうしようもないところがあるからな。


「よっ……と」


 真新しい、新品のコートに袖を通す。


『魔力反応、生体反応を確認しました。あなたを使用主(ユーザー)として登録しますか?』


「……聞こえた?」

「いや……むしろこっちのは聞こえたか?」

「何も」

「えー!なにこれすごい!喋った!」


 ……もしかして、着用者にしか聞こえてない?


『登録しますか?』


 ……はい。


『あなたを使用主(ユーザー)として登録しました。これより《冬空の藍衣》はあなたに従います』


 名前あるんだ……


『機能説明を聞きますか?』


 ……じゃあ、はい。


『《冬空の藍衣》は自動洗浄、浄化、自動修繕、自動伸縮、耐久性増強、強度増強、自動着衣、脱衣、遠隔操作、重量操作などの機能が備わっています。いずれもあなたの魔力操作、状況に応じての自動変化、発声による命令を受けることで機能し、あなたの意思に沿うよう作成されました』


 ……じゃあ、ちょっと動かしてみようかな。


 《冬空の藍衣》に魔力を流し、裾を伸ばしてみる。


「わっ」


 本当に伸びた。それも裾だけ伸ばしたり、全体のバランスを保ったまま伸ばしたり、自由自在に変形させられる。


 自動着衣、脱衣、遠隔操作に関しても意のままだ。


 値段が値段なだけあってちゃんといい性能してるらしい。


「どうだ?」

「……凄いです」

「そりゃよかった。俺もこんな大仕事やったの久しぶりでな……まあそうそう簡単に壊れる作りにはしてない。術式の方もな。元取るくらいは使ってやってくれ」

「はい。大切に使わせてもらいます」

「おう」


 《冬空の藍衣》に袖を通し、身に着ける。


 重量も外見も前のコートと同じ、サイズも勝手に調整してくれる。使い勝手も変わらない。


 ……本当にいい仕事をしてくれたんだな。


「うっし。試し斬り行こうぜ」

「私も行きた~い」

「迷宮にはすぐ行くでしょ」

「けどよぉ……」

「ほら、行くよ」

「へいへい」

「は~い……」


 ごねる二人を引きずるようにして鍛冶場を出る。


「ありがとうございました」

「おう。また何かあったら持ってこい。作れるモン、直せるモンなら請け負ってやる」

「はい。何かあったら、また」


 分厚い鉄扉を閉め、肌寒くなってきた外の空気に触れる。


「後で見せてくれよ、そのコート」

「いいよ。ベインのも見せてよね?」

「ああ。またできることが増えたし鍛錬のやり甲斐があるな」


 ベインは武器が変わったからな……慣れるまでは大変そうだなぁ……


「じゃあ迷宮に行かない分付き合ってくれよ?」

「はいはい」


 今度は私が引き摺られるように修練場に連れていかれる。



 まあ、私も《冬空の藍衣》使ってみたいし付き合ってってみるか。

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