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7-78 散々な旅の終わり

「では、達者でな」

「はい。いろいろお世話になりました。ザイルガンドさん」

「こちらこそ世話になった。ヒト側の体制まで整えてくれるとはな」

「いや……あれは、なんというか……ねぇ?」

「まあ……うん。そうだな……」


 私達はベインが取ってきた書類をマルクのお父さん──前ギルド長に郵送し、前ギルド長の伝手でいろいろ手回しした結果、ティアデルフィアの領主のいろんな悪事を明るみに出した上、次の領主まで決めてしまったのだ。


 そしてその領主が──


「まさか、俺がこっちの領主になるとはな……」


 マルクが、領主に抜擢された。


 理由はまず一つ、鉱山の補強をマルクがやってしまったからだ。


 魔術は魔方陣を刻んだりしない限り術者が離れれば消える。そして、あの補強は魔方陣を介さずにやってしまったものだ。


 つまり、マルクが離れすぎると鉱山が崩壊する。

 せっかく見つかった鉱山を失うのは流石にもったいないと思われたのか、後釜にマルクを据えることが認められた。


 そして二つ目。どっちかというとこっちの方が大きい。


 亜人と関係を持ったことだ。


 この先亜人とは嫌でも関わっていかなければいけない。でも、差別してた相手と関わりたいと思う貴族や為政者は居なかった。

 そこでマルクにそのまま面倒事を押し付ける白羽の矢が立ったのだ。


 金鉱を失わない、面倒な仕事が回ってこない、この二つの理由から本来候補にもならないはずのマルクが抜擢された。


 でもまあ、亜人の人達としても都合がいいし、隷属機もちゃんと管理下に戻ったし、その管理もマルクの目が届くところになったし、都合がいいって言ったら都合がいいのかもしれない。


 あと──


「マルク、『アンブロシア』の経営もやるんだもんね。本当に大丈夫なの?」

「やるというか、手伝うだな。流石にティアデルフィアからギルドの運営は無理だ。まあ、そのうち後継見つけてラタトスクに帰るし、ギルド長を継ぐための足場作りだな」

「儂らからすれば主がヒトの長をやってくれてる方が楽なんだがな……」

「まあ、そもそも政治目的で来た訳じゃないですし、俺にも色々とやるべきことがありますので」

「そうか……」


 まあ、マルクがギルド継がないとカイさんがね……


「レイ、そろそろ出ないと予定どおりには帰れないだろ」

「……そうだね。それじゃ、連絡はちょくちょくするから、頑張ってね」

「ああ。まあ、一、二ヶ月もすれば帰るさ。またな」

「……うん。またね」


 マルクに見送られながら、馬車を出す。


「はぁ……寂しくなっちゃったね」

「だね……まさか二人も減るなんてね」

「師匠はそんな予感してたけど、まさかマルクも別行動とはな」

「まあ、あの状態でもう一回一ヶ月旅するのは傷に障るしね……」


 マルクの左腕はまだ状態が悪い。下手すればまだ悪化する可能性もあるのだ。

 これも代償で生命力を削った結果かな……


「暇になったまったし、さっさと帰ろうぜ」

「だねぇ……」


 そんなことを言いつつ、行きと同じ道を旅して約一ヶ月ほど、北のラタトスクに帰りつく。


「戻りました」

「おう。お帰り。話は聞いたぜ?やり遂げたんだってな」

「……はい」

「まあ、なんだ。後で色々聞かせてくれよ。でもまあ、今はとりあえず……依頼の達成をここに確認した。契約に基づき報酬をここに。ほれ、確認してくれ」

「え……こんなにいいんですか?」


 渡された紙には白い硬貨が十万枚枚以上が記された。

 日本円にして十億円以上、少なくともポンと出していい額じゃかい。


「まあ、マルクのやつはこの先金が要るだろ?いくらか送ってやれ」

「ありがとうございます……」


 正直、政治に使うお金の感覚がないからどれくらい送ったらいいのか分からない。というかお金はそこまで要らないし、ほとんど送ってしまってもいいかもしれない。


「あと、今お前達にギルドを離れられると困るから手付金みたいなもんだな」

「え?何かあったんですか?」


 離れられると困る?


「今回の件で色々バレて査察が入ることになった。そして責任取って俺はギルド長を辞めることになった」

「……はい?」


 ちょっと待って欲しい。査察が入ってたカイさんがギルド長辞める?


「迷宮で起きてることについて王国魔導師団から査察が入ることになった。亜人と不用意に接触し、召喚された者に対して人道に反する行為をしたとして責任を取らされた。これだけの話だ。別にギルドを辞める訳じゃない」

「え……いやでも……」

「ほら、査察の人達来てるんだから、挨拶してこい」

「ちょ、ちょっと待っ──」


 カイさんに押され、違う部屋に通される。


「──ん、来たか」

「……え?アベル?」

「ああ。学院以来だな」



 そこには、かつての上位魔術師(アークウィザード)クラスの面々が居た。

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