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7-75 幻霜一刃

「《火炎(フレイム)不死鳥(リ・フェニックス)》!!」


 朱い焔が降り注ぐ。

 夕焼けよりも朱く、太陽が落ちてきたのではないかと思えるほどの熱を伴って不死の焔が放たれる。


「っ!効いてない……!?」


 あれだけの高温と魔力がこもった炎が簡単にかき消された。


 聖遺物をつかった攻撃でも通らないの……?いや、でも流石に何の影響もないってことは考えづらい。

 ヒナの魔力と出力量で無傷なら何かからくりがあるはずだ。


 アルのときみたいに迷宮から魔力が供給されてる?可能性はなくはないけどこの距離で?

 推測で確かな根拠があるわけじゃないけど、アルのときでも結局誰かを仲介しないと干渉できなかったんだ。今回のこの距離で魔力を満足に供給できてるとは思えない。


 でも、そうは思えないほど巨大で強力なものが目の前で暴れてる。やっぱり何か魔力を供給できるんだろう。


 やっぱり代償?もしくは、桜華以外に仲介できる物がある?というか迷宮と関係ある現象なのか?


 ……特定できたところで止められるかもわかんないし、多分そんなことしてる余裕ない。


 なら──


「ヒナ!関節を狙ってもっと小さく絞ってぶつけて!」

「了解!」


 あの硬さを上回ってダメージを通すなら脆いところに一点集中で突破するしか無い。


「《天落焔槍(フォールブレイズ)不死鳥(リ・フェニックス)》!!」


 さっきの巨大な焔とは打って変わって、小さな投げ槍が竜の肩関節を狙い、亜音速で放たれる。


「っ──!」


 爆裂音と黒板を引っ掻いたような音が響き、次第に耳鳴りで周囲の音がかき消される。


 空には、蒼い水晶の破片が舞っていた。


「右腕が……!」


 竜の右腕の一部が破損していた。

 槍を受け止めたであろう爪の三本のうちの一本が欠けていた。


 でも、もう回復し始めてる。


 狙いとは違うけど一定の攻撃力がある攻撃ならダメージが通ることと再生能力があることが分かったのは大きい。

 なら、狙うのは一つだ。


 全員で一箇所を集中攻撃して回復される前に倒し切る。


「ヒナ!ベイン!竜の胸を狙って!」

「了解!」


 桜華が居る場所は分かってる。竜の胸部だ。そしてこの竜のもとになってる水晶の術者は桜華だ。

 なら、術者を止めればこの竜も止まるはずだ。


 それに、桜華とは話もしたい。


 このままでお別れになんてしたくない。


「いっけぇ!!」


 更に魔力を込めたヒナの《天落焔槍(フォールブレイズ)》が胸部目掛けて放たれる。

 しかしその攻撃は分厚い水晶の装甲と両腕で防がれる。


 早い……でも、これでまた腕が壊れた。


「ヒナぁ!火ぃよこせぇ!」

「え!?わ、分かった!」


 ベインの無茶ぶりに半ば投げやりな感じでヒナは焔を放つ。

 何するつもりなんだろ……


「《天衣無縫(アイギスエアリアル)》──」


 風を纏い、ヒナの焔をそのまま体で受ける。


「『裂き喰らうは紅き翼』、『狂い咲くは紅蓮の太刀』!」


 詠唱と共に焔と一体化した風の衣が一本の刀に移っていく。


「変生、《焔の太刀(ホムラノタチ)紅蓮一閃(グレンイッセン)》!!」


 紅い、紅い一条の光が奔る。


「っ!レイチェル!」

「任せて!」


 砕けた刃と蒼い水晶の舞う中、村雨を構えて接近する。


 魔石を還元して得た魔力全てを一点に集める。

 形造るのは、一振りの刀身。


 イメージするのは、完全体の村雨。──聖遺物になる前の私の刀で、欠けた聖遺物の本来の姿。


「『束ね、纏め、重ね、紡ぐ』。『百の魂纏いて織りなし』、『銀嶺の頂点で、私は嗤う』──」


 これが私の、本当の刀──


「《幻霜一刃(ロストブレイド)》!!」



 あり得ざる氷晶の(つるぎ)が、その手に握られていた。

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