表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
321/398

7-72 再会と

 走り出す。


 鉱山の入口の近くに掘っ立て小屋が数件、その中に桜華と賊がいる。


 鉱山の中は《空間把握(グラスプ)》で視えてる。

 下手に衝撃を与えれば崩れかねない。特に知識もないまま無理に掘り進めてるんだろう。

 だからヒナは大きく動けないしマルクも地形に作用するような魔術は使えない。


 あと、運が悪いことに昼でも普通に活動してた。


 それと、ちょっと気になるところがあって、ところどころ補強されてるところがある。

 材質不明、補強されてる場所に規則性はない。

 でも、心当たりはあった。


 桜華の水晶だ。

 桜華の水晶は材質、体積、強度、形状を自由に変えられる。

 見覚えは無くても多分桜華がやったんだろうなって推測はできる。


 とまあ、とりあえずすぐに崩れる状況じゃないし、最低限動ける足場はできてる。


 なら──


「私が一人ずつ無力化してくる。私ならバレても多少無理が効くし制圧能力もある」

「分かった。じゃあその間に捕まってる人を助ける。ついでに陽動もやってくる」

「分かった。じゃあ、また後で」


 光魔術で体を隠し、バレないように潜り込んでいく。


「───、──!」


 さっき隠れてた方から声が聞こえる。

 マルクが言っていた陽動だな。おかげで動きやすくなった。

 あと、制圧に向いてないヒナはまだ隠れてる。


 意識がマルク達に向いてるうちにさっさとやってしまおう。


 桜華は後回しだ。行けるところから確実に行こう。

 音を立てないように扉を開け、中の賊を凍らせる。騒がれないように口まで塞いで鼻だけ開けておく。


 まず、一つ。


「ん……」


 マルクの方に桜華が引っ張り出されていったな。


 とりあえず無事そうで良かった……暴力を受けた形跡も視た感じ無いし良かった。


 前回みたいに人質を取られないように他の賊を優先しよう。


「ふぅ──はっ!」

「!?」


 追加で二人拘束する。

 とりあえずこれで人質を取られるようなことはなくなったかな。


 あとは──


「ハハッ!わざわざ死にに来るなんてアホな野郎だ!しかも女連れかよ!献上品まで持ってくるたァ礼儀のなったアホだなァ!」


 なんか賊がイキってるな。しかも前回桜華連れて逃げたやつだし。


「そうか。俺達がお遊びやもの好きで来てるだけだと思ってるならめでたいやつだ。そのままお縄につけ。もっと幸せになれるぞ、他の人間がな」

「ハッ!言うじゃねぇか!殺せェ!」


 沸点の低いことで。でもまあ──


「……は?……はァ!?」

「頭がお花畑なら首から下は土に埋まってないとおかしいだろ?」

「ふッ、ざけんなァ!殺せ!ころ──!」


 命令を受け、三人を殺そうとした人達は手足を固められて動けなくなっていた。

 そして最後に口を塞いで命令の上書きができないようにする。


「はぁ……こんなの二度とやらせんなよマジで」

「すまんな、助かった」


 鉱山が崩れる可能性があるから地形に作用する魔術は使えない。

 だから、マルクはベインと協力して自前の魔力で土を用意して四十人以上を固めたのだ。


 ただ、一人を除いて。


「っ!やっぱり止められなかったか」

「だろう、なッ!」


 マルクに斬り掛かってきた桜華を蹴り飛ばす──が、完璧に近い形で受け身を取られたのでダメージにはあんまりなってない。


「おぉらァ!」


 すかさずベインが追撃するけどそれも防がれた。

 でも、ここでカウンターを入れてこないあたりやっぱり手加減してそうだな。ちょっとでも命令に抵抗しようとしてるのかもしれない。


「ふっ!」


 マルクも魔術を撃って拘束を試みるけど躱される。

 それを更にベインが追撃したり、同時に攻撃したりするけどどれも決定打にならないどころかいなされてる。

 桜華も命令に従ってか反撃してくるけどどれも急所を外してるし、簡単に防げるような攻撃しかしてこない。


 これなら──


「──ぁ、あぁ……あああぁぁぁぁぁあああ!!!」

「!?」


 桜華が急に叫び声を上げる。攻撃が当たったわけでもないのに、急に豹変した。


 その目に宿る意思が、完全な殺意に染まる。


「っ!」


 思わず飛び出した。今を逃せば止められる機会は無いような、そんな予感がした。


「《凍結(フリーズ)》!!」


 ありったけの魔力を、拘束に注ぎ込む。


 けど──


「レイ!」


 弾き飛ばされた。氷は一瞬で砕かれ、青い血管のようなものが天を突かんばかりに伸びていく。


 その光景に、私は見覚えがあった。



 記憶の中の竜が、水晶の体で形作られていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ