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7-63 blunder

「ぅおらァ!!」

「ひぃっ!?」


 ガキン、暗闇で満ちた森に金属音が響く。


「マジかよ!?」

「……」


 完全に死角からベインが男目掛けて放った一撃をオウカが間に入って防ぐ。

 これ

 今のを防ぐのか……いや、そもそも奇襲がバレてた?視線、移動音、呼吸音、何かからバレた?

 いや、これも今考察しても仕方ない。とりあえず隷属魔術の支配下に置かれたとしても技量は変わらないらしい。厄介だな……


「ベイン!そのままオウカを引き付けてくれ!」

「簡単に言うなよ!?やるけどなぁ!」


 纏っている魔術により魔力を込めて剣戟の速度を上げる。

 オウカもベインの方が危険と判断したらしくベインと一緒に離れていく。


「っとと」


 二人が離れて力が抜けたのか、レイを手放し、地面に座り込んだ男をレイを受け止めながら一瞥する。


 まあ、もうこれ以上話すこともないだろう。

 さっさと魔術で固めてオウカを──


「は?」


 冷たい殺気が首筋に触れる。


「ぐっ──」

「ベイン!?」


 吹っ飛ばされたのか、投げ飛ばされたのか、かなりの勢いでベインが飛ばされてきた。


「はぁ──マルク、そいつはなんて命令したんだ?」

「確か自分を助けろって命令したはずだが……」

「やっぱりか……一定距離離れたら引き返し始めたんだ。それで追いかけたら……このザマだ。それより気をつけろ、来るぞ」


 警告と同時に暗闇から刀を携えたオウカが出てくる。


「……ベイン、オウカの行動の優先順位は分からない。ただ、推測するにその男の安全が最優先、もしくは男の近くにいる者が優先されるはずだ。だからそいつからレイと一緒に離れててくれ」

「分かった」


 多分命令の内容的に男に危害を加えなければ何もしてこないんだろう。

 だが、ここでみすみす男を逃がすわけには行かないし、逃がせばセットでオウカも連れて行かれる。


 ……それに上手く引き付ければ隙を付いてベインが隷属機を解除してくれるかもしれない。勝算が無くても、やるしかない。


「ふぅ──」


 軽く息を吐く。剣を握る手に力を込め、死地に向かって一歩目を踏み出す。




















「ん……」


 目を開けば真っ暗な森の中だった。


「レイチェル!起きたのか!?」

「ん……ベイン?……ってその血どうしたの!?」

「気にすんな!それより歩けるなら自分で歩いてくれ、少しでも離れたい」

「う、うん……」


 とりあえずベインの背中から降りて自分の足で歩く。


「ちょっと待って、今どういう状況?」

「乗っ取られた!」

「何が?」

「オウカが!」

「え?」


 ちょっと待って、桜華がなんだって?乗っ取られた?


「多分オウカに隷属魔術の魔法陣が刻まれてたんだ!いつどこでどこに刻まれたのかは分かんねぇけどな!」


 ……思い当たる節がないわけでもない。けど桜華が……?

 いや、それより──


「じゃあ桜華は今どこに!?」

「マルクが戦って足止めしてる!だから離れてるんだよ!」

「戻る!」

「はぁ!?」

「桜華相手に一人で戦う!?それも隷属魔術の効果を受けた状態の!?見殺しにする気!?」


 一対一ならここの誰が相手しても勝ち目はない。それはこの一ヶ月でよく理解した。

 それなのに洗脳状態で戦う?本当に死にかねない。


「待てよお前戦える状態じゃ──」

「戦えるよ!魔術薬(ポーション)だってちゃんと効いてる!」

「いや命令は術者を助けろなんだ、だから術者を攻撃しなきゃそこまで全力で反撃されないはず──」

「ならなおさらその命令が効いてるうちに止めるべきでしょ!?もし命令が殺せに置き換わったらどうするの!?」


 実際『ステータス』でも魔力は上限の半分くらいまでは回復してるし、体調も悪くない。

 むしろ通用するかはわからないけどマルクが戦ってるうちに不意打ちをかけるべきだ。


「……分かった」

「ありがとう」


 同意を得られたので道を引き返す。

 そしてそうかからないうちに戦闘音が聞こえてくる。


「マルク……」


 最後に会った時から切り傷が増え、鎧にも傷が付いてる。

 でも重傷は負ってないみたいだ。よかった。


 ただ思ったより術者と戦ってる場所の距離が近い。これだと先に桜華を無力化しないと術者を押さえられないかもしれない。


 ……上手くいくかは分からないけど、やってみるしかない。


「ふぅ──行くよ」

「……ああ」


 マルクも《空間把握(グラスプ)》を使ってるみたいだし合わせてくれるはず。

 それにベインもいる。きっと上手くいく。


 だから、不安を消すように、力いっぱい、気合いをいれて一歩目を踏み出す。



 ──絶対に止める。

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