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7-62 隷属

「ハァっ──ハァっ──」


 何なんだアイツ!?三人もあっという間にやられた!


 森に入っても撒けないどころか近づいてきやがる!歩きなれてる俺よりもだ!


 幸い魔道具は俺が持ってきてる。起動さえできれば奴隷どもに足止めさせて逃げきれる。


 そうだ奴隷どもはどこだ?

 魔道具の効果範囲は半径百メートル、一度発動させてしまえば範囲外に出ても魔道具を止めない限り効果は継続する。

 一回でも奴隷どもに使えればいいんだ。一回でも……クソが!追われながらンなことできるわけねぇだろ!


 どっかで一回撒くか隙を作らねぇと……ああクソ!この魔道具が先に魔方陣を刻まねぇと使えねぇのがめんどくさすぎる!

 命令を聞かせられないコイツにできることなんて、多分効率的に命令するためについてる周りの人間の位置を特定する機能くらい……あ?


「……ハッ、ツキが回ってきたかもな」



















 ……おかしい。急に走る方向が変わった。それもレイがいる方向に向かってだ。


 もしかして居場所が分かってる?


 隷属機の効果?もしくは何かしらの魔術、何かの痕跡からバレた?

 ……いや、今考察しても仕方ない。捕まえる方が優先だ。


「マルク」

「オウカ?避難誘導はどうしたんだ?」

「一通り終わったのでヒナに任せてきました」

「そうか。こっちもすぐ終わらせる。《地震(アースクエイク)》」

「うぉっ!?」


 足場を揺らして妨害する。これは慣れてないとまともに立てもしないからな。捕縛にはうってつけの魔術だ。


「クソッ!クソッ!!なんでもいい!なんでもいいんだ!範囲指定最大範囲!対象無差別!俺のッ、言うことを聞けぇッ!俺を助けろォッ!」


 往生際悪く隷属機を振り回す……が、ここにそれが効く人間は居ない。


 居ない、はずだった。


「ぇ──あ──?」


 オウカが膝から崩れ落ちた。


 ……やっぱりか。オウカには、何故か隷属魔術が効く。


「オウカ、落ち着け。見た限りだとオウカの心が折れない限り完全に支配下に置かれることはなさそうだ。だから、落ち着け」

「は、い……」


 よし、とりあえずこれで大丈夫そうだな。

 あとは……


「ンのクソガキがァッ!」

「っ!」


 男が近くにあった石を投げつけてくる……が、別に早くもなければ投げる前から分かってたので掴んで投げ返す。


「ひぃっ!」

「はぁ……オウカ、()()()()?俺はあいつを追いかけ──オウカ?」

「ぇ、ぁ……ぇ?なん、で……な、何が……」

「オウカ!?どうしたんだ!?」

「だ、ダイアさんが、怪我して……違う!違うっ!!」

「オウカ!?」


 何が起きた!?……待て、これってもしかして記憶が戻ったんじゃないか?

 明らかに様子がおかしい。何か嫌な記憶が戻ったのかもしれない。


「はぁっ──はぁっ──」

「っ……!」


 というかこれ下手したら隷属魔術の支配下に堕ちないか?

 こんな状態のオウカを正気に戻すのは難しいだろうし……隷属機を奪って止めるしかないか。


「オウカ、俺はあいつを追いかける。捕縛したら戻ってくるからそれまで安静にしてるんだ。いいな?」

「ぁ……ま、マルク、待っ──」

「すぐ戻ってくる」


 今あいつを止められなかったらレイが見つかる可能性が高い。

 さっさと止めないと……


「クソがァッ!」

「大人しく諦めろ!」

「あと少し、あと少しなんだよォ!」

「っ!」


 今度は石じゃなく土を顔目掛けて投げつけてくる。そしてそれにあわせて反射的に足を止めてしまった。


 クソ!俺の《空間把握(グラスプ)》が視界を完全に捨てられるほど高性能じゃないのが仇になった!

 今の数歩で──


「ハァ……ようやく辿り着いたぜ」

「レイ……!」


 男の前には、気を失ったレイが倒れていた。


 間に合わなかった……!


「お仲間かァ?丁度いい!殺されたくなければそこから動くな!」

「ぐっ……」


 やっぱりそう来るか。男の目的は逃走、なら、今は人質をとって追えないようにするのが一番簡単な対処法だ。


「お前の名前と目的はなんだ!」

「……名前はマルク。目的は依頼を受けて奴隷にされた人を助けに来た」

「そうか!ならこのまま俺を見逃せよ!お前の目的は達成してるんだろ!?ならこれでウィンウィンだ!」

「それはできない。その女性は俺の仲間だ。そのまま連れ去られるのを見逃すわけにはいかない」

「そうかァ!じゃあ交渉決裂だなァ!」


 まあ、こうなるよな……

 でもまあ、このまま意識を俺に向けさせるだけでいい。それだけで保険が到着する。


「まあ待てよ。その女性を殺してどうする?そのまま俺に殺されるか?女性を連れたまま逃げるのも大変だろう」

「ぐっ……う、うるさい!口答えするな!ここで殺しちまうぞ!?」


 声が震えてる。人を殺す勇気も度胸もないくせによく言う。


「まあまあ、落ち着けよ。第一仲間はどうするんだ?見捨てるのか?」

「ハッ!ンなやつらなんざくれてやるよ!」


 これは本心……とことんクソだな。

 さて、どうするかな──待て、この反応は──


「オウカ!?なんで来た!?」

「ハッ!なんでかは知らねぇけど魔道具が効いた見てぇだなァ!なんでもいい!俺を助けろ!」

「オウカ……」


 目が虚ろでフラついてる。多分意識がない。

 それでも動いてるのは隷属魔術の効果か。


「んぅ……」

「っ……!」


 まずい、レイの意識が戻ってきた。

 今下手に動くとどうなるか分からない。


「そうだそのままこっちに来い!」

「ふ、ざけるなっ!」


 剣を抜いて走り出す。

 オウカに勝てないのは分かってる。けど、ここを逃せば状況は覆せない。


「……」


 オウカが振り返り、水晶で剣を作る。

 恐らく主人を助けろという命令にしたがった結果なんだろう。


 狙いどおりだ。


「ベイン!」

「ああ!」


 合図と同時に一人の男が上空から奇襲を仕掛ける。



 暗い森の中に、一陣の風が吹き抜ける。

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