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7-52 嫌われ者

「……ナニコレ」

「酷いな。ここまでボロクソに書かれるなんて、相当だぞ」


 看板を巡ること五件目、とある結論にたどり着く。


「ここの領主、嫌われすぎじゃない?」


 読んで回った五件の看板の中で、唯一共通して書かれていたことが領主の悪評だった。

 というかそれしか書かれてないところもあった。


「不倫、横領、癒着、改竄、裏金、その他諸々……考えられるスキャンダルが全部書かれてるな。よほどリテラシーと節操のない領主なのか?」

「なんか一概に嘘って言いきれないレベルの根拠がセットで書いてあるから判断に困るね……」


 ただ単に悪口や誹謗中傷が書き込まれてるだけなら嫌われてる、で説明できる。

 けど困ったことにここに書き込まれてる悪評の全てにそれなりの根拠がセットで書いてあるのだ。


 よほどパパラッチが有能なのか、領主に情報リテラシーが備わってないのか、まあどちらにせよあまりいいことじゃないのは確かだ。結果として悪い情報ばっかり出てきてるんだから。


「はぁ……結局分かったのは領主の貴族は嫌われてるってことだけかな」

「だな。これじゃ亜人関連の話は分からなさそうだ」


 結局目当ての情報が得られそうにないことが分かっただけだったな……

 まあ分からないということが分かっただけ収穫はあったと考えよう。


「……とりあえずご飯食べに行こっか」


 結局看板での情報収集は諦め、食事を摂りに向かうのだった。


















「はぁ……疲れた」

「でも楽しかったね~!」

「だな。特にあの商業組合は参考になった」

「真面目かよ」

「真面目は美徳ですよ。でもこういうときくらい羽を伸ばしてもいいんじゃないですか?」

「別に気を張ってるわけじゃないんだが……まあいいか」


 昼食の後、情報収集を兼ねて一通り観光して回った。

 そして今は夕食を食べながら今日の感想を言い合っている。


 以前視察に行った王都には見劣りするかもしれないけど、それでも活気溢れる街は見てるだけでも気分が良かった。

 特に産業組合、あそこはこの街の産業、商業の全てが集まってて、違う業種の間でも意見交換や商談が行われていたりした。いい社会勉強になったと思う。


 ただ、多くの情報が交わる場所なだけに悪い噂も耳に入った。

 領主が一部商会を贔屓してるんじゃないかという話だ。

 装飾に使われていた貴金属……主に金を一部商会、もしくはその商会が扱う店に意図的に流して利益を得てるという話だ。


 これもまた妙に信憑性がある根拠なだけに否定しづらい。というか納得してしまった。


 ここの領主はどうなってるんだろうか。


 よくここまで発展できたなこの街……

 いや実は有能な領主って可能性も……なさそう。


「なあ、結局亜人関連の話は聞かなかったけどよ、どうするんだ?盗まれた隷属機もどこいったか分からんままだしよ」

「んー……あと行ってないところっていうと、更に東に行った開拓地くらい?」

「今森を切り拓いてるらしいな」

「隠れ里と言ってましたし、森の奥に隠れてる可能性はあるんじゃないですか?」

「あり得そう……でもそうなると森の中を虱潰しに探すことにならない?なら私の出番はなさそうかな」

「ヒナは下手すると森を燃やしかねないからな。とは言え俺もあんまり手伝えないと思うぞ?俺は目と耳がよくなる程度だし、野生動物がいる森の中じゃその程度の索敵能力役に立たんだろ」

「となると私とマルクの二人で頑張ることになるかな」

「すみません、手伝えそうになくて……」

「仕方ないよ、こればっかりは向き不向きがあるから」


 森の中を虱潰しに歩き回って遭難とか笑えないからね。そもそも居ない可能性もあるし。

 というか私とマルクがやれば大抵の探し物は秒で終わるし、見つけたあとそこに行くまでを手伝って貰うことになりそうだな。


「でも……心配なんです。隠れてるものを見つけるということは亜人の居場所を奪うことになるかもしれないですから……」

「あぁ……」


 そうなる可能性は否定できない。むしろ経験のある桜華は一番そこが気がかりだろう。


「ファーストコンタクトは気をつける。私も()()を引き起こしたくないしね」


 記憶で見たような襲撃が起こる可能性は否定できない。そんなことにはならないと考えたいけど、起きてからでは遅いのだ。細心の注意を払って当然だろう。


 それにもう奴隷に使われた前例が確認されてる。私達がきっかけで犠牲を生むことは絶対に避けなくてはいけない。


「……とりあえずお会計しよっか」


 暗くなった空気を入れ換えるため、少し強引に話を終わらせる。


 考えはある。無理に接触するつもりはない。

 でもだからこそ、慎重にいくべきだろう。


 何度も何度も考え、策を練る。



 そうして夜を越え、翌日早朝、更に東の開拓地へと私達は足を運ぶ。

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