1-2 異世界の仕組み
早く自力で活動できるようになるため食べる、寝る、少しずつ体を動かす。
毎日毎日繰り返し少しずつ体を作っていった。
前世と時間の流れや暦は変わらないらしく、約3年ほどでルークやローラ監督の元、ある程度活動できる環境が整った。
幸い言語は同じらしく、新たに習得する必要はなかった。
この3年を通して新しく分かったことがたくさんある。
両親の職業、魔術のこと、家庭の経済情報やこの世界のこと。
ルークは鍛冶を生業とし、ローラは彫金細工、それも『魔道具』を主に作ることで金銭を稼いでいるらしい。
この村は農業が主な産業でルークは鍬などの修理や日用品を作り販売していた。
そして週に一度、街に包丁やナイフなどの日用品を売りに行く日があった。
魔術のことはローラから教わった。魔術は名前を唱え『魔力』を流すことで発動するらしい。
『魔力』というものはまだ良くわからない。ローラが作った魔道具を借りて試したが魔力を流し込むことができなかったので発動しなかった。
より強い魔術を発動させようとすると詠唱による補助を必要とするらしい。
あと、詠唱以外にも文字や刻印に残して効果を発動させる方法もある。
とくにローラの魔道具なんかはその典型だった。
文字や刻印を刻み、道具にすることで詠唱の必要がなく、よりコスパよく発動できるらしく、魔力の少ない人でも使えるようになるのだとか。
魔術のことはある程度知ることができたがまだ魔力というものについて理解できてないので魔術は使えないままだった。
図書館でもあれば良かったのだがここは地方の村らしく普及の進んでいない貴重な紙を大量に使う図書館なんてものはなかった。
魔術士になりたいのに魔力を理解できないから魔術を使えない。勉強するための本もノートもここにはない。
途方に暮れた俺──じゃない、私は諦めローラに相談することにした。最近人前でボロを出さぬよう頭の中でも口調や一人称には気をつけているのだ。
ローラは今は仕事中のはずなので仕事部屋にいるはずだ。
私は扉をノックし、返事が帰ってきてから扉をあける。
「あら、レイチェル、どうしたの?」
「お母さん、私魔術の勉強をしたいの」
「そうなの?ならお母さんが教えてあげるわ」
「そうじゃなくて、魔術の本とかでもっと詳しく勉強したいの」
ローラは少し困ったような顔をして答える
「そう…でもこの村にはそういう本が読める場所はないしねぇ。そうだ、お父さんに相談してみましょう」
ローラは言い終わると私と共にルークの仕事場──鍛冶場まで歩いていく。
そしてルークにローラが事情を話す。
「なるほど…。たしか街の方にはあまり大きくないが図書館があったはずだ。俺が街に仕事に行くときに一緒に連れて行こうか?」
「そうね、街の方の図書館だったら魔術の本もあるかも。だったら私もついていくわ。レイチェルを図書館に一人にするのは心配だしね」
そうして3日後、家族3人で街に行くことが決まった。