7-47 隷属魔術
「ありがとうございました〜!」
翌日、朝イチで服を買い足し、東区の調査に出かける。
服は私のを貸せればよかったんだけど……残念ながらサイズが合わなかった。
まさかこんなところで体格差を感じることになるとは……せめてあと五センチ身長があればなぁ……
「すみません、お金を出してもらって……」
「うんん、こういうのは必要経費だよ。というかこういうときのためにギルドから活動費出てるんだし、気にしなくていいよ」
こういった必要なものを買い揃えるために活動費は出てるのだ。むしろ使わないと損なんだから積極的に使っていこう。
「さて、それじゃ早速行くか?」
「うん。とりあえず東区から手がかりがないか調べていこう」
手分けして東区を調べていくことになった。
マルクと《空間把握》の共術を使って一気に調べても良かったんだけど……あれじゃ見落としもあるかもしれないし、なにより気軽に使えるようなスペックじゃない。
リソースを一気に使って不確かな情報を得るよりも、手分けして足と魔術を使って確実に調べていくほうがいいって結論になった。
「──《空間把握》」
改めて空間魔術を発動させ、桜華と一緒に東区を散策していく。
「み、見つからない……」
「こっちもだ。異様なほどに静かだった」
「騎士団の人達も調べてるらしいしこの街からはもう撤退したんじゃない?」
「かもな……となると本当に手がかりがないぞ。他の区も調べても良いが……」
「多分無駄足になるね、やめといたほうがいいかも」
この区だけ撤退するくらいならもうこの街から手を引いてるだろう。
変に居残って騎士団に嗅ぎ付けられるリスクがある。わざわざ規模を縮小してまでリスクを残すくらいなら完全に撤退するのが道理だろう。
「じゃあどうするんだ?もう俺達にできることは何もないのか?」
「うーん……もうカイさんからの連絡を待つくらいしかないかな……」
流石にこの街離れてまで調査に行くには情報が足りなさすぎる。
どこか行くにしてもせめて目的地を決めないと……
「はぁ……とりあえず今日は引き上げよっか。それでいい?桜華」
「はい。皆さんで見つけられないなら私にも見つけられないと思うので、賛成です」
「じゃあ一旦帰ろっか」
結局奴隷組織の追跡は諦めてギルドに帰投することになった。
そうしてギルドに辿り着いたとき──
「あ、レイチェルさん、お手紙が来てますよ」
「手紙?ありがとうこざいます」
受け付けのお姉さんから私宛に届いたという封筒を手渡される。
手紙……誰からだろう?
父さん達からはついこの前来たばっかりだし……まあいいや、とりあえず差出人見るか。
「──あ」
差出人は、ランドラ魔術学院教師ミシェル、私達の恩師だった。
先生……もしかして──あの魔方陣の解析を?
その場で封筒から中身を取り出し、軽く目を通す。
「──うん、今からもうちょっと時間もらってもいい?」
「構わないが……何が書いてあったんだ?」
「後で教える。ちゃんと読んでからにしたいからちょっと待ってもらっていい?」
「分かった」
一旦部屋に移動し、手紙に目を通す。
書かれていた内容は──
『頼まれてた魔方陣の解析ができたのでこの手紙に記します。
あの魔方陣は、隷属魔術と呼ばれるもので、無属性、光属性、闇属性の三種類が混ざった魔術と文献に記されています。
文献によれば無属性で命令を送信し、闇と光属性で対象を洗脳に近い状態にして無理矢理命令を聞かせるというものらしいです。
対象の精神力が強いと抵抗できるらしいです。
実際、私の解析結果も同じようなものでした。
この魔術は名前の通り対象を奴隷にするために使うものです。
奴隷制度が禁止されたのと同時にこの魔術も廃れていきました。この魔道具が歴史的な資料として保存されるくらいには。
ですが最近大陸東の博物館からその魔道具が盗まれたという報告が上がってます。
何か危ないことに巻き込まれていませんか?
何かあったら、すぐに大人を頼ってくださいね』
要約するとこんな感じの内容だった。
隷属魔術……そんなものがあったのか……
それに東の博物館で盗難事件か……無関係とは思えないな。
何にせよ考えるのは四人に共有してからだ。
手紙の内容を要約しつつ、共有していく。