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7-39 情報整理

「ん……」


 ベッドの上で目を覚ます。

 窓から差し込む朝日、見慣れた天井、うん、いつも通りだ。


 ただ一つ違うことがあるとすれば……


「……何してるんですか?」


 龍城さんが坐禅を組んでいた。凄くいい姿勢で。


「あ、おはようございます」

「おはようございます。……龍城さん、それ何してるんですか?」

「日課……というか習慣の坐禅です。余裕があるときはやるようにしてるんです」


 坐禅……そういえばやってたような……重要そうなところをかいつまんで見てたからあんまり覚えてない。


「本当は素振りもセットでやるんですけど……流石に迷惑になるかなと、勝手に出歩くのもあまりよくなさそうでしたし」

「……うん。朝ご飯食べて一段落ついたら外でて体動かそっか」

「ありがとうございます」

「ううん、私もちょっと体動かしたかったし、気にしないで」

「すみません、ありがとうございます。……その、少々失礼かもしれませんが……」

「?」

「話し方が少しよそよそしくないですか?私の記憶を見たなら特に警戒することもないでしょう?長い付き合いになると思いますし気軽に呼び捨てでいいですよ?」

「あー……」


 滅茶苦茶自信もって見せてくれた記憶がとても不穏な終わり方したから不安なんだけど……本人は覚えてなさそうなんだよな……

 見た感じ嘘つくような人には見えなかったし……それにこの提案も良心から来てるものなんだろうな……


 ……変に心配かけるのも良くないし、大人しく提案に乗っておこう。


「……だね。ちょっと緊張してたのかも。これからよろしく、桜華」

「はい。よろしくお願いします、レイチェル」


 笑って返事を返すと、桜華も笑みを浮かべて返事を返してくれる。


 ……こんな人相手に、何を警戒してたんだろうな……



















「で、昨日は何が見えたんだ?」


 朝食後、改めて私達の部屋に集まり状況を整理する。


 ちなみに桜華は昨日ので刺激されたのか結構昔のことを思い出してきてるらしい。


「えっと、ちょっと待ってね」


 どんな人なのか、どんな過去があるのか、三人にも知ってもらうために私が見た記憶の中で重要そうなところをかいつまんで映し出す。


「ふむ……なんとなく人となりはわかった。けど色々聞きたいことがある」

「何でしょう」

「まずあの魔術は何だ?体を変化させてたようだが、その隠蔽と関係があるのか?」

「はい。あれは私の魔術……転移者がもつ血の力に由来するものです」

「具体的には?」

「このように体を作り替える……強化すると言ってもいいです」


 そういうと昨日見せたように隠していた獣の特徴をもとに戻したり、逆に健康体に作り替えたりして見せてくれる。


「他にもこんな風に……」


 袴の袖を捲って腕を見せたと思ったら、白く細い腕が大男のような太い腕に変わる。


「あと、私の今の体は犬か猫か狼の混ざりらしいのでこんな風にしたりもできます」


 腕がもとに戻ったと思ったら狼のような毛が生えたり、瞳孔が縦長に変化したり、牙と爪が生えたり……獣の特徴がより大きく出た容貌に変化した。


「といっても、かなり負担がかかるので使いすぎると後遺症が残ったりして戻れなくなっちゃいます」

「そうなんですね……混ざり、というのは?」

「亜人は遠い先祖に獣の血を引いてると考えられてます。先祖様はもっと特徴が濃く現れてたらしいんですけど……代を重ねることに少しずつ薄まってるらしいです。でも先祖返りで特徴が濃く残ってたり、父と母で違う特徴を持つ夫婦の子供なら混ざったりするそうです」


 環境に適応した結果そうなったんじゃなくて、最初からそうだったのか……


「あとは何が混ざってるかで寿命に差があるらしいです。あと、私みたいに魔術を使わなくても先祖に持つ獣の完全な姿に変化できる人がいるそうです。ラギオンさんはできると聞いたことがあります」

「ラギオンさんが?」

「はい。見たことはないんですけどね」


 ふむ……つまり亀とかが混ざってると長寿になったりするってことかな?


 にしても先祖の獣の完全な形に変化ねぇ……つまり狼が先祖にいれば狼の姿になれて、山羊を先祖に持てば山羊になれると……

 でもごく一部の人ができるってだけらしいしあまり考えなくてもいいかもな。


「あと……桜華、襲撃の時変な魔道具で攻撃?されてたみたいだけど、あれ何かわかる?」

「……あれが何なのか、結局私にもラギオンさんにも分かりませんでした」

「……そっか」


 二回目の襲撃時、ノイズで場面が飛んだ時、最後にあれで攻撃されてたからあの後何があったのか推測する手がかりになるかとも思ったけど……駄目か。


「……それじゃ、聞きたいことも大体聞けたし、今度は私の方の記憶を見せるね。今がどんな時代なのかわからないだろうし多分ちょうどいいと思う」

「ありがとうございます。お願いします」

「うん。行くよ──」

「あ──」


 記憶を流し込んだのと同時に気を失い、ベッドに倒れこむ。

 やっぱり負担がかかるらしい。


「……さて、それじゃ、ここからは内緒話ね」


 ここからの話は、桜華には聞かせられないからちょうど良かった。


 私が議題にあげるのは、焼け野原になった光景と、最後に映ったボロボロになった桜華のことだ。


 あそこまで自信をもって見せてくれたこと、今はあんなに憔悴せず精神状態が安定してること──少なくとも、いきなり訳のわからない場所に喚ばれて取り乱さないくらいには落ち着いていられるくらいは心が強い人が、あそこまで憔悴していたことから本人は覚えてない可能性が高い。


 そして同時に、黒幕が桜華に知られたくないという情報でもあるかもしれない。


 なので思い出すと何が起こるかわからないので基本桜華には秘密で情報を共有したかったのだ。


 そして今は、うってつけの状況だ。

 これを逃す手はない。


「それじゃ──」



 再び記憶を映し出し、秘密の話し合いが始まる。

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