表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
273/398

7-23 砂の平原

「……暑さと毒草がなんとかなるだけでここまで簡単に進めるとはな」


 迷宮の第十四層と十五層の間、下に続く階段の前で立ち止まり、現状について話す。


「魔物もそこまで強くないしね……なんというか、逆に拍子抜け?」

「だな。この分だと今日中に十五層まで行けるぞ」

「行ってみてもいいんじゃない?というか行こうよ!これなら全然余裕でしょ?」

「ん〜……行ってみようか。ここまで目立った変化がなかったとしてもこの先に変化がないとは限らないし、十五層の確認はしておきたい」

「わかった。じゃあ俺が前に出るから後ろからついてきてくれ」


 ベインを先頭に、階段を警戒しながら降りていく。


「……わお」

「……凄いな、これは」

「ジャングルの次はこれかぁ……」

「結局暑いのは変わらないじゃん!」


 十五層に入り、目に飛び込んできた景色はこれまでの鬱蒼としたジャングルではなく、辺り一帯なにもない砂の平原だった。


「まさかジャングルの次は砂漠とはねぇ……砂上での戦闘は踏ん張りが効かないから嫌なんだよなぁ」

「でもこれなら毒草は警戒しなくていいから楽じゃない?」

「いや、そうとは限らないかもよ?例えば……ほら」


 指を指した先には、この層の魔物と思われる巨大なミミズ──サンドワームがこっちに向かって進んできていた。


「っ!マルク!足場を頼む!」

「ああ!」


 ベインに合わせてマルクが足場を整え、迎撃体制を取る。


 けど──


「うおっ!?避けろ!」

「くっ──!思ったよりデカいぞこいつ!」


 眼前に迫ったサンドワームのサイズはこれまで戦ったどの魔物よりも大きく、かつて戦ったフロアボスに匹敵するほどだった。


 しかもそれがかなりの速度で地面に潜っては飛び出してを繰り返しながら近づいてきている。

 巨大な体積と質量、速度を伴った突進を止める術はなく、結果的に私達は回避を強制させられる。


 ドゴーン、と大きな音を立てながら私達がさっきまで立っていた位置に飛び込み、マルクが作った硬い地面を関係ないとばかりに砕いてまた地面に潜る。


「くっ──!」


 砕かれた箇所をマルクが作り直してなんとか足場を失うという事態は避けられたが、これでは堂々巡りだ。

 サンドワームが突っ込んできては砕かれてを繰り返すだけになる。


 どこかで攻撃を仕掛けないといけないのは全員の共通認識となり、反撃の機会を伺っていた時──


「ヒナ!」

「飛べ!」

「足元!」


 私達三人が、一斉に一人の名前を叫ぶ。


「っ!」


 その声を聞くのと同時に爆発を起こして飛び上がる。


「うわっ!?」

「そいつこっちの居場所を的確に攻撃してきやがる!」

「ヒナはそのまま飛んでて!地面からしか攻撃できないなら探知能力がないヒナは飛んで攻撃のターゲットから外れたほうがいい!」

「了解!じゃあタイミング見て攻撃するからね!」

「ならヒナの攻撃を待ってから反撃する!それまで回避に専念して!」

「了解!」

「わかった!」


 この中で唯一探知能力がないヒナを安全圏である空中に逃がし、カウンターの機を伺う。


「《空間把握(グラスプ)二重展開(デュアルエクスペンド)》!」


 できる限り探知の精度を上げ、地中のサンドワームの動向を把握する。


 地中をウネウネと動き回り、狙いを定めたのか急上昇してくる。

 そのターゲットは──私だ。


「《空間歪曲(ディストーション)圧縮跳躍(ファントムリープ)》!」


 空間跳躍により自分の座標をずらすように移動し、地中からの突進を回避する。


「いくよ!《天落焔槍(フォールブレイズ)》!」


 攻撃を空振り、隙をさらしたサンドワームの胴体にヒナが思いっきり魔術を放つ。


「キシャァァァァ!!?」


 図体の割に脆いのか焔の槍は深々と突き刺さり、爆ぜてサンドワームの肉体を両断寸前まで削り取る。


 しかし完全な絶命までは至らず、最後の力を振り絞って反撃に出ようとしてる


「ベイン!」

「ああ!タツキ流派生剣術、旋断!」


 ヒナが攻撃した箇所に身を捻るようにして二刀流によるニ連撃を叩き込む。


 その攻撃によって胴体は完全に両断され、反撃を許すこと無くサンドワームにとどめを刺した。


「はぁ……なんだったんだこいつ」

「まあ順当に考えたらこの層の魔物だろうね……ほら、魔石もあるし」

「この層を進むならこれを相手にしなきゃいけないのか?ちょっと面倒くせぇな」

「まあ仕方ないよ。それよりも……砂漠の方が厄介なんじゃないかな」

「探知能力が無ければ奇襲され放題。砂で足を取られてロクに戦えない。ジャングルよりよっぽど面倒だぞ、これ」

「しかも肉眼だと遠くが見えなくなってる」

「確かに……蜃気楼ってやつか?」

「それに暑さも続投でしょ?やだぁ〜」


 壁が無いからといって楽をさせるつもりはないらしい。まあ最短ルートを行くのは結局変わらないんだけど。


 でもいかんせんサンドワームが厄介そうだな……他の魔物と比べたら脆いのが弱点だけど……それも先に進むにつれて硬くなる気がする。


 さらにマルクが居なきゃ足場は砂の海ときた。

 暑さは変わってないし……ほんと面倒くさい。


 迷宮を作った奴は十一層から先はフィールドギミックで攻めてくるらしい。



 性根が腐ってんじゃないかなほんと……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ