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7-22 前進

「──ってわけで買ってきてみたんだけど……」


 迷宮第十層の静かな空間で、十一層に進む前に相談してみる。


「まあいいなじゃないか?使えるものは使ってなんぼだろ。で、問題は……」

「適切な用量がわからない?」

「そうそれ。端的に体を冷やすって言っても冷やしすぎると危ないし、効果が薄すぎると意味がないんだよね」

「誰か一人に飲ませて試すしかないんじゃ?」

「結局そうなるよね……でも誰が飲む?」

「恨みっこなしのジャンケンで決めようぜ」


 ベインの提案でジャンケンで生贄を選ぶことになった。


 いいのかそれで……だいぶ不利な提案だと思うけどなぁ……


「最初はグー」

「ジャンケン……ポン!……っておい!ウッソだろ!?」


 うん。こうなるのはなんとなく分かってた。


 私とマルクは《空間把握(グラスプ)》で筋肉の動きを読んで相手が何を出すかわかる。

 けどその程度のことベインも自力でできる。

 だから直前で出す手を二回変えたのだ。出す手を変えたのを見て、ベインが変えたのを見てから、もう一回変えたという感じだ。

 要は後出しに後出しを重ねたのだ。


 まあ、そもそもマルクは鎧で私はロングコートという肉眼で得られる情報が少なかったのもあるけど、結局ギリギリまで見てから変えられるこっちのほうが有利だったってだけの話である。

 あとヒナは……私とマルクが同じ動きをしということは出す手がおなじになって、それにベインが合わせようとしたということは何も考えてないヒナには合わせられないのだ。

 それで結局ヒナは運で勝ち、ベインの一人負けとなった。


「ジャンケンは昔っから強かったんだけどなぁ……なんかズルしたろ」

「それを言うならベインもでしょ」

「チッ。バレてたか」

「え?何?」

「はぁ……仕方ない。一本くれ」

「はい」


 何も理解できてないヒナを置いて実験が始まる。


「じゃあ、とりあえず半分くらい飲んてみて」

「わかった……まっず」

「はいはい。で、効果は?」

「ちょっと待て……お、来たんじゃないか?」

「どんな感じ?」

「まだちょっと涼しいくらいだな。うちわで仰いでるみたいな」

「ん〜じゃあもっといってもいいかも。残り全部飲んでみて」

「はいよ……お?結構来てるぞ。濡らしたところを仰いでるくらいは涼しい」

「じゃあとりあえずそれくらいでいいかな。試しに一本飲んで進んでみよっか」

「だな。……まず」

「わかった〜……うえぇ……」

「はい水。私も飲んでみよっかな。……そんなまずい?」


 やっぱり私がおかしいのかこれ。

 別にまずいとは思わないんだけどな……


「お、おお結構冷えるな」

「おお〜!これなら全然行ける気がしてきた〜」

「おおぉ、結構涼しくなるね。とりあえず今日はこれ使って進んでみよっか」


 全員効果が出たのを確認してから階段を降りて行く。


 新しい試みを用いた迷宮探索が始まった。



















「意外と使えるぞこれ」

「だね……」


 十二層と十三層の狭間、下に続く階段の前で一度小休止を挟み、毒の効果を実感する。


 軽い気持ちで試した毒が予想以上に効果的でちょっとびっくりしてる。


「ああ。もう結構歩いてるが水の消費は昨日の何倍も少なく済んでるし、体力的にも余裕がある。これならもっと進んでもいいんじゃないか?」

「私もそう思う。行ってみる?」

「賛成〜!もうちょっと行ってみようよ!」

「俺も賛成だ。これだけ余裕があるならもっと進むべきだと思うぜ。どっちみち進まないって選択肢は無いしな」

「俺もいいと思う。ただ判断はレイに任せる。安全を取るなら引き返してもいいが……」

「……行ってみよう。このまま十三層まで行こう」

「了解」

「わかった」

「了解!」


 石造りの階段を下り、十三層に足をつける。


「……目立った変化は無し。毒も十分効いてるからこのまま進めそうだね」

「だな。……よし、こいつらに進ませる。何かあったら今まで通りこいつらを前に出して足止めする。その後は頼む」

「うん。それじゃ、ヒナお願い」

「おっけー!起動!」


 岩兵(ゴーレム)を先頭にし、そのまわりに護衛として村雨を使って《飛翔氷剣(フロスト・ソル)》を作り、ヒナが出した薄紫の膜の中に入って進んでいく。



 面倒に感じていた暑さは、思わぬ発見と発想によって解決されたのだった。

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