7-20 迷宮探索、第十二階層探索開始
「じゃあ、また明日」
「ああ。また明日」
「また明日〜!」
「またな」
夕食を摂り終え、各々体を休めるため部屋に戻っていく。
「はぁ〜……」
拡張収納を机の上に投げ、肺の中の空気を吐き出し、ベッドに大の字で身を投げ出す。
「疲れたぁ……」
自然と零れ落ちた一言が、今の私の状態を表していた。
「……早く寝よ」
明日も迷宮に行くんだ。この疲れを引きずって行くわけにはいかない。
手早く就寝の準備を終え、意識を手放す。
……なんか今日は、妙に疲れたな……
「よし、とりあえずここまでは来れたね」
「ああ。ここからは昨日と同じ感じで進むのか?」
「そうなるね。とりあえず……はい、ヒナ」
「あ、今日は私が持つ役なんだ」
「この状況だと下手にヒナに攻撃させられないからね。余ってる魔力でこっちを動かして欲しいかなって」
「わかった〜。えっと……はい!これであってる?」
「うん。それで大丈夫。じゃあ行こっか」
ヒナが起動した生命衰弱域の中に入り、昨日と同じように進んでいく。
「にしても暑いね……レイチェルちゃん〜冷やして〜」
「無駄遣いできないからダメだよ。ほら、水筒に水と氷入れてあげるから頑張って」
「は〜い……」
暑さにうなだれるヒナを励ましなんとか前に進ませる。
……にしても暑い。上の層は暑くも寒くもないくらいの感じだったのにここは明確に暑い。
この気温の変化もこの層のフィールドギミックの一つ……やっぱ面倒くさいなぁ。
次は暑さ対策しなきゃなぁ……
「……あ」
「レイ」
「うん。来てるね」
三時くらいの方向から恐竜型が一体近づいてきてる。
「岩兵をぶつけて怯ませる。その隙に頼む」
「わかった」
ドスドスと足音を立てながら近づいてくる魔物と私達の間に岩兵を立たせ、待ち構える。
「……来るよ!」
「行け!」
足を止めること無く突進してくる恐竜相手に岩兵が体当たりでせき止め、組み付く。
そして体勢を崩したところで岩兵を還元して大きな隙を作り出す。
「今だ!」
「再編──」
先に出しておいた《飛翔氷剣》を三本還元し、村雨の刃の十個のうち三つを組み合わせ、出力を上げる。
これなら──いける!
「《飛翔氷剣・氷晶大剣》!」
巨大な氷の剣が周囲の木を薙ぎ倒しながら恐竜の胴を切り裂いていく。
聖遺物の火力も相まって両断するかと思ったが……刃は硬い皮膚に阻まれ、大きなダメージは与えたが両断まではいかず倒しきれない。
「っ──!ごめん倒しきれなかった!」
「いい!《岩石砲》!」
崩れた体勢で攻撃を受けたせいで地面に倒れ込み、もがいている恐竜の傷口目掛けて等身大サイズの岩が放たれる。
すでにある傷に撃ったということもあり、その岩の弾は内臓を貫き恐竜を魔石に変える。
「はぁ……ごめん、ありがとう」
「大丈夫だ。十分ダメージ入れてくれたし、次の俺の攻撃まで繋がったからあれでいいんだ」
「ありがとう」
ミスをカバーしてくれたのもそうだがその後のフォローまで気が利くな……ほんと心強い。
「じゃあ魔石も回収できたし進もう」
「だね」
恐竜の魔石を回収し、十二層に繋がる階段を目指して歩いていく。
「よし、今回は接敵が少なかったから早めに着いたね」
「だな。おかげで魔力もそれなりに残ってる」
「私もめちゃくちゃ残ってるよ〜。これなら何時間でもいけるよ〜」
「……暇」
「みんな結構余裕ありそうだし十二層もちょっと進んでみよっか」
「ああ。行けるうちに進んでおきたい」
「だね。……じゃあ、行こっか」
階段を降り、周囲を警戒しつつ、毒草が無力化されたのを確認してから進む。
十二層の毒草にも効くのか……この分ならこの先もなんとか進めそうだな。
魔物もまだ目立った変化は無いし十一層と同じ感じで行けるかな。
……よし、行こう。
迷宮の十二層、毒草溢れるジャングルを私達四人の足跡で切り拓いていく。