7-18 泡銭
十二層を引き返してから適度に休憩を挟みつつ、約三時間ほどして地上に帰ってきた。
流石に時間がかかったな……朝に入ったのにもう日が沈みかけてる。空がオレンジ色に染まってる。
なんか十一層の明るさを見たあとだと不思議な気分になるな。
「疲れたぁ……」
「お疲れ。早めにやる事やってゆっくり休もう」
「だね。……あ、そういえば十一層以降の魔物の魔石って換金できるのかな」
「……確かに。まだ分からないことが多いし買い取ってくれるかどうか……」
「持ち込んでみればわかるだろ。それに結局のところ判断はギルドに任せるしかないだろうしな。俺達がずっと持っとくわけにもいかないだろ?」
「それもそっか」
まあベインの言う通りかな。
魔石の管理は法律で決められてる。ちゃんとしたルートで買わない限り所持は基本認められてないのだ。
まあその例外が迷宮から換金所まで持ち運ぶ場合なんだけど……それも度が過ぎれば捕まるしさっさとギルドに持ち込むのがいいかな。
「それじゃ、とりあえず一回帰ろっか」
迷宮区からギルドのある中央区を目指して歩き出す。
もう日が沈みかけてるということもあってか人は少なく、もう店を閉めてるところもある。
本当に丸一日迷宮に居たんだなぁと、ちょっとびっくりしてる自分がいる。
集中してると時間が経つのって一瞬なんだなぁと、学院に居た頃ぶりに体感するのであった。
「これは……」
「十一層の魔物も魔石なんですけど……監禁できますか?」
「十一層……話には聞いてましたけどもう探索に行かれてたんですね……」
「はい。おかげで帰ってくるのが遅くなっちゃいましたけどね。……それで、交換できそうですか?」
「どうでしょう……私は目利きできないので鑑定に出してからじゃないとなんとも……少将時間がかかると思いますが大丈夫ですか?」
「はい。それは全然平気です。お願いできますか?」
「はい。それでは結果が分かり次第連絡させていただきますね」
「ありがとうございます」
結果的には換金はできるけど時間がかかる、といった結論に落ち着いた。
別にお金には困ってないし、急ぐ必要も無いから時間がかかっても換金が出来れば問題ないのだ。
「あ、それと十一層以降の魔物の魔石を納める依頼が出てます。それを通せばもっと報酬が増えますが……」
「……じゃあお願いします」
「わかりました」
別にお金を求めてるわけじゃないんだけど誰かの役に立つならそうした方がいいかな。法外なお金が絡んでくるのは苦手だけど。
「ではこちらの書類にサインを」
「わかりました」
……うーんこれもまたとんでもない額のお金が報酬になってるな……
依頼人は前回火精霊の魔石の依頼を出してた王国魔導学会からで報酬は白金貨が三桁ほど。
白金貨は日本円にして大体百万ほど……お金ってある所にはあるんだね。
でもまあこんな貰っても使い道に困る……泡銭ってやつだな。
ギルドに寄付して運用資金にでもしてもらおうかな。そうしてサポートしてくれる方が今はありがたいかもしれない。
後でこれもカイさんに相談しようかな。
「はい、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
手続きを終え、受付を後にする。
そしてその足でギルド長室まで行って十一層の情報や寄付の話をカイさんに話す。
「寄付はありがたいが……いいのか?迷宮探索で一攫千金なんて誰でも考えることだろ?それを手放すのは……」
「いいんです。こんな大金貰っても持て余すだけですから。でもまあ貯金としていくらか手元には残すつもりですけど」
「それは全然構わん。というか当然の権利だぜ?……でも、結局大半をギルドに寄付するんだろ?」
「まあ、そのつもりです。仲間内で必要な分取って、残った分は寄付しようかと」
「いいのか?」
「自分達で使うよりギルドに迷宮攻略をサポートして貰う方が色々ありがたいので」
「そうか。なら、ありがたく貰うことにする」
とりあえず寄付の話は受け入れて貰えた。
三人とは欲しい分取り分けて残りを寄付するという話でそれぞれ納得してもらった。
持て余して勿体ない、っていうことはみんな感じてたらしく、ベインがちょっと多めに要求した以外は一人白金貨十五枚ずつくらいで落ち着いた。
まあ、それでも日本円にして千五百万あるんだけどね……
「それで、十一層のことだが……」
「はい。それじゃまず──」
十一層のことについて情報を共有していく。
本題はここからだ。