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7-16 迷宮探索、第十一階層

「で、これがその魔道具か」

「うん。まだ実験はしてないけど多分ちゃんと使えるはず」

「じゃあ試しに起動してみるか」

「だね。私がやるから離れてて」


 翌日迷宮十一層、生命衰弱域ヴァスト・ウィークネスの起動実験を行う。


「ふぅ──」


 軽く息を吐き魔力を流すと、薄紫の魔力を帯びた膜が使用者である私を中心に半径三メートルほどの距離を保って展開される。


「っ……よし」


 そして核になっている鉄球を地面に置き、意を決して膜に触れる。


「つっ……」

「大丈夫か!?」

「なんとか……調整は上手く行ってるみたい」


 膜に触った右手には電流が流れたような感覚と同時に、感覚が少し麻痺している。生命力を失った影響だろう。

 ただまあそこまで強力には設定してないから五分もすれば回復するだろう。ちょっと痺れてるみたいなものだ。


 あとは──


「毒草に効くか試そうかな」


 再び鉄球を持ち、毒草で溢れかえったジャングルに近づく。

 移動と同時に薄紫の膜も移動し、膜が植物に触れた瞬間──毒草は逃げ、萎れた。


 茎に部分など動かせる部分は動かして逃げたけどそこはやっぱり植物なんだな。根っこまでは移動できないらしく根本から地面に横たわっている。


 でもまあ、多分そのうちまた元気になるだろうな。

 多分栄養とかのエネルギー源は迷宮からだろうし、それだけ豊富な栄養が供給されるならこの程度の衰弱そのうち回復するだろうな……まあ完全に枯らすレベルまで生命力を吸い取ると人にも害が出そうだし止めとこう。


「っと、これも試しとかないと」


 屈んで、萎れた植物に手を近づけてみる。


 ……動く気配はないな。これなら刺されるような心配はないだろうな。

 一応毒を貰っても治療できるようにアーノルドさんの今日の予定は聞いてある。最悪前回みたいにアーノルドさんのところまで走れば何とかなるだろうし今日は試すだけ試してみよう。


「大丈夫そうだし進んでみよっか」

「わかった。ただ見てた感じ戦うときは邪魔になりそうだな」

「ん〜……そこは魔術での遠距離攻撃でなんとかするしかないかな……」

「消耗が激しそうだな。レイは植物を還元して補給できるとしても俺達は魔術薬(ポーション)での補給になるだろ?満足に進めるくらい戦えるか?」

「それ私も還元の対象が魔石を持ってない植物だからあんまり補給できそうにないんだよねぇ……岩兵(ゴーレム)とか《飛翔氷剣(フロスト・ソル)》みたいな使い続けられるタイプの魔術で節約するしかないかも」

「そうだな。じゃあ先に何体か作って先に進ませておく。前回と同じで岩兵(ゴーレム)の後ろをついていく形にしよう」

「だね。お願い」

「ああ」


 マルクが岩兵(ゴーレム)を数体作り、先行させる。


 マルクも作るの上手くなったなぁ……ほぼ自動操縦みたいな感じらしいし、七体までなら同時に動かせるらしいし、オリハルコンの再現金属で強度もそれなりにあるし、普通に強いんだよな。

 というか村雨抜きの白兵戦なら普通に負けるかもしれない。


 やっぱり心強いなぁ……


「よし、行こう」

「だね。索敵はしてるけど見落とすこともあるから一応警戒しといてね」

「わかった」

「了解!」


 マルクが出した岩兵(ゴーレム)の後を、薄紫の膜で包まれながら歩いていく。


 先に踏み固めておいてくれるおかげで歩きやすいし、生命衰弱域ヴァスト・ウィークネスのおかげで刺される心配もなくなって警戒する対象が減ったから結構楽になったな……


 けど最近《空間把握(グラスプ)》の範囲を広げたりソート機能つけたりで見落としが増えてるから油断はできない。

 そのうち自動処理機構とか作ろうかな……


「──来るよ。九時方向から四足のジャガー型の魔物が二体。マルク」

「ああ。岩兵(ゴーレム)を動かしておく。レイも準備しといてくれ」

「わかってるよ」


 岩兵(ゴーレム)と《飛翔氷剣(フロスト・ソル)》を動かし、ジャガー型の魔物を迎撃する。

 これも名前付けないとな。


「──来るよ!」


 合図した数瞬の後、茂みからジャガーが飛び出してくる。

 そしてそれに合わせるように私達との間にマルクが岩兵(ゴーレム)立たせて壁を作り、足止めしてくれてるうちに私が攻撃する。


「村雨!」


 手元の聖遺物に魔力を込め、村雨の刃を核に作った《飛翔氷剣(フロスト・ソル)》で斬りかかる。


「グギャアアア!!?」


 三本の氷剣がジャガーに突き刺さり、傷口から凍らせてジャガーの手足を凍らせる。

 そして無理に動こうとしたジャガーの体は砕け、魔石だけが残る。


 さすが村雨。前の《飛翔氷剣(フロスト・ソル)》なら多分上手く刺さらなかったな。


「次!《氷結拘束(フロストバインド)》!」

「ああ!」


 出してる氷剣が二体目とは離れてるので今度は氷剣を杖代わりにして魔術を放つ。

 氷の茨がジャガーを縛り付け、その隙に岩兵(ゴーレム)の巨大な拳がジャガーの脳天めがけて振り下ろされる。


 グシャリ、という音と共に叩き潰され、血も残らず魔石になる。


「ありがとう。よく合わせられたね」

「氷剣と魔物まで距離が空いてたからな。多分俺が攻撃した方がいいと思ったんだ。それに妨害してくれたおかげで攻撃するまでかなり猶予があったしな」


 マルクと軽く戦後の反省会をしつつ、歩いていく。


「……俺達、出来ることないな」

「……だね」



 役割を失ったヒナとベインを他所目に、十一層の探索は進んでいくのだった。

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