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7-8 内情

「今回はありがとうございました」

「いえいえ、気にしないでください。やれることをやっただけですので」

「いや、せめてこの食事代くらい出させてください」

「いえ……」

「せっかく奢ってくれるってんだから貰っとけよ!」

「いえしかし……まあ、そうですね……ありがたくご馳走になります」


 あれからギルドに一緒に戻り、なぜか合流したカイかんとお世話になったアーノルドさんを合わせた六人で夕食を摂ることになった。


「にしてもタイミング良かったな。もう少し遅かったらヒナが引退してたかもしれないんだろ?とんでもないファインプレーじゃねぇか」

「そうですね。もう少し遅かったらどうなっていたか分かりません」

「ほんとありがとうございました〜……」

「いえいえ、大事に至らなくてよかったです」

「いや、本当にありがとうございます」


 心の底から感謝を伝える。

 この人がいなきゃ十年来の友達が死んでたかもしれない。文字通りの命の恩人だ。


「あと、そういえばなんであの病院に来てたんですか?誰かのお見舞いとか?」


 気になってたことを聞いてみる。

 この人なら病院に頼らなくても大抵の怪我病気は自力で治せそうだけど……


「時々治療を手伝いに行ってるんです。冒険者と司教の片手間に時間が空いた時にだけですけどね」

「司教?クレイ教のですか?」

「はい。時々教会で祝詞を詠ませてもらってます」

「凄いですね……冒険者と司教の兼業って忙しいんじゃないですか?」

「いえ、聖術師(プリースト)の資格を持ってると待遇がいいのでそこまでですよ」

「そうなんですね……」


 アーノルドさんって司教やってたのか……まあ聖術師(プリースト)やってるなら神聖属性に一番精通してる組織に所属するのは合理的って言えば合理的なのかな。


 にしてもクレイ教の司教か……クレイ教の組織的な階級は詳しくないけど司教ってだいぶ偉い立場じゃなかったっけ?

 つい先日クレイ教とは揉めたばかりだしな……ちょっと聞いてみるか。


「……一つ、聞いてもいいですか?」

「どうぞ?」

「先日、クレイ教内で特定の人物の殺害を促す命令が教皇直々に下されていたらしいんですけど、それについて何か知ってますか?」

「……あれですか」


 どうやら心当たりがあるらしい。

 もうちょっと掘り下げてみるか。


 ──そう考え、次の言葉を紡ごうとしたときだった。


「本っ当に申し訳ない!」

「え?」

「あの命令があなた達を狙っているのは知っていました!私からも教徒に働きかけて止めようとしたのですが……力不足でした……!」


 突然頭を机に叩きつけるようにして謝罪される。


「え、ちょ……!やめてください!」


 すぐに顔を上げるように促し、空気を変えようとする。

 命の恩人にこんなことさせるつもりはなかったのに……


「アーノルド、やめてやれ。もう十分誠意は伝わっただろ」

「カイさん……」

「……すいません、取り乱しました」

「いや……こちらこそ色々ご迷惑をおかけしてたようで……」

「いえ、クレイ教(うち)から出た錆です。皆さんにご迷惑をおかけしたのはこちらの方です。まさかあれ程疑いなしに人を殺しにかかる狂信者ばっかりだとは……」

「仕方ないんじゃないか?この大陸じゃクレイ教はもう生活の一部だ。郵便とか、道路とか、そういうインフラの一部だ。それが大々的に告知しちゃったんなら信じるバカも一定数いるだろうさ」

「しかしそんな人を止められなかったのは事実です……こればかりは私の不徳の致す限りとしか……」

「それも違うね。そもそも悪いのは大昔からの教えを何の疑いもなく教徒に広めた教皇だ。お前はなんも悪かねぇよ」

「私もそう思います。むしろ止めようとしてくれただけでありがたいです」

「そう、ですか……」


 この謝罪ムーブを止めるべくなんとか空気を変えようとカイさんと二人で標的を逸らす。

 この人やっぱりギルド長向いてるんじゃないかな?


「ほら、飯が来たぞ。ジメジメした話は止めにしようぜ?せっかくの奢りだ。楽しまなきゃ損だぞ?」

「カイさんは奢りませんよ?」

「え、酷くねぇか?」

「冗談です。さ、食べましょ?」


 皆で手を合わせて食器に手を付ける。



 なんとか暗い空気は払拭できたのであった。

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