表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
240/398

6-58 フロアボス

「っ……!」


 取り巻きを倒し、『フロアボス』が居るであろう空間まで走る。

 次の曲がり角を曲がれば『フロアボス』が見えるんだけど……曲がる前からどんな状況か、よくわかる。《空間把握(グラスプ)》で見る必要もない。


 響く悲鳴、濃密な血の匂い、巨大な地響き、そのすべてが凄惨な状況を表していた。


 けど、どんなに怖かろうと、酷い状況が待ち受けていようと、進まないという選択肢はない。

 そんな決意を持って、曲がり角を曲がる。


 既に視えていた凄惨な状況を、己の目で見る。


 一瞬、吐き気を催したが、こんなものまだここに来た目的と比べれば前座にすらならない。

 決意を固め直し、目の前の光景を直視する。


 手足を潰され、地面に横たわった数人の武装した人間、そしてそれを踏み潰す巨大な透光蜥蜴(インビジブルリザード)

 こいつが大鰐透光蜥蜴インビジブルリザードアリゲーターか。


 大きさは大体縦二メートル、幅三メートル、全長四メートルほどかな。


 ……話には聞いてたけど大きい。これまで相手にした魔物とは比べ物にならないほど大きい。迷宮って閉鎖空間にこんなのがいるなんて……

 それにこいつ聞いた話だと透光蜥蜴(インビジブルリザード)特有のスピードと透明化はそのままだ。

 それに蜥蜴らしく回復能力まで身につけてるらしい。


 ……面倒くさい。


「カイさん!どうしますか!?」

「倒す!こいつのスピードじゃ走ったところで逃げ切れない!」


 オーダーは討伐。逃げ切れないと踏んでの選択らしい。


「槍は使いますか!?」

「使う!けど倒しきれるかはわからん!なんかあったら援護に回ってくれ!」


 あの槍でも倒しきれるかわからないのか……見た目に反さずタフらしい。


「神器、螺旋槍グングニル!貫けッ!」


 声を張り上げ、槍を投げ放つ。


 その槍は、一直線に巨大な蜥蜴の頭部目掛けて飛翔する。

 そしてそのまま『必中』の効果を証明するように、吸い込まれるように槍は頭部に、刺さらない。


「弾かれた!?」


 そう、槍が弾かれた。あの八十体の透光蜥蜴(インビジブルリザード)を貫き殲滅した槍が、貫くどころが刺さりもしなかった。


「チッ!かってぇなぁ!」

「あんなのよく前回倒せましたね!?」

「アーノルドに強化かけてもらって、ベンとナズナがつけた傷狙って投げただけだ!今回も先についてた傷狙ったけど流石に無理だった!刺されさえすれば何とでもなるんだけどなぁ!」

「じゃあ作戦通りに!マルク、指輪カイさんに貸してあげて!」

「わかった!カイさん!」


 私の言葉に従い、以前作った魔道具である指輪をカイさんに投げ渡す。


「身体強化の魔道具です!アーノルドさんの強化ほどの効果はないと思いますけどないよりは!」

「助かる!」

「私達でなんとか傷をつけます!それまで離れててください!」

「わかった!頃合いを見て作戦通り狙撃する!」

「わかりました!」


『必中』を活かして離れた位置から弱点となる傷口を狙撃する。それが今回の作戦だ。


 要するに、今までとそう変わらない。全力で殴って、全力で倒す。それだけだ。


「《氷結拘束(フロストバインド)》!」

「《大地隆起(アースエッジ)》!」


 反撃を妨害するのも兼ねてマルクと二人で拘束のために魔術を放つ。

 こんなのこの巨体相手ならすぐ砕かれるのはわかってる。

 けど、その砕くために一瞬でも時間を使えば反撃には出てこないし、追加で一撃入る。


「ヒナ!」

「うん!《緋炎剣(レーヴァテイン)》!!」


 濃く、濃密に圧縮した焔の剣を、斬るのではなく突くように繰り出す。


 圧縮されすぎて白く変色した焔の剣は隙をさらした無防備な頭部目掛けて放たれる。


「グォォォォウゥゥゥァァァァアア!!!!」


 緋炎剣(レーヴァテイン)が頭部に当たるのと同時に苦痛に満ちた咆哮が響く。

 流石にいくら外皮が硬くても熱は防げなかったみたいだ。……まあ、多分外皮も溶かして灼いてるけど。


「っ……!ごめんちょっと浅いかも!」

「十分ッ!タツキ流派生剣術、八重の太刀ッ!」


 ヒナがつけた傷に、追い打ちのようにベインが斬りかかる。

 二本の刀から、八回の斬撃が一瞬で繰り出される。

 斬ったのがグズグズに溶けた部位であることに加え、ベインの武器には魔力放出の術式が刻まれてる。これならカイさんの槍ほどじゃないかもしれないけど効果的な攻撃になるはずだ。


「どうだ!?」

「っ……!?まずい!」

「ガァァァアァァァ!!!」


 あれだけ攻撃を受けて反撃してくるの!?


「《空間歪曲(ディストーション)圧縮跳躍(ファントムリープ)》!」


 暴れ始めた巨体の近くから咄嗟にヒナとベインを引き戻す。

 危なかった……


「……回復してる」

「マジか……」


 もう傷が塞がりかけてる。回復能力があるってのは聞いてたけどここまで強力なものだったのか……


 ……もう一撃いるな。


「『剣気を纏う氷晶よ』!『呼びかけに応え』『舞い踊れ』!」


 詠唱を唱える。

 これまでに無いほど、全力で硬く、濃密な氷の剣を作り出す。


「《飛翔氷剣(フロスト・ソル)》!」


 一本の氷剣を作り出す。


 まだ、これで終わりじゃない。


 ありたっけの魔力をつぎ込む。

 一本の剣を核に氷を作り出し、一振りの大剣とする。


「《飛翔氷剣・氷晶大剣フロスト・ソル・バスタード》!!」


 大鰐透光蜥蜴インビジブルリザードアリゲーターの全長より大きく大剣を作る。


「いっけぇ!!」



 できる限りのありったけを込めた氷晶剣を、敵に振り下ろす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ