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6-34 新装備

「手詰まりかぁ……」

「今のところ思いついた方法は全部試してるが効果はなし、俺たちにできる範囲じゃ……いや、どう頑張っても迷宮の破壊は無理だと考えたほうが良い」

「……いや、私たちにできることで一個心当たりがある」

「何をするんだ?」

「空間歪曲の意図的な()()

「レイそれ禁忌──」


 思いついたとしても実行には移せない手段を提示した私にマルクが制止の声をかける。


 空間魔術、それも空間を歪ませる空間歪曲を用いた術式は、空間を正常な状態に戻すまでがセットだ。

 圧縮する場合や、私の拡張収納(マジックバッグ)くらい綺麗に定着して安全性が確認されてるなら何ともないが、引き伸ばしてる場合は物体……空間そのものが()()()()

 だから外的要因があれば空間断裂を引き起こし、致命的な損害を引き起こすことがある。


 それを知った上で意図的に失敗させ、空間断裂を引き起こすことは魔術において禁忌の一つ。

 けど、躊躇してられるほど余裕な状況じゃない。やれることはやるべきだと思う。


「いや、さすがに分かってるか……──なら、その上でやるんだな?」

「うん」

「そうか。ならやってみよう」

「ありがとう」

「色々知った上でレイが決めたことだ。なら、俺は手伝うよ」


 てっきり止められると思ってたからここまであっさり手伝ってくれるとか言われるとちょっと拍子抜けだ。まあ嬉しいことなんだけどさ。


「とりあえず、明日それを試すってことでいいのか?」

「うん。時間があるなら明日試してみよう」

「んじゃ、予定も決まったことだし鍛冶場行くぞ」

「え〜っと……装備の受け取りか」

「忘れんなよ。ダグラスの爺さん待ってんぞ」

「……受け取りに行こっか」

「ああ。早く行ってやろうぜ」


 ベインに促され話し合いは一端中止し、鍛冶場に足を運ぶ。




















「おう、やっと受け取りに来たか!」

「すいません遅くなりました」


 今の時間は夜の十時、この世界じゃもう十分夜中だ。

 多分結構待ってくれてたよな……


「ほれ、これがお前らの装備だ」


 ダグラスさんの指が差した先に、丁重に保管された三人分の服と鎧が置いてあった。


「とりあえず、マルクのから紹介するぞ」

「お願いします」

「お前は前衛だから結構硬めの鎧にした。でもまあ流石にフルプレートアーマーは邪魔だからな、攻撃を受けることが多い上半身の胸、肩、前腕、甲手、それと邪魔にならない範囲で使えるよう取り外しや付け替えができる下半身の装備と靴も作った。あと鎧で擦れるからインナーもな。インナーまで含めて魔道具師が硬質強化を刻んである。それなりに長持ちするはずだ」


 マルクが着る予定の灰色の鎧についてに色々説明される。

 マルクの立ち回りをしっかり理解し、経験則から欲しいものを提供するその姿は職人そのものだ。


「着てみるか?」

「はい」


 ダグラスさんに促されるまま、マルクは新品の鎧に着替える。

 こんなしっかりした鎧なんて初めて着るはずなのにマルクは何の迷いもなく鎧を装着していく。


 勉強してたのかな……


「あれ、思ったより軽いですね」

「なんか軽量化も刻んだとか言ってたな。詳しいことは知らんが扱いやすいに越したことはない。それに硬さは折り紙付きだ。なんてったって大陸中央の鉄の名産地から取り寄せて加工したからな」

「そうなんですね……」

「とりあえず問題がないならそのまま渡すが……」

「特に問題はありません。サイズもぴったりです」

「なら良かった。料金は後で貰うから、着替えとけ」

「はい」


 着たばかりの鎧を脱ぎ、丁寧に畳んでいく。

 やっぱり勉強してたな……?


「次、ヒナ」

「はい!」

「お前は鎧じゃなくてもいいって言ってたからな、色々刻んだ衣装を用意した。マルクと同じように硬質強化と軽量化が刻んである。あとパーツによっては金属で補強してあるから強度は心配しなくてもいい。主に作ったのは服飾師だから俺じゃなくてそいつの嗜好が出てるが……大丈夫か?」

「大丈夫だと思います」


 灰色に濃い赤の模様が編まれたローブ、ポケットが目立たない位置に複数取り付けられたシャツにスカートとブーツ、杖を収納する用のホルダーまで作ってある。


「着替えてみるか?」

「はい!」

「更衣室がそっちにある。使うといい」


 マルクと違って全身着替えるからか流石に更衣室を使わせてくれるらしい。


 ヒナが小走りで新しい装備を手に駆け込み、一分もたたないうちに着替えて出てくる。


「どうだ?」

「特に問題ないです!これなら飛び回っても邪魔にならないと思います!」


 杖を片手に握ったその姿は魔術師然としていて様になってる。

 ローブも胸元の紐を結べばそこまで邪魔にならなさそうだし使い勝手良さそうだな……


「そうか、なら良かった。正直服飾は専門外だから不安だったんだ」

「そんなこと分かんないくらいピッタリですよ?」

「そりゃ、服飾師の方に言ってやるんだな……っと、料金は後で貰うから着替えてこい」

「はい!」


 また更衣室に戻り、元の服に着替えて出てくる。


「そんじゃ、最後にレイチェルだが……これどう思う?」

「……ちょっと想像の斜め上が来ましたね」

「だろうな……でもまあ結構自信作だ、多分大丈夫だ」

「……これ、もはやただの服じゃないですか?」

「大丈夫、試しにそこのナイフ投げつけてみたが刺さりもしなかったし、傷一つついてない」

「……なんというか、ほんとに使ったの布ですか?」

「ああ。品質のいいのを取り寄せたがな。まあとりあえず着てみるか?」

「……はい」


 用意された衣装は、魔法陣が刻まれてる以外何の変哲もないインナーと、濃紺のロングコートと、スカートだった。


 ちょっと想像を越えてきた装備を……最早ただの服を手に取り、更衣室を借りる。


 ちょっと想像越えてきたな……まあ着てみないことには始まらないか。



 少しの不安を胸に、新品の装備に袖を通す。

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