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6-29 視察 東区

「朝イチで捕れた魚だよ〜!旬で美味しいよ〜!」

「今なら西の小麦と芋が特売価格で売ってるよ!」

「東で掘られた鉄を使った食器だよ〜!きっと長持ちするよ〜!」


 東区に繋がる門を越えてすぐ、活気に溢れ、あちこちに響く商魂たくましい声が耳に入る。

 中には西区で見た拡声器を使っているものもいる。


「そこのお嬢さん方、西の特産の小麦を使ったパンだ。お一つずついかが?」

「あ、ください」

「はいよ!二つで銀2ね!」

「わかりました。……はい、どうぞ」

「まいどあり!はい、どうぞ」

「ありがとございます」


 銀硬貨二枚と引き換えに、西の特産の小麦を使ったというパンを買ってみる。


「はい」

「ありがとう。ん……うまいな。何も塗ってないよな?」

「うん……ジャムもバターも塗ってない、ただのパンだね……でも、おいしい」


 素材がいいのもあるだろうけど……保存状態が良かったのかな?もちもちしてておいしい。


「ん……とりあえず他も見て回ろっか」

「だな。これを機に服とかも買い足せるといいんだが……」

「また女物紹介されると思うけど……」

「まあそうなるよな……まあ仕方ない。服は一回諦めて違うもん探すか」

「……目的忘れてないよね?」

「え、そりゃもちろん。まあ何にせよぐるっと回るのには変わりないんだし楽しみながら行こうぜ」

「……ま、それもそっか」


 活気で満ちた声が飛び交う東区を物色しながら歩いていく。



















「色々あったね」

「ああ。食料、調理器具、衣服、家具、なんなら武器に魔石まで。何でもあるんだな」

「軽く聞いてみたところ各地の貿易商がこぞってここで商売してるらしくて、各地から商品が流れ込んでくるんだってさ」

「ふ〜ん……なんで王都なんだ?西や東から輸入するなら距離的には北の『ラタトスク』も同じだろ」

「あそこはほら、治安がね……荷馬車一杯に商品詰めた貿易商なんて格好の的だし。『ラタトスク』は危ない集団も居るからね。せっかく苦労して取り付けた商談を暴力で踏み倒されたりとか嫌じゃん?」

「警察……騎士団は何してんだそれ」

「もちろん通報があれば駆けつけるけど携帯とか普及してないしね……大体手遅れになるかな」

「だったら王都でも同じこと起きないか?」

「多分こっちは犯罪組織とかできたそばから潰してるんじゃないかな。こっちにきてからそういう奴ら見たことないし、そもそも犯罪に手を染める必要がないんじゃないかな。法律が緩いからちょっと真面目に働けば行きていけるだけのお金は入ってくるしね」

「確かにな……」


 大方王都のほうが貿易が盛んなのはこんなところだろう。

 実際西と東をスタートとして考えれば距離的、地理的な条件は王都とラタトスクとではそこまで変わらない。

 だと言うのに王都が選ばれるのはやっぱり治安と福祉が整ってるからだろうな。


「そういえば、特に何も買わなかったけどよかったの?」

「俺は必要最低限の物があればいい。というか金の出どころお前の懐だしな、人の金で遊べるほど図太くないんだよ。というかお前こそ紙とペンしか買ってなかったけどあれだけでよかったのか?」

「うん。足りなくなってきてたし、こっちのほうが安かったからね。学院にレポート送ったり自分の勉強用だったり結構使う場面多かったから補充できて良かった」

「そりゃまた勉強熱心なことで」

「やってて楽しいからね楽しいからね。レポートに関してはお金にもなるし」


 実際新しい魔道具の構想を練るのは楽しいし、書斎を使わせてもらえるようになってからは得られる知識が増えて発想の幅が広がって面白い。


「……ほんとなんで冒険者なんてなったんだ」

「ほっといて!……で、どうする?大方見終わったけど……」

「そうだな……次行くか」

「次は……南区、王城があるところだね。基本居住区だけど王城目的で観光に来る人も多いってさ」

「王城……一番の手がかりになりそうだな」

「王城……あ、アルの時代にもあったね……同じ物の可能性があるのか」

「ああ。俺の知る限り王城──あの宮殿が壊れたことはない。もし、俺の知るものと、ここに建っているものな同じなら、一番の手がかりになるはずだ」

「……行こう」

「ああ」


 東区の活気あふれる声に背中を向け、目的を果たしに行く。



 一番有力な手がかり──王城を目指して歩き出す。

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