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6-25 青空を征く

「もう行くのか」

「うん。何が起きるかわかんないから余裕持っていきたいからね。それじゃ、最終点検お願い」

「わかった」


 拡張収納(マジックバッグ)から取り出したアタッシュケースほどの大きさのカバンを手に、そこにかけられた魔術を停止させる。


「《空間歪曲・機能停止ディストーション・エンドアウト》」


 カバンの蓋が開くのと同時に、捻じ曲げられた空間に収納されていた機体が現れる。


「それじゃ、メンテナンスに入る」


 現れた機体を前に一言だけ告げて、迷うことなく触れていく。

 動力であるプロペラ、加速用のブースト機構、風を受ける翼、私達が搭乗する座席部、再度収納する用の収縮機構など、航空に欠かせないパーツに問題がないかくまなくチェックしていく。


 もちろん私もできるしできなきゃ飛行航空巨機(コンバットビークル)を使っての遠征なんて手は取らなかった。

 けどこういうのはやっぱり組み立てた本人が確認するのが一番信頼できるからな。


「全機構、問題なし(オールグリーン)。動力源の魔石は?」

「準備してあるよ。往復一週間くらいなら余裕持って飛べるよ」

「そうか。なら、いつでも飛べるぞ」

「わかった。それじゃ、行ってくる」

「おう。安全運転でな」

「大丈夫、何があってもちゃんと生きて返ってくるから」

「ん、ん〜……まあ、大丈夫か。何かあったらすぐ連絡しろよ」

「うん。それじゃ。アル、乗って」

「お、おう」


 前の運転席に私が、後ろの助手席にアルが乗る。

 本来助手席はヒナを乗せて離陸、飛行の手助けをしてもうのを想定していた。けどちゃんと補助なしでも飛べるよう設計してるし、いざとなったらアルが代わりをしてくれるはずだ。


「『動源起動(エンジンスタート)』、『加速機構起動(ブーストスタンバイ)』、──それじゃ、行ってきます!」

「おう!」

「行ってらっしゃい!」

「また一週間後な!」

「うん!『加速開始(イグニッション)』!《飛行航空巨機(コンバットビークル)飛行開始(スカイクライム)》!いっけぇ!」


 プロペラを起動し、緩やかに加速した後、両翼に備え付けられた加速機構を全開で稼働させ、一気に加速する。


 その爆発的な加速によって大量の風を翼が踏み、巨大な機体は、宙に浮く。


 大地から車輪(あし)が離れ、数秒前まで居た場所は遥か彼方へ──


「っ──!マジかよ。ほんとに飛びやがった」

「そりゃそうでしょ。飛べなきゃこんなことしないよ。にしても気持ちいいね〜こんな自由に飛ばすのいつぶりだろ」

「安全運転で頼むぜ」

「それはもちろん。39ノット──大体時速70kmを維持。風も天気も問題なし。これなら揺れも少ないし事故も起きないと思う。それじゃ、ここからはずっと飛び続けるから、何かあったら早めに」

「わかった。それじゃ、俺はこの時間つかって俺にかけられた妨害術式の解析するから」

「わかった。何かわかったら教えてね」

「ああ」


 そう言うとアルは目をつむり、一言も発することなく術式の解析に集中してしまう。


 ……話すことなくなったな。機体も安定したしあとは方位磁石と地図とにらめっこしながら操縦桿握るだけなんだよな……暇だ。


 まあせっかく自由に飛ばせてるんだし、景色でも眺めながらアルからの報告を待つか。



















 飛行開始からやく五時間が経過した頃──


「アル〜?近くに街があるみたいだしお昼ご飯食べに一回降りよっか」

「ん、わかった。……なあ、これどうやって降りるんだ?」

「あ、それはね〜」


 拡張収納(マジックバッグ)に荷物をしまい、できるだけ高度を落とし、降りる準備を整え、運転席から()()()()()


「舌噛まないようにね」

「え、なんか凄い嫌な予感が……」

「行くよ」

「ちょ、まっ──!」

「《空間歪曲・再起動ディストーション・プロセスリブート》!」


 機体にかけてある空間歪曲の術式を、()()()()()()する。

 先ほどまで空を飛んでいた機体はケースに収まり、足場が消え、私達の体は自由落下を開始する。


「うおあぁぁぁあああ!?──へ?」

「《魔術壁(シールド)》。大丈夫?」


 魔術壁(シールド)を足場に、私達は空中に静止する。

 《魔術壁(シールド)》のその空間に出現しているという絶対に動かない性質を利用した技だ。新しい名前をつけてもいいかもしれないな。


「あとは……あそこがいいかな。《空間歪曲・圧縮跳躍ディストーション・ファントムリープ》」


 障害物が無く、人の目につかない場所を選んで上空から地上へ一気に移動する。


「良し、今回も無事成功っと」

「お前……マジで……せめて一言くらいな……?」

「ん……それはまあ私がわるかったけどあんまモタモタしてるとそれこそ事故るし。まあちゃんと着地できたんだから良かったじゃん」

「はぁ……まあいいか」


 キレかけたアルを言いくるめ、五時間ぶりの陸を踏みしめながら歩き出す。


「ご飯どころあるといいね〜」

「ああ。動いてないとはいえ、流石に腹減った」


 どんなご飯になるか、そんなことを題材に雑談に花を咲かせながら歩いていく。



 まだ旅は始まったばかりだ。

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