6-21 情報共有
「そういえばさ、どこまで話す?」
「ん、あ〜……異常気象なことまでか、十一層へ行く条件までか、転移者、転生者の話までか」
「私としては全部話してもいいと思う。三人はとはも長いこと付き合いがあるし、私の主観で申し訳ないんだけど、口は堅いし信用できる。だからより効率的に動くためにもできるだけ情報は共有したい」
「……わかった。転移者、転生者含め全部話そう」
「ありがとう。それで、正確に伝えるためにアルに《幻想投影》を使ってほしい」
「わかった。任せてくれ」
「ありがとう。それじゃマルク達に連絡するね」
「連絡って……」
「これ使うの。ざっくり言うと携帯電話。まだ量産はできてないけど身内には渡してある」
「……ほんとよくやるな」
「皆のおかげだからね。それじゃ、かけるよ」
通声機を起動し、まずマルクから事情を伝える。
『どうしたんだ?』
「ちょっと話したいことがあるんだよね。今からこっち三人で来れる?」
『わかった。ギルド長から貸してもらってる部屋でいいか?』
「うん、そこで大丈夫。それじゃ私ベインに連絡するからマルクはヒナお願い」
『わかった。それじゃ、また後で』
「うん、また後で」
通声機を止め、マルクとの通信を切る。
そして次にベインに私た物の周波数に合わせてもう一度起動する。
『……なんだ?』
「今からギルド長に借りてる部屋まで来れる?」
『別に構わない。お前がわざわざ呼び出すくらいなんだしよほどのことなんだろう。すぐに向かう』
「ごめんね急に。ありがとう」
『気にするな。それじゃ切るぞ』
「うん、また後で」
『ああ、また後で』
また通声機を止め、通信を切る。
二人とも急な呼び出しだったのにすんなり了承してくれたな……あとで改めてお礼言わなくちゃ。
「それじゃ、ちょっと話す内容練ろうか」
「だな。流石にぶっつけ本番でプレゼンってわけにもいかないし軽く構想練るか」
そうして三人が来るまで話す内容をまとめながら退屈な時間をやり過ごす。
扉からコンコンコン、と、小気味のいい音が響く。
「どうぞー」
ノックに返事を返すと扉が開き、三人が入ってくる。
「来たぞ。三人揃ってる。それで、用件は何だ?」
「まあ座ってよ。雑なもので悪いんだけどね。それに、長くなるし」
組み立て式の簡素な椅子を指差し、座るよう促す。
私たちの事情を説明するってなったら長話は避けられないしゆっくりリラックスして聞いてほしい。
「そうか。それじゃ借りるぜ」
「……だな。ありがたく使わせてもらう」
「ありがと〜」
三人が腰を下ろしたのを見てから、本題に入る。
「それで、話したいことなんだけど……簡単に言うと、私とアルの前世の話と、この世界が滅びそうになってることについて──」
「うん、ちょっと待て」
話し始める前にマルクに止められてしまった。まあこんなこと急に言われたらびっくりするよね。
「なんで急にそんなスピリチュアルなことを……?アルカディアになんか吹き込まれたか?」
「いや、別にそんなことないんだけど……」
今しれっと横文字出てきたな。アルの通訳魔術がちゃんと機能してきてるな……
「と、とりあえず、その諸々の説明も兼ねてアルに手伝ってもらいます。アル、お願い」
「わかった。先に言っておくが攻撃魔術じゃないからな。《幻想投影》《血霧》」
「っ──!?」
「うぉっと」
「おぉっ!?」
各々驚きながらも逃げ出すことなくアルの魔術を受け入れていく。
まあこんなの誰だって初見じゃ驚くし仕方ない。
それと今回はより分かりやすく、抵抗感をなくすため血を霧状にして摂取してもらい、当時の状況をよりわかりやすく伝えられるようにしてる。
さてと、私の役目である導入はひとまずこんなもんだろう。まあ手伝いはするが……アルがやったほうがわかりやすいかな。
ここからはアルのお手並み拝見と行こう。
「ここからは、《理想郷映す月光》が説明させていただきます。刺激が強いので肩の力を抜いて、リラックスしてお聞きください」
スイッチが入り、微かな笑みを浮かべたアルがその力を振るい始める。