2-7 課外見学
──課外。
課外と言っても普通の授業と受ける授業の時間は大体三対二くらいだ。
普通の授業で基礎的な事、必須技能を教え、生徒に目指したい将来に合わせ課外を選ばせる制度となっているため自由度は高い。
しかしそのため卒業するために三科目以上の履修が必須となっている。
とくに戦魔術師や上位魔術師のクラスだと三科目では評価が厳しく、卒業が危ぶまれるため4科目ほど受けることが推奨されているが……そう簡単なことじゃない。
普通に考えて午前中は通常授業と食事をとれば終わっちゃうのにそっから4科目とか正気の沙汰ではない。
だから大半の生徒は夜遅くまでやってる授業、簡単な授業、一週間のうち1日2日授業を行わない日がある授業を優先する。
まあ最初の理念と矛盾してるわけだが
まあしかし本気で将来を見据えるならちゃんと役に立つ授業取らないと勿体ない。
戦魔術師は遠近両方戦えるオールラウンダーな職と聞いてる。
だったら魔術と剣術、もしくは体術を授業で取ったほうが良いだろう。
以前ある程度メジャーな授業は見学させてもらったがあまり詳しくは見れなかったし受けたい授業も少なかった。
その上で私が受ける事を考えてる授業は魔術基礎、氷魔術、剣術、そして個人的に気になってる空間魔術の授業だ。
魔術基礎は以前見学したので残りの3つを見学するべく、昼食を食べ終えそれぞれの教室に向かう。──ちなみに見る授業も順番も違うので2人とは別行動だ。
最初に向かったのは氷魔術の授業だ。
教室の中では魔術の実践は難しいので別棟の訓練室で主に授業を行っているらしい。
遠いので最初に見ることにした。
教室に着き扉を開ける
「っ!」
扉を開けるとその部屋だけ異常に気温が低かった。
部屋の中央にはストーブらしきもの魔道具が設置されているがそれでは緩和しきれないほどの気温だ。
「失礼します」
とりあえず出入り口で立ってても仕方ないので中に入る。
気温の件もあり厚着の人が大多数だ。
うーん、先天属性が氷だからある程度耐性はあるけど流石に寒いな。もう少し着込んで来れば良かった。
「『血強化/筋力増強』」
小声で血魔術を発動させ体温を上げる。
多少はマシになったが長居は出来ないな。
ならさっさと授業の内容を把握して次の授業に行こう。
やってることはこれまでと同じ魔術を発動させる反復練習なのだが目指すところが違う。
これまではクオリティーを保ったまま早く出すことを目標にしてたがこの授業ではそれに加え実戦に耐えうる耐久度の武具を氷で作ることを目指してる。
これができれば即席で武器を用意できるのでかなり実戦的な授業と言えるだろう。
次に向かったのは剣術の授業だ。
先ほどとは別の棟で授業を行ってる。
着いたのでさっさと中に入る。
「失礼します」
丁度模擬戦を行ってるところだったのかほとんどの生徒は端のほうに座って見学してる。
私も同じように座り見学する。
実はこの時間帯に模擬戦することを知ってたのでこの時間帯に合わせたのだ。
模擬戦はここまで積み上げてきた己の剣術の実力を試す場らしいのでいろいろ見れると思う。
お、次の試合が始まった。
片方は片手剣、もう片方は盾に片手剣を持っている。
さっきの試合もそうだったが装備が統一されてないな。
おそらく自分の目指す場所に合わせて流派や身につける技を変えてるのだろう。
というか今戦ってる片手剣のみの方、魔術を組み合わせながら戦ってる。
剣術の授業を受けるのはほとんど決まってるしどんな剣にしたいか考えとこう。
最後に空間魔術の授業に来た。
この授業は始める時間が遅く終わる頃には日が沈むような時間なのであまり人気はない。
それでもこの授業の見学に来た理由は以前本で読んだこの属性の性質にある。
この魔術は空間を曲げたり歪めたりする性質がある。
ざっくり言うと空間を歪ませて拡張したり、長い距離を曲げて一瞬で移動したりできる。
具体例を上げると見た目より容量が大きいカバンを作ったり縮地ができたりする。
だが空間そのものに魔術で干渉するため魔法陣の構築やイメージが難しく、使えれば便利だが使いづらいというのが現状だ。
そこを前世の経験と知識でカバーできれば上手く活用できると思ったのだ。
さて肝心の授業の方では実際に空間を曲げて物を遠隔で渡すことで魔術の構築と維持の練習をしてる。
将来的にはこれを活用して急に距離を詰めたり、荷物を大量に持ち運べるようにしたい。
「それでは今日の授業はここまで」
「「「「「ありがとうございました」」」」」
今後の目標が定まったところで今日の課外見学が終わった。
「おつかれ」
「ああ、おつかれ」
「おつかれ〜!」
夕食を食べ終え三人全員寮の部屋に集まった。
やることもないし風呂も入ったので三人で雑談している。
「マルクはどこの授業見に行ったんだっけ?」
「俺は地魔術と剣術、それと無属性魔術だな」
「ヒナは?」
「わたしは火魔術と剣術と体術!」
「あれ?じゃあ剣術の授業料二人共一緒だった?」
「うん」
「一緒だったな」
私も行ったが時間が違ったのか。
「そういえば体術見に行ったのヒナだけだけどなんで見に行ったの?」
「火属性以外魔術使えないから体つよくしようと思って」
「なるほど」
ヒナはヒナなりにちゃんと考えてた
「あと壁登れるようになりたい」
…ほんとに考えてるか?
「そういえばあと無属性見に行ったのはマルクだけだったけどどうだった?」
「まあ、だいたい想像通りだな。いろいろ便利な魔術が揃ってるから一通り身につけようと思ってる」
マルクはちゃんと将来見据えてた
「ふぁ〜」
ヒナが欠伸をした。まあ午前中走り回ったしいろいろ見て回って疲れたのだろう。
なんか静かな気がしたのは間違ってなかったか。
「眠いし、そろそろ寝ようか」
「そうだな」
「うん…」
「それじゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
「おやすみ…」
そうかからないうちに深い眠りに落ち、学院生活二日目が終わった。