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6-13 書斎

「失礼します」


 三回ノックし、重厚な扉を開けて中に入る。


「まさか自分から来るとはな。そのうちこちらから呼び出そうと思ってたところだったが……」

「少しでも整理がついたら早く話したほうがいいと思いまして。これが身の潔白の証明になるかは分かりませんが少しでも信じてもらえれば……」

「それは話す内容によるな。お前が嘘をついていないか、その内容を信じるに値するかは俺が決める。話してみろ」

「はい……それではまず──」


 アルは転移者、転生者、別の世界など大っぴらに話せない内容を除いて自分の素性……もちろん本名は隠し、大昔、もしくは未来からこの時代に召喚されたことを中心に話していく。


「ふむ……それではまだ召喚された理由はわからず、喚ばれる前の記憶は掠れて思い出せないところが多いと」

「はい……」

「それは時間をかければ思い出せそうなものなのか?」

「いえ……ただ時間をかけるだけでは難しそうです。何かきっかけになる情報があれば記憶操作の魔術に抵抗できそうなんですが……」

「そうか、なら私の個人的な書斎を開放しよう。ギルドへの依頼、この街の情勢、迷宮の情報や研究結果、様々な情報を揃えてある。好きなように読むといい」

「っ!ありがとうございます!」


 まさかの手助けの申し出が出た。


 アルからすれば嘘をついてた所に踏み込まれるようなもの、だけど思い出せないのはほんとなので嬉しいか嫌かは微妙なラインだろう。


「あの、それって私もついて行っても……」

「もちろん。むしろ監視役として同行してほしい」

「わかりました」


 すんなりと同行の権利をゲットできた。


 この街に関する様々な情報──それも最大手国営ギルドのギルド長がかき集めた書庫なんて見たいに決まってる。


 きっと学院の図書室や先生がより寄せられる書類なんて比べ物にならないレベルのが詰め込まれてるに違いない。


「いつから入っていいですか?」

「今すぐにでも構わん。これが鍵だ」

「ありがとうございます」

「場所はここを出て左に曲がり、突き当たりの右の部屋だ」

「わかりました。それでは失礼します」

「ああ。……最後に一つだけ、アルカディア・ムーンライト、お前の処遇はまだ議会の机上にあるということを忘れるなよ」

「……はい」

「よろしい。では、下がれ」

「……失礼します」


 恐る恐る一礼してから部屋を出て、扉を閉める。


「最後釘刺されたな」

「だよね......」

「というか分かりやすすぎだ。欲を隠せてないぞ。この分だと昨日の監視役の立候補も勘づかれてるかもな」

「うぅ......」


 腹芸が得意とは思ってないし、むしろ下手と思ってるくらいのレベルだしやっぱ見抜かれるよな......


「ま、なんとか誤魔化すしかないな。俺もああいう手合いの相手は苦手だし仕方ない。やっぱ貴族様は苦手だわ」


 そんな愚痴を吐きながらアルは廊下を歩き出す。


「ほら、行こうぜ。せっかくのチャンスだし好きなだけ読んでいこう」

「……だね。どんなのがあるか楽しみ〜」


 過去の失敗を水に流すように、アルの気遣いをありがたく受け取りながら書斎に向かっていく。

















「おぉ……」


 扉の先にあったのは、見る限りの紙の山。

 ジャンル分けはされてるがそれでもまだ本に加工されてない紙の束、封筒に入れられたままの書類、山の土台にされた読まれることのない本、どこを見ても、どう動いても紙の山から離れられない空間だった。


「凄いな……何から読んだらいいんだこれ」

「とりあえず迷宮関連からいく?」

「そうするか……つってもその迷宮関連の書類がどれかもわかんないけどな」

「多分……ここらへん?一応整理はしてあるけど……ぐちゃぐちゃだね……年代順にもなってなければ音順でもない……」

「整理整頓するところから始まりそうだな」

「だね……」


 やることの順序を決め、二人で黙々と手を動かし始める。


 《空間把握(グラスプ)》があるから普通に比べれば楽ではあるがさすがにこの量は一日で終わらせるのは無理だ。人手が足りない。

 さすがにマルク達は呼べないよな……ここに入るのを許可されたのは私とアルだけだし。


 こつこつ片付けて行くしかないか……



 情報収集は諦め、今日一日紙の山の整理整頓に時間を使うことになった。

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